みなし残業とは?働くメリットや求人に応募する際の注意点を解説

この記事で分かること
- みなし残業には「固定残業代制度」と「みなし労働時間制度」の2つの意味がある
- 固定残業代制度は、事前に決められた一定時間分の残業代を含んだ給与が支給される制度
- みなし労働時間制度は、実際の労働時間に関係なく、事前に決められた労働時間を働いたとみなす制度
- みなし残業代制度は「残業時間が短いほど得になる」「仕事の効率化につながる」といったメリットがある
- みなし残業ありの仕事は「収入を安定させたい」「不公平感なく働きたい」といった人におすすめ
※この記事は6分30秒で読めます。
「みなし残業って何?」
「みなし残業のメリットは?」
など、みなし残業に関して疑問を持っている人もいるでしょう。
みなし残業とは、一定時間分の残業代があらかじめ給与に含まれた状態で支給される制度です。実際の残業時間がみなし残業時間より短い場合は、そのぶん得になるというメリットがあります。
今回は、みなし残業の概要やメリット、みなし残業ありの仕事がおすすめの人の特徴などを解説します。この記事を読めば、みなし残業の仕組みがわかり、納得のいく仕事選びにつながりやすくなるでしょう。
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1.みなし残業とは?
みなし残業とは、残業代の支払われ方に関する制度のことです。大きく分けて、「固定残業代制度」と「みなし労働時間制度」の2つがあります。
固定残業代制度は、実際の残業時間に関係なく、あらかじめ決められた一定時間分の残業代が給与に含まれて支給される制度です。
企業は社員に時間外労働や休日労働をさせた場合、残業代を支給しなければなりません。
しかし、ある程度残業することが予想される場合、企業側が事前に「月あたり○時間分の残業代として×万円を給与に含めて支給する」と固定残業代制度を設けていることがあります。
例えば、固定残業代制度を採用している企業は、求人募集要項の給与記載欄に「固定残業手当:5万円(固定残業時間20時間)/月」といった記載があります。
この場合、実際の残業時間が10時間であっても、20時間分の5万円が残業代として支給されます。反対に20時間を超えた場合は、固定残業手当とは別に超えたぶんだけ残業代が加算される仕組みです。
一方、みなし労働時間制度は、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決められた労働時間を働いたとみなす制度です。
営業の外回りや在宅勤務など、社外で業務をおこなう際、企業側は実際の労働時間を正確に把握できない場合があります。そのため、あらかじめ決めた労働時間は働いたとみなして給与を支給します。
例えば、みなし労働時間制度を採用している企業は、求人募集要項の勤務時間記載欄に「みなし労働時間:8時間/日」といった記載があります。
この場合、在宅勤務でおこなう業務が6時間で終わっても、みなし労働時間である8時間分の給与が支給される仕組みです。
反対に、8時間以内に終わる業務であるにもかかわらず10時間かかった場合は、みなし労働時間を超える2時間分の残業代は支給されません。
1-1.固定残業代制度とみなし労働時間制度の違い
固定残業代制度は、実際の「残業時間」に関係なく、あらかじめ決められた一定時間分の残業代を含めた給与が支給される制度です。一方のみなし労働時間制度は、実際の「労働時間」に関係なく、あらかじめ決められた労働時間を働いたとみなす制度です。
このように、固定残業代制度とみなし労働時間制度では、残業時間に関する決まりか、労働時間に関する決まりかという違いがあります。
また、みなし労働時間制度は労働基準法で定められた法律です。そのため、企業は所定の要件を満たさない限り導入できません。一方の固定残業代制度は法律ではないため、業種や職種に関係なく、どのような企業でも導入できます。
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参照:厚生労働省「『事業場外労働に関するみなし労働時間制』の適正な運用のために」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/jigyougairoudou.pdf
1-2.みなし残業時間を超えた場合は残業代が支払われる
みなし残業代制度は「一定時間分の残業代しか支給しない」という制度ではありません。みなし残業時間(固定残業時間)を超えた場合は、超えたぶんの残業代が追加で支給されます。
