派遣の契約・待遇
更新日:2024年11月01日

派遣3年ルールとは?対象者や労働者のメリット・デメリットを解説

派遣3年ルールとは?対象者や労働者のメリット・デメリットを解説

この記事で分かること

  • 派遣3年ルールとは、派遣労働者が同じ事業所で原則3年を超えて勤務できない制度のこと
  • 派遣3年ルールの対象となるのは有期雇用契約の派遣労働者
  • 無期雇用契約や60歳以上など、特定の条件に該当する派遣労働者は対象外
  • 派遣3年ルールの労働期間の制限で雇用形態を変更する機会が増加し、キャリアアップにつながる可能性がある
  • 派遣開始から3年経過後も同一企業で働くには、派遣先企業での部署異動や直接雇用への変更などの方法がある

※この記事は6分で読めます。

「派遣3年ルールってどんな制度?」
「派遣されてから3年経つと辞める必要がある?」
など、派遣3年ルールに関して疑問を持つ方もいるでしょう。

派遣3年ルールとは、派遣労働者が同じ事業所で原則3年を超えて勤務できない制度のことです。ただし、派遣先企業で部署異動や直接雇用への切り替え、派遣元企業での無期雇用契約を締結するなどの対応をすれば、同一事業所で継続して働けます。

今回は、派遣3年ルールの概要や対象となる方、「5年ルール」との違い、3年後も同じ事業所で働く方法などを解説します。この記事を読めば、派遣3年ルールのことがよくわかり、派遣社員として働く際の参考にできます。

1.派遣3年ルールとは?

派遣3年ルールとは、派遣労働者が同じ事業所で原則3年を超えて勤務できない制度のことです。

労働者の雇用の安定やキャリア形成しやすい環境づくりのため、2015年9月に労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)の改正によって、定められました。

派遣3年ルールは、派遣先企業と派遣労働者のどちらを対象にしているかによって、以下の2種類に分かれています。

  • 派遣先の「事業所単位の期間制限」
  • 派遣労働者の「個人単位の期間制限」

「事業所単位の期間制限」は、派遣先の同一事業所で、派遣可能期間の3年を超えて派遣労働者を受け入れられない制限です。事業所とは、工場や事務所、店舗など、場所として独立しているものを指します。

ただし、派遣先の事業所の過半数労働組合(労働者の過半数で構成されている労働組合のこと)などから意見を聴くことで、3年を超えても派遣労働者を雇えるようになります。

「個人単位の期間制限」は、同一の派遣労働者が同じ組織(「課」や「グループ」など)で3年を超えて派遣就業できない制限です。3年後も同一事業所で働く場合は、異なる課やグループなど別の組織に移ることによって、雇用期間を3年延長できます。

例えば、派遣先企業の営業課で3年間働くと派遣3年ルールの期限を迎えますが、人事課に異動した場合は、異動した日から追加で3年間は派遣労働者としての勤務が可能になります。

2.派遣3年ルールの対象者

派遣3年ルールの対象となるのは、派遣元企業と有期雇用契約を結んでいるすべての派遣労働者です。有期雇用契約とは、雇用期間(6ヵ月や1年など)を定めた状態で派遣される雇用契約を指します。

ただし、有期雇用契約を締結していても派遣3年ルールの対象外となる場合もあるため、詳細については次の項目で解説します。

3.派遣3年ルールの対象外になるケース

派遣3年ルールはすべての派遣労働者が対象となるわけではありません。以下の5つのいずれかに該当する方は、期間制限の対象外です。

  • 派遣元企業で無期雇用契約を結んでいる派遣労働者
  • 60歳以上の派遣労働者
  • 有期プロジェクトを担当する派遣労働者
  • 日数限定業務に従事する派遣労働者
  • 産休・育休・介護休業などを取得する労働者の代替業務をおこなう派遣労働者

派遣3年ルールの対象外となる1つ目のケースは、派遣元企業で無期雇用契約を締結している派遣労働者です。無期雇用契約とは期間の定めのない労働契約であり、安定した雇用が確保されているため、派遣3年ルールの期間制限の対象となりません。

