施工管理の平均残業時間は?多い理由やより良い環境で働く方法、残業を減らす取り組みを紹介

この記事で分かること
- 施工管理の平均残業時間は20~30時間であり、全産業や建設業全体の平均よりも多い
- 施工管理の残業時間が多い理由は、業界全体の人材不足や働き方改革・デジタル化の推進の遅れなどである
- 建設業法の改正や時間外労働の上限規制の適用など、施工管理の労働環境を改善する取り組みが進んでいる
- より良い環境で働きたいなら、雇用形態の変更や、IT化を進めている会社への転職を検討するのも良い
※この記事は6分30秒で読めます。
「施工管理の残業時間が多いのはなぜ?」
「施工管理の残業時間を減らすための方法は?」
など、施工管理の残業時間に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
施工管理は業界全体の人材不足や担当業務の幅広さによって、残業時間が多くなる傾向があります。
今回は、施工管理の平均残業時間や残業時間が多い理由、施工管理の魅力、残業時間を削減するための取り組みなどを解説します。この記事を読めば、施工管理の現状について理解でき、施工管理として無理なく働き続けるための方法を検討しやすくなるでしょう。
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1.施工管理の残業時間は多い?
一般的な会社員や建設業全体、施工管理の1ヵ月の平均残業時間を以下の表にまとめました。
一般的な会社員(※) | 建設業全体(※) | 施工管理 |
---|---|---|
13.3時間 | 13.2時間 | 20~30時間 |
施工管理の平均残業時間は月に20〜30時間といわれており、一般的な会社員のデータと比べると1.5〜2倍ほど多くなっています。また、建設業全体のデータと比べても平均残業時間が長く、建設業の職種のなかでも残業は多めの傾向にあるといえるでしょう。
ただし、上記はあくまで残業時間の平均であるため、実際の残業時間は企業や個々の労働者が抱えている仕事量などによって異なります。
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(※)参照:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果確報」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r06/2409r/2409r.html
※「一般的な会社員」は一般労働者の調査産業計のデータ、「建設業全体」は一般労働者の建設業のデータを使用している
2.施工管理の残業時間が多い理由
施工管理の残業時間が多い理由を5つ紹介します。理由を理解しておくと、施工管理として働くかどうか検討しやすくなるでしょう。
2-1.業界全体で人材が不足している
施工管理の残業時間が多い理由には、建設業全体の人材不足が挙げられます。
国土交通省が発表している「建設業を巡る現状と課題」によると、2022年の建設業の就業者数は479万人でした。ピーク時の1997年の就業者数と比べると、約30%少なくなっています。
さらに、建設技能者の25.7%は60歳以上であり、10年後にはその多くが引退する見込みです。
就業者数の減少と高齢化によって業界全体の人材が不足しているため、施工管理を務められる人材も少なくなっています。結果的に、一人当たりの業務量が増え、施工管理の残業時間が多くなります。
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参照:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf
2-2.働き方改革・デジタル化が進んでいない
施工管理を含む建設業での働き方改革やデジタル化が進んでいない点も、残業時間が多くなっている理由の一つです。
2019年4月以降、働き方改革関連法が施行され、各業界では時間外労働の上限の規制などが進められてきました。
一方、建設業は長時間労働が常態化しており、労働時間の規制をすぐに導入するのは難しいため、規制の適用が2024年4月まで延期されていました。そのため、他の業界よりも働き方改革の進みが遅れています。
また、施工管理の業務には、工事現場の写真整理や報告書の作成などが含まれ、昔からのやり方に慣れてデジタル化できない場合もあります。デジタル化が進んでいない会社では手作業でおこなう業務が多く、残業が長引きやすくなる傾向です。
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参照:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
2-3.仕事内容が多岐にわたる
施工管理は仕事内容が多岐にわたるため、業務を終えるのに時間がかかり、残業が増えてしまいます。
施工管理は現場での仕事以外に、さまざまな事務作業もおこなっています。以下は、事務作業の具体例です。
- 施工計画書の作成
- 顧客との打ち合わせ資料の作成
- 行政への許可申請
- 原価の計算
- 請求書の作成
日中は工事現場での業務をおこなうため、事務作業に取りかかれるのは現場での仕事が終わってからです。そのため、施工管理の残業時間は長くなる傾向にあります。
2-4.作業時間が外部環境に左右されがち
施工管理では工期を守れるよう業務を進めますが、天候や建設資材の運搬状況、事故などの影響で工事がスケジュール通りに進まないことがあります。
トラブルによる遅れが発生したら、工期に間に合わせるために残業や休日出勤を求められる場合もあります。
現場で残業したあとに事務作業もする必要があるため、トラブルが起こるたびに残業時間が多くなっていくでしょう。
2-5.短い工期で仕事を請け負うことが多い
会社が短い工期で工事を終わらせる契約を結ぶと、期限内に工事を終わらせるために、施工管理の残業時間が多くなってしまいます。
工期が短いと、発注者は工事に携わる労働者の人件費や重機を借りる料金などを削減できたり、騒音や振動による近隣住民への負担が短い期間で済みます。そのため、短い工期で工事に対応できる建設業者は、発注者から選ばれやすくなります。
しかし、工期が短いと施工管理を含む工事関係者の1日あたりの負担が増えるため、残業が多くなりやすいです。
3.大変さの中にある施工管理の魅力
施工管理は労働時間が長いため大変さもありますが、魅力もある仕事です。ここでは、施工管理の魅力を3つ紹介します。
3-1.将来性のある専門スキルが身につく
施工管理の仕事や経験を通じて、業界でさらに活躍するための専門スキルを習得可能です。施工管理には、専門スキルを証明できる施工管理技士という国家資格があります。
施工管理技士は土木施工管理技士や建築施工管理技士など多くの種類に分かれており、それぞれ1級と2級があります。2級を取得すると主任技術者、1級を取得すると監理技術者になることが可能です。
主任技術者は、工事現場で計画の作成や安全管理など施工の技術上の管理を担当します。監理技術者は主任技術者の業務に加え、下請け業者への指導もおこないます。
現場での重要な役割を担いながらキャリアアップしていける点が、施工管理の魅力です。