なお、時間外労働時間には25%以上の割増賃金、時間外労働が22時~翌5時までおよんだ場合は50%以上の割増賃金が支給される決まりです。
例えば、みなし残業時間が20時間で5万円のみなし残業手当があるとします。実際の残業時間が30時間だった場合、みなし残業時間より10時間多く残業しているため、みなし残業手当の5万円に追加残業代の2万5,000円を加算した7万5,000円が残業代として支給されます。
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参照:厚生労働省「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501860.pdf
2.みなし残業ありの仕事をするメリット
みなし残業ありの仕事をするメリットについて詳しくみていきましょう。
2-1.残業時間が短い場合はそのぶん得になる
固定残業代制度が導入されていても、決められた固定残業時間分の残業を必ずしもする必要はありません。
例えば、固定残業時間が20時間で、実際の残業時間が10時間でも問題はなく、20時間分の残業代が支給されます。つまり、残業時間が固定残業時間内におさまれば、働いていない時間分も給与が支給され、得になります。
特に繁忙期と閑散期で残業時間に差が出る職種では、「まったく残業がなかった」という月でも固定残業代が支給され、一定の収入を確保できる点もメリットです。
2-2.仕事の効率化につながる
固定残業代制度が導入されている場合、残業時間が短いほど得になります。そのため、いかに残業をせずに終わらせられるかと、仕事を効率化しようと頑張れるでしょう。
残業をしないために仕事のやり方を工夫することは、能力向上にもつながります。また、残業時間が短くなることで、プライベート時間を確保しやすくなる点もメリットです。
3.みなし残業ありの仕事がおすすめの人の特徴
みなし残業ありの仕事がおすすめの人の特徴を2つ紹介します。
3-1.安定的に収入を得たい
みなし残業ありの仕事では、基本給とみなし残業代が固定で支給されるため、安定的に収入を得たい人におすすめです。
通常の残業代であれば、残業をした月としていない月で支給される残業代の増減が激しいため、収入が安定しにくい傾向があります。
しかし、固定残業代制度が導入されていれば、残業していない月でも一定時間分の残業代が支給されるため、収入が安定しやすくなります。
将来に向けて貯金をしたいと考えている人にとっては、収入が安定することで計画を立てやすくなる点も魅力です。
3-2.仕事の量が安定している
固定残業代制度であれば、同じ仕事量で仕事が早く終わる人と終わらない人でも、固定残業時間内であれば残業代に差が出ません。
通常の残業代制度の場合、残業代目当てで時間外に業務をおこなう人もいます。この場合、同じ仕事量でも残業をせずに終わった人のほうが残業代が少なく、結果として支給される給与額が低くなってしまい、不公平に感じることがあります。
しかし、固定残業代制度では、固定残業時間を超えない限り、残業時間が少ないほど得になるため、不公平感なく働けるようになります。仕事の量が安定していて、残業時間を少なく抑えられる人は、得になることが多いため、みなし残業ありの仕事がおすすめです。
4.みなし残業ありの求人に応募する際の注意点
みなし残業ありの求人に応募する際の注意点を3つ解説します。詳しい内容を確認していきましょう。
4-1.みなし残業時間を確認する
みなし残業ありの求人に応募する際は、募集要項にある、みなし残業時間を必ず確認しましょう。
みなし残業代制度を導入している場合、企業はみなし残業時間やみなし残業代がわかるよう募集要項に明示しなければなりません。厚生労働省の通達では、みなし残業代制度を導入する際に以下3つの内容を明示するよう呼びかけています。
- みなし残業代を除いた基本給の額
- みなし残業時間と金額の計算方法
- みなし残業時間を超える時間外労働(深夜労働や休日労働も含む)に対して割増賃金を支払う旨
3つの内容が実際の募集要項にはどのように記載されているのか、例を紹介します。
- 月給25万円(基本給20万円+固定残業代5万円※)
※固定残業代は、1時間あたりの基礎賃金を2,000円とし、割増率25%で、固定残業時間20時間分の残業代を計算 - 固定残業時間20時間を超える時間外労働分については別途支給
上記の例には、「みなし残業代を除いた基本給の額」「みなし残業時間と金額の計算方法」「みなし残業時間を超える時間外労働に対して割増賃金を支払う旨」の3つすべてが記載されています。
