退職時にスムーズに有給消化をするには?マナーや拒否されたときの対処法を解説

この記事で分かること
- 有給の使用は労働者の権利であり、退職理由に関わらず退職前にすべて消化できる
- スムーズに有給消化するには、有給の残日数を把握し、退職のスケジュールを立てておく必要がある
- 有給消化中にトラブルが起こらないよう、上司と相談しながら引き継ぎを確実に終わらせておくと良い
- 有給消化を拒否された場合には、上司の上司へ相談する、退職日をずらせないか検討するなどの対処法がある
※この記事は6分で読めます。
「退職前に有給消化しても問題ないの?」
「有給消化を拒否されたらどう対処する?」
など、退職時の有給消化に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
有給の取得は労働者の権利であり、退職前に有給消化しても問題ありません。しかし、有給消化する際のマナーや拒否された際の対処法を知らないと、トラブルに発展する恐れがあります。
今回は、退職時の有給消化の流れやマナー、有給消化を断られた際の対処法などを解説します。この記事を読めば、退職時に有給消化するポイントが理解でき、安心して退職の準備を進められるようになるでしょう。
エリアから工場・製造業のお仕事を探す
1.退職時に有給消化をするのは問題ない?
退職が決まってから、残っている有給をすべて消化するのは問題ありません。
有給は労働基準法第39条で保障されている労働者の権利であり、会社側は基本的に労働者の有給申請を拒否できないためです。(※)
例外として、有給取得によって業務に大きく支障が出る場合、会社側は有給の取得時期を変更させる権利があります。
しかし、退職日が近いと有給の取得時期を変更することは難しいため、会社側が労働者の希望日を拒否すると違法になる可能性があります。
このように有休消化は労働者の権利ではあるものの、円満な退職に向けて問題なく有給消化するためには、有休消化の流れや適切なマナーを理解しておくことが大切です。
なお、退職時に有給をすべて消化しなければならないという義務はありません。そのため、労働者側が取得申請をせず、退職日以降に権利がなくなっても法律上は適法です。
-
(※)参照:e-Gov 法令検索「労働基準法|第39条」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#Mp-At_39
2.退職時に有給消化をする際の流れ
退職時に有給消化をする際の流れは、以下のとおりです。
- STEP1:残りの有給日数を調べる
- STEP2:退職スケジュールを立てる
- STEP3:退職日や有休消化の希望を上司へ早めに報告する
- STEP4:有給消化や引き継ぎのスケジュールを上司や会社と共有する
- STEP5:後任への引き継ぎをおこなう
退職までに有給をすべて消化できるよう、残りの有給日数と有効期限を確認しておきましょう。通常の休日は有給には含まれないため、休日も考慮しながら退職スケジュールを立てることが重要です。
また、業務に支障がでないようにするため、退職日や有休消化の希望はできる限り早めに上司へ報告する必要があります。残っている有給をまとめて取るのか、退職日までに少しずつ取るのかについて相談しておくと、上司も今後のスケジュールを立てやすくなります。
引き継ぎは、上司と相談しながら計画的に進めましょう。もし引き継ぎがうまく進まない場合は早めに上司に相談することで、有給開始日までに引き継ぎが終わらないといったトラブルを防ぎやすくなります。
3.退職時に有給消化をする際のマナー
退職時に有給消化をする際のマナーを3つ紹介します。マナーを理解しておくと、有給消化時にトラブルが起こりにくくなるでしょう。
3-1.有給消化は申請が通ってから
会社の合意が取れてからでないと有給は使えないため、退職時にすべて消化する場合にも、会社に申請して合意を取る必要があります。
以下は、有給消化の話を切り出す際の例文です。
〇〇(上司の名前)さん、退職の件でご相談がございます。現在、〇日分の有給休暇が残っており、可能であればこれらの有給休暇を退職前に消化させていただければと考えております。会社の都合や業務の引き継ぎなども踏まえ、最適なスケジュールについてご相談させていただけますでしょうか。
残っている有給の日数や引き継ぎについても伝えることで、上司とスムーズに話し合いやすくなります。
なお、繁忙期や大きなプロジェクトの途中などを避けると上司も余裕があるため、相談に応じてもらいやすいでしょう。
3-2.有給消化の申請は1ヵ月前にしておく
有給の残日数を確認したら、退職日までに何日間取得する必要があるのか整理しましょう。
たとえ有給の残日数が少なくても、有給消化が始まる日の1ヵ月前には申請しておくと、会社側も後任探しや手続きの準備がしやすくなります。
ただし、会社によって申請期限などのルールが異なるため、事前に就業規則を確認しておきましょう。
3-3.引き継ぎは万全にしておく
有給消化に入る前に、業務の引き継ぎを確実に終わらせておきましょう。
引き継ぎが不十分だと後任や取引先などに業務の情報が共有されず、トラブルが起こる可能性があります。
さらに、引き継ぎが完了するまで有給の取得開始日や退職日を引き延ばしてほしいと相談される場合もあるでしょう。
退職を決めた時点で、業務に関する知識や情報をまとめ始めると、引き継ぎをスムーズに進めやすくなります。
4.有給消化を会社に拒否されたときの対処法
基本的には有給消化を会社に拒否されることはありませんが、なかには拒否する会社もあります。拒否されたときに対応できるよう、対処法を3つ解説します。
4-1.上司の上司などに相談する
上司に有給消化を拒否されたら、上司の上司に相談してみましょう。また、人事や労務など専門の部署に相談するのも選択肢の一つです。
