会社都合退職と自己都合退職の違いとは?退職理由で変わることを解説

この記事で分かること
- 会社都合退職とは、会社側の事情によって退職すること
- 自己都合退職とは、従業員自身の意思や事情により会社を退職すること
- 会社都合退職と自己都合退職には、それぞれメリットとデメリットがある
- 会社都合退職と自己都合退職で、退職手続きの違いを理解しておくことが重要
※この記事は6分30秒で読めます。
「会社都合退職と自己都合退職の違いは何?」
「自己都合退職を会社都合退職にできるの?」
など、それぞれの退職の違いに関して疑問を持っている方もいるでしょう。
会社都合退職と自己都合退職は、退職の理由や背景が異なり、退職後の待遇や手続きにも違いがあります。
今回は、会社都合退職と自己都合退職の違いを始め、それぞれのメリット・デメリットなどを解説します。この記事を読めば、退職の種類による違いが理解でき、退職後の生活設計や再就職活動に役立てられます。
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1.会社都合退職と自己都合退職の違い
会社都合退職と自己都合退職は、退職の理由や背景が異なります。これらの違いに対する理解は、転職活動や将来のキャリアプランを考えるうえで重要です。
会社都合退職と自己都合退職の定義を確認し、それぞれの主な理由を比較していきましょう。
退職の種類 | 主な理由 |
---|---|
会社都合退職 |
|
自己都合退職 |
|
1-1.会社都合退職とは
会社都合退職とは、会社側の事情により従業員が退職せざるを得ない状況に至ることです。例えば、会社の経営悪化やリストラ、事業縮小による人員整理、事業所の閉鎖や統廃合にともなう雇用調整などが当てはまります。
会社都合退職の場合、退職の主な原因は会社側にあり、従業員は受動的に退職を迫られる立場となります。そのため、会社は退職する従業員に対して、十分な説明と適切な補償をおこなわなければいけません。
具体的に、会社側は解雇予告期間を設けることが求められます。再就職支援など、従業員の退職後の生活を支える取り組みを実施することも重要となるでしょう。
会社によって異なりますが、従業員側は解雇予告手当や退職金など、金銭的な支援を受けられることが一般的です。
1-2.自己都合退職とは
自己都合退職とは、従業員自身の意思や事情により会社を退職することを指します。結婚や出産、育児、介護などのライフイベントにともなう退職や、キャリアアップや自己成長を目的とした転職などが代表的な例です。
自己都合退職の場合、退職の判断と責任は従業員自身にあります。退職の理由が会社側に起因するものではないため、会社は退職金の支払いや再就職支援などの義務を負わないことが一般的です。
ただし、退職の理由が病気や怪我といった健康上の問題をはじめ、家族の介護などのやむを得ない事情による場合は、会社側に一定の配慮が求められる場合もあります。
2.会社都合退職と自己都合退職で変わる3つのこと
会社都合退職と自己都合退職は、退職の理由や状況が異なるため、退職後の手続き等にも違いが生じます。ここでは、会社都合退職と自己都合退職で異なる以下の3つの事項について解説します。
- 失業手当(失業保険)の給付条件
- 退職金の有無
- 履歴書の職歴欄の書き方
以下で詳しく見ていきましょう。
2-1.失業手当(失業保険)の給付条件
失業手当とは、働く意思と能力があるにも関わらず、職を失った方の生活を一定期間支える給付金です。雇用保険に加入していた労働者が失業した際、所定の条件を満たせば受給できます。
ただし、会社都合退職の場合と自己都合退職の場合では、失業手当の給付条件で異なる部分があります。それぞれの待機期間、給付制限期間、給付日数は下記のとおりです。
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
待機期間 | 7日 | 7日 |
給付制限期間 | なし | 2ヵ月または3ヵ月 |
給付日数 | 90~330日 | 90~150日 |
-
参照:ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
条件によっても異なりますが、一般的には自己都合退職よりも会社都合退職のほうが、失業手当の給付制限期間などの面で優遇される傾向にあります。
2-2.退職金の有無
退職金の有無は、会社都合退職と自己都合退職で異なります。会社都合退職の場合、会社側の事情で退職を迫られるため、企業の方針や労働契約に基づき、退職金が支給される可能性があります。
退職金の金額は企業側の経営状況を始め、従業員の勤続年数や役職、退職理由などによって異なります。