2つ目は、60歳以上の派遣労働者です。60歳以上の派遣労働者は、一般的にキャリアアップよりも安定した雇用が重視されるため、期間制限を受けません。

なお、60歳という年齢は、派遣期間が終了した時点のことです。例えば、58歳で派遣労働を開始したとしても、3年後には61歳に達しているため、派遣3年ルールは適用されません。

3つ目は、有期プロジェクト業務を担当する派遣労働者です。すべてのプロジェクトが認められるわけではなく、事業の開始や転換、拡大、縮小、廃止のいずれかに該当する業務で、一定期間内に完了する予定のものが該当します。

4つ目は、労働日数が限定されている業務を担当する派遣労働者で、以下の2つの条件を満たしている業務に従事する方が対象です。

  • 1ヵ月の労働日数が通常の労働者の所定労働日数の半分以下
  • 1ヵ月の勤務日数が10日以下

例えば、棚卸や展示会の運営など、日数を要しない業務が該当します。

5つ目は、産休や育休・介護休業などを取得している社員の代わりに業務をおこなう派遣労働者です。休業中の社員が復職するまでの労働を許可されているため、期間制限の対象になりません。

4.派遣3年ルールと5年ルールの違い

5年ルールは、同一事業所で有期労働契約が5年を超えて更新された場合に、労働者の自らの意思で無期労働契約に転換できる制度です。

2013年4月に改正労働契約法の施行によって規定され、一般的に「無期転換ルール」と呼ばれています。

例えば、契約期間が1年の場合は、5回目の更新後の1年間に無期転換の申込権が発生します。その期間内に労働者が申請することで、無期労働契約に切り替わる仕組みとなっており、申請を受けた企業は無期労働契約を拒否できません。

5年ルールが無期労働契約に移行できる期間を定めた制度であるのに対し、派遣3年ルールは派遣期間を制限する制度という違いがあります。

また、5年ルールは派遣労働者だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなど、すべての有期契約労働者が対象ですが、派遣3年ルールは派遣労働者のみに適用されます。

5.派遣3年ルールのメリット

ここでは、派遣3年ルールのメリットを2つ紹介します。

  • 長期的なキャリアプランを確立できる
  • 労働条件が向上する可能性がある

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

5-1.長期的なキャリアプランを確立できる

派遣3年ルールの大きなメリットとして、派遣期間が3年を超えた際に、正社員として直接雇用される可能性があることが挙げられます。

仮に派遣可能期間に制限がなければ、派遣先企業は無期限で同じ派遣労働者の雇用が可能なため、正社員としての契約に切り替える機会が発生しにくいでしょう。

派遣可能期間の制限があることで雇用形態が変化するきっかけとなり、キャリアの安定化や長期的なキャリアプランの形成をしやすくなる可能性があります。

5-2.労働条件が向上する可能性がある

派遣労働者として3年間働いた後に正社員として働ける可能性があることで、給与や福利厚生などの労働条件が向上する場合があります。

また、一般的に正社員は派遣労働者よりも重要な仕事を任される機会が多く与えられます。そこでの働きぶりが認められると、企業から評価され、昇進・昇給するなどして給与がさらに上乗せされる可能性もあるでしょう。

6.派遣3年ルールのデメリット

次に、派遣3年ルールのデメリットを2つ紹介します。

  • 3年以内に労働契約が終了する可能性がある
  • 派遣会社と無期雇用契約をすると直接雇用が難しい場合もある

どのような不安要素があるのかを確認しましょう。

6-1.3年以内に労働契約が終了する可能性がある

派遣期間が3年に制限されることで、派遣先企業での直接雇用や部署異動がおこなわれない場合は、派遣契約が終了する可能性があります。

契約終了後に派遣労働者として働きたい場合は、別の事業所に移らなければならないため、雇用の不安定さを感じる方もいることでしょう。

また、短期的な契約が繰り返されるため、契約が終了するたびに新たな仕事を覚えなければなりません。業務内容がひんぱんに変更されることで、今まで積み上げてきた経験を活かせず、自身の成長につながりにくくなる可能性もあります。