人事や労務は有給に関する専門知識があるため、上司に有給消化を許可するよう働きかけてくれる可能性があります。
相談する際はまず口頭で伝えたうえで、あとからメールや書類を用いて、あらためて内容を伝え直すことがおすすめです。
上司の上司や専門の部署へ相談しても有給消化が認められなかった場合に、外部の労働基準監督署などへ相談する際の証拠として活用できます。
4-2.退職日をずらしてもらえないか相談する
上司の上司や専門の部署に相談しても有休取得を拒否された場合は、退職日をずらして有給をすべて消化できないか上司へ相談してみましょう。
以下は、相談を切り出す際の例文です。
〇〇(上司の名前)さん、退職に関して追加でご相談がございます。残っている有給休暇を消化させていただくために、退職日を〇月〇日に変更することは可能でしょうか。もちろん、退職日までに業務の引き継ぎや必要な手続きは責任を持って進めてまいりますので、ご検討いただけると幸いです。
退職日をずらしたい意向を伝えるだけでなく、引き継ぎや手続きへの配慮も示すことで、上司も相談を受け入れやすくなるでしょう。
また、退職日をずらす場合、転職先が決まっている方は、転職先と入社日について相談する必要があります。
転職先に相談する際は、入社する意欲がなくて入社日を引き延ばしていると誤解されないよう、現在の状況を詳しく説明しましょう。
転職先が人員配置の計画などを理由に入社日をずらせない可能性があるため、転職先の事情に配慮しながら話を切り出すことも重要です。
4-3.有給の買い取りができないかを相談する
有給の買い取りとは、労働者が有給を使わない代わりに、会社から該当日数分の賃金を支払ってもらうことです。
そもそも有給は労働者の休息を目的として、企業が労働者に付与することが義務付けられた制度です。(※)そのため、休息ではなく金銭を与える買い取りは本来の趣旨に合わず、原則認められません。
しかし、退職時などには、労働者が不利益を被らないようにするため、例外的に買い取りが認められる場合があります。
上司の上司へ相談しても有給消化が認められず、退職日も調整できないときは、会社へ買い取りについて相談してみましょう。
なお、就業規則に有給の買い取りに関する規定があるかどうか、あらかじめ調べておくことがおすすめです。規定がない企業は買い取り義務がないため、相談しても断られる可能性があります。
また、買い取り額の計算方法は会社によって異なり、なかには買い取り額を一律で設定している場合もあります。就業規則を確認する際に、計算方法についても調べておくとよいでしょう。
-
(※)参照:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html
5.有給消化に関するよくあるQ&A
有給消化に関するよくある質問を6つ紹介します。事前に疑問を解消しておくと、スムーズに有給消化しやすくなるでしょう。
5-1.有給は退職後にも使えますか?
退職すると有給は使えなくなります。
有給は在職中の労働者がリフレッシュすることを目的とした制度のため、退職日以降には適用されません。
5-2.有給休暇が残ったまま退職したら、有給はどうなりますか?
有給休暇が残ったまま退職すると、すべて消滅します。前述のとおり、有給休暇はあくまで在職中の労働者を対象とした制度のためです。
なお、有給休暇は労働基準法第115条に基づき2年間で時効を迎えると定められているため、在職中でも2年が経過すると自動的に消滅します。
-
参照:e-Gov 法令検索「労働基準法|第115条」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#Mp-At_115
5-3.残った有給休暇はすべて消化しないといけませんか?
退職までに残っている有給休暇を、すべて消化する義務はありません。そのため、退職日まで有給休暇を残したまま働くことも可能です。
自分の都合と引き継ぎなど会社の都合の両面を気にしながら、最適なスケジュールを立てましょう。
5-4.退職理由が会社都合の場合、有給消化できますか?
有給の使用は労働者の権利であるため、退職理由が会社都合であっても消化できます。会社都合の退職とは、会社の人員削減にともなうリストラなどのことです。
解雇日や退職日などを見据えて、必要な引き継ぎをしつつ、残っている有給をしっかり消化しましょう。
5-5.有給休暇を取得する際、理由を説明しないといけませんか?
有給休暇を取得する際は、理由を説明する必要はありません。有給の取得は労働者に認められた権利であり、理由に関係なく取得できます。
もし理由を求められたら、退職にともなう有給消化と伝えましょう。
5-6.有給消化する際、連続して取得しないといけませんか?
有給消化は、連休にしなくても取得可能です。会社の繁忙期などで休むのが難しい場合は、むしろ連休にしないほうが有給を取得しやすい可能性もあります。
時間単位で有給休暇を取れる会社なら、半休などで細かく活用する方法もあります。
6.まとめ
有給の使用は労働者の権利であり、自己都合・会社都合の退職に関わらず、すべての有給を消化できます。
有給の残日数を確認したうえで退職スケジュールを立て、有給消化を開始する日の1ヵ月前までに申請しておくと、手続きがスムーズに進みやすくなります。
また、上司から有休消化を拒否される可能性もあるため、上司以外に相談したり退職日をずらしたりするなどの対処法を事前に知っておくと安心です。
JOBPALでは、経験豊富なキャリアパートナーに、退職や転職に関するさまざまな悩みを相談できます。できるだけ有給を消化しつつ、退職・転職をスムーズに進めたい方は、以下のリンクから気軽に面談応募をしてみてください。
関連記事
人気ランキング
工場・製造業の職種図鑑
以下の条件から求人を探す
都道府県からお仕事を探す
職種からお仕事を探す