3-2.給与水準が高い傾向にある
国税庁が発表した「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、建設業の平均年収は548万円でした。全産業の平均年収は460万円のため、建設業の給与水準は高めです。
経験年数や資格の有無にもよりますが、建設業に含まれる施工管理の給与水準も高めであるといえるでしょう。
施工管理は幅広い業務を担当する大変さもありますが、安定的に高収入を得られる魅力があります。さらに、資格を取得し専門性を身につけることで担当できる業務が増え、収入アップも期待できます。
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参照:国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2023/pdf/R05_000.pdf
3-3.自分の仕事が目に見える形で残せる
施工管理の魅力の一つに、自分の仕事が目に見える形で残せる点があります。
工事が無事に終わり、完成した建築物を見たときは大きな達成感を味わえます。さらに、自分が関わった建築物が地図に載ったり、多くの人々に利用されているのを見たりすると、やりがいや喜びを感じられるでしょう。
4.施工管理の労働環境が変わる!具体的な取り組み
施工管理の労働環境を改善するための取り組みを2つ紹介します。取り組みについて知っておくと、施工管理として働くかどうか検討しやすくなるでしょう。
4-1.改正建設業法の施行
施工管理を含む建設業全体の労働環境改善に向けた取り組みに、改正建設業法の施行があります。改正後の法律を守らずに従来のやり方で仕事を進めると罰則の対象となるため、建設業の労働環境の改善が進むことが期待できます。
改正建設業法の主要なポイントは、工期の適正化による働き方改革の推進です。2019年・2024年の法改正により、時間外労働の原因である著しく短い工期の請負契約を禁止するなど、厳しい労働環境に対する規制を強化し続けています。(※1、2)
また、同法に基づき作成された「工期に関する基準」では、工期の適正化に関するルールが示されており、すべての建設現場で週休2日(4週8休)を確保するための方針や具体策が盛り込まれています。(※3)
改正建設業法により、建設業全体の労働環境の改善が着実に進んでいくでしょう。
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(※1)参照:国土交通省「建設業法、入契法の改正について」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000176.html
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(※2)参照:国土交通省「第三次・担い手3法(品確法と建設業法・入契法の一体的改正)について」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000193.html
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(※3)参照:国土交通省「建設・不動産業:工期に関する基準」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000190.html
4-2.建設業における時間外労働の上限規制
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。上限ができたことにより、施工管理の時間外労働を削減する取り組みもさらに進むでしょう。
時間外労働の上限は、36協定を締結した場合と特別条項付き36協定を締結する場合で異なります。36協定とは、労働基準法第36条に基づいた、1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超えて働く際に必要な労使協定のことです。(※1)
時間外労働の上限規制により、36協定で定める労働時間は上限である月45時間・年360時間の範囲内でなければなりません。(※2)
一方で、繁忙期などに36協定の上限を臨時的に超えられる特別条項付き36協定も締結できます。その場合には、以下の条件をすべて守る必要があります。(※2)
- 年間の時間外労働の上限は720時間
- 月45時間を超える時間外労働は年6回まで
- 休日労働を含む時間外労働の合計は月100時間未満
- 休日労働を含む2~6ヵ月の時間外労働の平均は80時間以内
上限を超えた時間外労働は法律違反となり、会社は罰則を受ける可能性があります。そのため、上限規制を踏まえて、施工管理の残業時間がより少なくなっていくでしょう。
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(※1)参照:e-Gov 法令検索「労働基準法|第36条」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049#Mp-At_36
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(※2)参照:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
5.施工管理としてよりよい環境で働くには?
施工管理としてよりよい環境で働く方法を2つ紹介します。今の職場環境に不満がある方は、参考にしてください。
5-1.雇用形態を変える
施工管理としてよりよい環境で働きたいなら、雇用形態の変更も選択肢の一つです。
例えば、正社員から派遣社員へ働き方を変えるとしましょう。
派遣社員の労働時間は派遣先と派遣会社の契約によって決められているため、契約外の残業は発生しにくいです。さらに、派遣先から残業や休日出勤を頼まれても、雇用契約書に残業や休日出勤について明記されていない場合は断ることもできます。
現場仕事や事務作業などで忙しくなりがちな正社員と比べると、派遣社員は残業が少ない傾向にあるため、プライベートとの両立がしやすくなるでしょう。
5-2.IT化や働き方改革を推進している会社に転職する
IT化や働き方改革を推進している会社は働きやすい環境づくりが進んでいるため、これまでに培ったスキルを活かしながらよりよい環境で働ける可能性があります。
そのため、今の労働環境に不満があり、上司や同僚に相談しても改善が見込めない場合には、転職を検討してみるのもよいでしょう。
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6.まとめ
施工管理の1ヵ月の平均残業時間は20〜30時間であり、労働者全体の平均よりも多いです。一方で、専門スキルが身についたり、高収入を得られたりといった魅力もあります。
さらに、建設業法の改正や時間外労働の上限規制など、労働環境を改善する取り組みも進んでいます。
施工管理の残業の多さに悩んでいる方は、正社員以外の働き方や、IT化や働き方改革を推進している会社への転職を検討してみるのもよいでしょう。
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