3つの内容がそれぞれ記載されている場合と、例の「月給25万円(基本給20万円+固定残業代5万円)」のように、基本給と固定残業代が月給として記載されている場合もあります。
また、みなし残業時間が長すぎる場合は注意しましょう。労働基準法上、残業してよいのは原則として月45時間までです。
みなし残業時間が45時間を超えている場合、その時点で労働基準法違反の可能性があります。みなし残業時間は45時間以内を目安に確認しましょう。
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参照:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf
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参照:厚生労働省「時間外労働の上限規制」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
4-2.基本給を確認する
固定残業代が含まれた給与額が高くみえても、「基本給だけみると低賃金だった」ということは珍しくありません。
企業は固定残業代を含む前提で基本給を設定するため、基本給が低くなることもあります。
ただし、基本給は最低賃金を下回ってはならないと最低賃金法によって定められているため、基本給が低すぎる場合は最低賃金を下回っていないかを確認しましょう。
最低賃金は地域によって異なり、時間給制・日給制・月給制などによっても変動します。月給制の場合は「月給÷1ヵ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)」で確認できます。
例えば、基本給が18万円で、1ヵ月平均所定労働時間が160時間だった場合、1時間あたりの給与は1,125円です。この金額が、地域別最低賃金を超えていたら問題ありません。
東京の場合は最低賃金の時間額が1,163円(令和6年10月1日時点)のため、例に挙げた給与額は違法となります。
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参照:厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43899.html
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参照:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html
4-3.残業時間や働き方の実態を確認する
みなし残業ありの求人へ応募する際は、残業時間や働き方の実態を確認することも大切です。
定時に仕事が終わっていれば、固定残業時間に関わらず退勤しても問題ありません。しかし、固定残業代制度を理由に「固定残業時間いっぱいは残業するように」と要求するブラック企業が多少なりとも存在するのが現状です。
面接前なら求人サイトや口コミサイトなどで実態を確認できます。ただし、誰でも書き込める口コミサイトでは、ネガティブな内容が目立つこともあるため、あくまで参考程度にとどめておきましょう。
面接時であれば「実際の残業時間はどれくらいか」「実際に社員がどのような働き方をしているのか」など、直接質問することをおすすめします。
なお、JOBPALではキャリアパートナーへの相談が可能なため、応募時に残業時間や働き方の実態を確認できます。
「求人サイトや口コミサイトを見たけどよくわからない」「面接のときに質問するのはハードルが高い」といった人は、ぜひJOBPALの面談をご活用ください。
5.まとめ
みなし残業代制度は、あらかじめ決められた一定時間分の残業代を含めた給与が支給される制度です。
実際の残業時間に関係なく、固定残業時間分の残業代が支給されるため、残業時間が固定残業時間より短ければ得になるメリットがあります。
また、みなし残業代制度では、残業がまったくなかった場合でも残業代が支給されるため、収入が安定しやすい点も特徴です。
みなし残業代制度の仕組みを知ることで、募集要項に記載された残業や給与に関する情報も理解しやすくなります。みなし残業代制度のメリットを把握し、納得のいく仕事選びにつなげましょう。
JOBPALでは、転職活動をするうえでのお悩みに関して、キャリアパートナーへ相談することが可能です。サポートを受けながら転職活動を進めたい人は、JOBPALまでお気軽にご相談ください。
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