ただし、一般的には年功賃金(年齢や勤続年数とともに上がる賃金)による雇用システムの影響から、勤続年数が長いほど退職金が多くなる可能性があるでしょう。
一方、自己都合退職の場合、原則として退職金は支給されません。ただし、自己都合退職でも、定年退職や会社との合意に基づく退職などの場合は、退職金が支給されることがあります。
他にも、長期勤続や特別な業績に対する報奨金など、一部の特別な事情によっては規定に従い退職金が支給されるでしょう。
2-3.履歴書の職歴欄の書き方
履歴書の職歴欄には、退職理由を明記する必要があります。会社都合退職の場合は、「会社都合により退職」と記載し、自己都合退職の場合は、「一身上の都合により退職」と記載します。
例えば、以下のように記載します。
- 令和3年3月 株式会社〇〇 会社都合により退職
- 令和6年9月 株式会社〇〇 一身上の都合により退職
職歴欄の記載は、採用担当者が応募者の経歴を把握するうえで重要な情報源となるので、正しい情報を伝えるためにも退職理由を明確に記載しましょう。
3.会社都合退職のメリット・デメリット
会社都合退職にはそれぞれメリットとデメリットがあり、退職後の生活や再就職活動に影響があります。ここでは、会社都合退職のメリットとデメリットの詳細を見ていきましょう。
3-1.メリット
会社都合退職の主なメリットは以下のとおりです。
- 解雇予告手当が支給される場合がある
- 失業手当の受給条件に該当するときは、早く長く受給できる場合がある
- 再就職支援を受けられる可能性がある
会社都合退職では、解雇予告手当の支給や失業手当の優遇措置など、条件に応じて経済的な支援を受けられる場合があります。
解雇予告手当とは、従業員を解雇する際に、30日前までに解雇予告をしない場合に支払われる手当です。具体的には、平均賃金の30日分以上に相当する額が支給されます。
また、条件によっては失業手当の受給期間が長くなるため、再就職までの期間における生活を維持しやすくなります。
企業によっては再就職支援サービスを提供してくれる場合もあります。履歴書の添削や面接対策、職業紹介など、社内や社外の専門家のサポートを受けられるので、円滑な再就職活動に役立つでしょう。
-
参照:厚生労働省「解雇には30日以上前の予告が必要です」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-1.pdf
3-2.デメリット
会社都合退職の主なデメリットは以下のとおりです。
- 突然の解雇で生活が不安定になりやすい
- 解雇理由や処遇に不満がある場合、精神的な負担が大きい
- 転職活動において不利になる可能性がある
会社都合退職には、突然の解雇により生活が不安定になりやすいデメリットがあります。予期せぬ退職は、経済的な準備が整っていない場合、生活設計に影響を与えることがあるでしょう。
また、解雇理由や処遇に納得がいかない場合、精神的な負担になってしまいます。会社側の一方的な決定に不満を感じたり、自尊心が傷ついたりするとメンタル面の調子が崩れてしまうかもしれません。
さらに、転職活動では会社都合退職であることが不利に働く可能性があります。個人の責任ではない理由であれば問題ありません。
ただ、個人の能力不足や勤務態度の問題など、本人に原因がある場合は、選考に影響を与える可能性も考慮しなければいけません。
会社都合退職における退職理由について、誠実かつ前向きな説明ができるよう、慎重に書類・面接対策を練って準備しておくことが重要です。
4.自己都合退職のメリット・デメリット
自発的な退職である自己都合退職にも、メリットとデメリットがあります。自己都合退職のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
4-1.メリット
自己都合退職の主なメリットは以下のとおりです。
- 自身の意思で退職できる
- 退職理由は「一身上の都合」で良い
- 退職理由の詳細によっては、前向きな退職であることを面接で伝えられる
自己都合退職のメリットは、自身の意思で退職できることです。結婚や出産、介護、転職など、ライフステージの変化に合わせて退職の選択ができます。
退職理由は「一身上の都合」と伝えるだけで十分であり、基本的には採用担当者からの質問がない限りは詳細な説明は不要です。
また、キャリアアップのための転職など、前向きな理由で退職する場合は、面接で退職理由の根拠を踏まえてアピールしやすくなります。自発的な退職は、仕事に対する意欲や向上心の表れとして、採用担当者にポジティブな印象を与えやすくなるでしょう。
4-2.デメリット
自己都合退職の主なメリットは以下のとおりです。
- 失業給付金をすぐに受給できない
- 新しい仕事が見つかるまで収入が途絶える
- 退職理由やブランク期間次第では、転職活動に苦労する可能性がある