6-2.派遣会社と無期雇用契約をすると直接雇用が難しい場合もある

派遣期間の3年間が終了すると、派遣元企業と無期雇用契約を結ぶ選択肢があります。

派遣元企業と無期雇用契約を結ぶと、雇用は安定しますが、派遣先企業から直接雇用される可能性が低くなります。

なぜなら、無期雇用契約の派遣労働者には派遣3年ルールが適用されないため、同一事業所でも派遣労働者として3年以上働き続けられるからです。

派遣先企業としては、長期間働ける派遣社員を、雇用コストが増加する可能性の高い直接雇用に切り替える必要性がなくなります。

このように、派遣先企業での直接雇用が難しくなるため、派遣先企業に直接雇われたい方にとってはデメリットといえます。

7.派遣労働開始から3年後も同じ会社で働く方法

派遣3年ルールの対象になると、部署を変えない限り同一事業所との派遣契約は終了するため、その後の働き方を考えることが重要です。派遣労働開始から3年後も同じ会社で働くには、主に以下の3つの方法があります。

  • 正社員として採用してもらう
  • 契約社員やパート・アルバイトで働く
  • 無期雇用派遣に転換する

それぞれの選択肢の詳しい内容を確認しましょう。

7-1.正社員として採用してもらう

派遣先企業に直接雇用で正社員として採用されると、派遣3年ルールの対象から外れるため、引き続き勤務することが可能です。

直接雇用されるには、派遣元企業と派遣先企業の双方が合意しなければなりません。両社の合意が得られ、派遣期間中の業務能力や仕事への取り組み姿勢が評価されれば、正社員として契約してもらえる可能性があります。

ただし、派遣先企業によっては、正社員の採用枠や予算などの問題から、必ずしも正社員になれるとは限らないことを理解しておきましょう。

7-2.契約社員やパート・アルバイトで働く

派遣先に直接雇用してもらう場合の雇用形態は、正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイト社員として働く方法もあります。

契約社員は、一般的に派遣労働者よりも重要な業務を任せられる機会が増えるため、働きぶりによっては正社員を目指せる可能性も広がります。

パートやアルバイトとして働く場合は、自身の生活スタイルに合わせて短時間の勤務や休日を希望しやすくなるでしょう。

7-3.無期雇用派遣に転換する

派遣元企業と無期雇用契約を結んだ場合は、派遣3年ルールの対象外となり、制限期間を超えても同一事業所の同じ組織での勤務が可能です。

有期雇用契約から無期雇用契約となることで、派遣元企業から安定した雇用環境が提供されます。

ただし、派遣先企業ではなく、派遣元企業との無期雇用契約であるため、派遣先企業が変更される可能性もあります。

8.派遣3年ルールに違反したら

派遣労働者は、派遣3年ルールに違反した責任を問われることはほとんどありません。しかし、本来は派遣3年ルールに基づいて正社員として働ける可能性があったため、その機会を損失したことになります。

一方で、派遣元企業や派遣先企業が違反した場合は、労働基準監督署やその他の労働監督機関によって指導がおこなわれることがあります。

また、制限期間を超えて派遣した場合は「労働契約申込みみなし制度」の対象です。

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先企業が違法であることを承知のうえで派遣された労働者を受け入れた場合に、派遣労働者に対して労働契約の申し込みをしたとみなされる制度のことです。

労働契約の申し込みをしたとみなされた日から1年以内に、派遣労働者が派遣先企業との直接雇用に対して承諾すると、労働契約が成立します。

このように、派遣先企業は派遣労働者を直接雇用する責任を負いますが、派遣労働者にとっては、雇用の安定につながります。

9.まとめ

派遣3年ルールとは、同一事業所で派遣労働者が原則3年を超えて勤務できない制度のことです。

有期雇用契約を結んでいる派遣労働者にルールが適用されますが、無期雇用契約や60歳以上など、特定の条件に当てはまる派遣労働者は対象外です。

派遣労働者として同一事業所で働ける期間が制限されることで、正社員や契約社員など、別の雇用形態に変わる機会が与えられることがあります。

派遣労働者から正社員に雇用形態が変更になった場合は、給与や福利厚生などの労働条件が向上する可能性もあるでしょう。

派遣3年ルールに関する疑問点を解消できたら、次は求人に応募してみましょう。

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