自己都合退職のデメリットは、経済的な面での不安定さです。失業手当の受給までに最長3ヵ月の待機期間があるため、すぐに給付金が受け取れません。
新しい仕事が見つかるまでの間、収入が途絶えるリスクもあります。退職後の生活資金や転職活動費用など、経済的な準備が十分でない場合、退職後の生活が苦しくなるかもしれません。
また、退職理由やブランク期間次第では、転職活動に苦労することがあります。一身上の都合という退職理由は、場合によっては採用担当者に、仕事への意欲や責任感が低いのではないかと不安を抱かせてしまうかもしれません。
他にも、長期間の就業ブランクがある場合、職場環境や業務内容が変化し、以前の職務経験やスキルで働くのが難しいと受け取られる可能性もあります。
退職理由やブランク期間について採用担当者から質問されたときは、誠実な人だと思ってもらうためにも話せる範囲で正直に答えます。
また「過去の経験があったからこそ、キャリアを整理して前向きに行動するきっかけとなった」など、ポジティブな締めくくりで伝えるとネガティブな印象のまま終わらずに済むでしょう。
5.会社都合退職と自己都合退職の退職手続きの違い
会社都合退職と自己都合退職では、退職手続きにも違いがあります。
- 退職願や退職届の提出
- 退職の意思を示すタイミング
それぞれ詳しく見ていきましょう。
5-1.退職願や退職届の提出
会社都合退職の場合、基本的に退職願や退職届の提出は不要です。
退職願とは、従業員が自発的に退職する際に提出する書類で、退職の願いを示すために使います。退職届は、退職の事実を会社に通知する書類で、会社側から退職を認められた際に提出します。
一方、自己都合退職の場合は、就業規則に定められた期日やフォーマットに従って、退職願や退職届を直属の上司に提出する必要があります。
なお、会社都合の退職であるにも関わらず、会社側から退職願や退職届の提出を求められた場合、不当な自己都合退職扱いにされる恐れがあります。
退職勧奨(会社側が従業員に退職を促すこと)の際に提出を求められた場合は、「一身上の都合により退職」とせず、会社都合の退職である旨を明記しましょう。
5-2.退職の意思を示すタイミング
自己都合退職の場合、就業規則で定められた期日までに退職の意思を示す必要があります。会社側が、後任者の採用や業務の引き継ぎなどの準備をおこなうための時間を確保するためです。
まずは、直属の上司に口頭で退職の意思を伝えましょう。その際、退職理由についても簡単に説明すると良いでしょう。
状況に応じて上司との面談をおこない、正式に退職届を提出する流れになります。法律上は、退職日の2週間前までに退職の申し出をおこなえば問題ありません。
しかし、自身が担当していた業務の引き継ぎが複雑な場合や、後任者の採用に時間がかかりそうな場合は、円満に退職するためにも1ヵ月以上前に伝えるなど、早めに退職の意思を伝えるのが望ましいでしょう。
6.自己都合退職を会社都合退職にできる?
原則として、自己都合退職を会社都合退職に変更することは難しいとされています。しかし、以下のような場合は、自己都合退職を会社都合退職に変更できる可能性があります。
- 給与の未払いがあったにも関わらず、自己都合退職扱いにされた場合
- セクハラやパワハラなどの理由で、無理やり退職させられた場合
- 会社側の違法行為により、退職せざるを得なくなった場合
このような場合、会社側に法的な責任があるため、自己都合退職を会社都合退職に変更し、失業手当や解雇予告手当などを受け取れる可能性があります。ただし、変更のためには、会社都合退職の条件に該当する証拠が必要です。
就業規則や労働契約書、タイムカード、給与明細など、会社側の違法行為を示す資料を揃えてハローワークに提出し、会社都合退職への変更を申請します。ハローワークが資料を審査し、会社都合退職の条件に該当すると判断すれば、退職理由の変更が承認されます。
7.まとめ
会社都合退職と自己都合退職は、退職の理由や背景が異なります。会社都合退職は、会社側の事情による退職で、解雇予告手当や失業手当の優遇措置などを受けられる可能性があるでしょう。
一方、予期していない突然の退職になる場合もあり、資金の準備ができていないと生活面が不安定になるリスクもあります。
また、自己都合退職は自発的な退職で、退職を前向きな理由としてアピールできる場合があるでしょう。反面、失業手当の給付までに時間がかかりやすいデメリットがあります。
退職は人生の大きな転機です。会社都合退職と自己都合退職の違いを理解し、それぞれの退職理由がもたらす影響を踏まえて、退職後の生活設計やキャリアプランを考えることが大切です。自身の置かれた状況を冷静に分析し、前向きに新しいスタートを切れるようにしましょう。
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