土木施工管理技士とは?資格の取り方や向いている人の特徴、魅力とメリットを解説

この記事で分かること
- 土木施工管理技士は国家資格の一つで、土木工事の工程や安全を管理する専門的な職種である
- 土木施工管理技士になるメリットには、平均給与が高い、昇進・昇格につながるなどが挙げられる
- 計画を立てることが得意な人やコミュニケーションを取ることが好きな人は、土木施工管理技士に向いている
※この記事は6分30秒で読めます。
「土木施工管理技士の仕事内容は?」
「土木施工管理技士に向いているのは?」
など、土木施工管理技士に関して疑問を持っている人もいるでしょう。
土木施工管理技士は、土木工事の工程や安全、品質などの管理をおこなう専門的な職種です。
今回は、土木施工管理技士の概要や建築施工管理技士との違い、仕事の魅力、向いている人の特徴などを詳しく解説します。この記事を読めば、土木施工管理技士のことがよくわかり、土木施工管理技士が自分に合っているか判断できるようになるでしょう。
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1.土木施工管理技士とは?
土木施工管理技士とは、土木工事が計画通りに進行するよう管理・監督する専門的な職種です。主に建設会社や不動産会社、鉄道会社の土木部門などで活躍しています。
携わる土木工事の種類は、道路やトンネル、橋における公共工事、災害時の復旧工事などさまざまです。
土木工事の施工管理そのものには、特別な資格を持っていない人でも従事できます。しかし、工事の責任者にあたる主任技術者や監理技術者として働くには、土木施工管理技士の国家資格が必須です。
土木施工管理技士の主な仕事内容は、以下のとおりです。
- 施工計画の作成
- 計画通りに進めるための工程管理
- 工事にかかるコストを予算内に収めるための原価管理
- 設計図書で指示された品質を保持する品質管理
- 現場内外での事故を未然に防ぐ安全管理
上記で挙げた現場での業務以外にも、工事に関する役所での申請・手続きや周辺住民への説明、クレーム対応など、幅広い業務を任されます。
1-1.級による違い
土木施工管理技士の資格には1級と2級があり、級によって「従事できる工事現場の規模」や「受検資格」が異なります。
土木工事を含む建設現場において、下請との契約金額の合計が4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満)の場合は「主任技術者」を、4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の場合は「監理技術者」を配置しなければなりません。(※)
2級で担当できるのは主任技術者に限定されますが、1級であれば主任技術者と監理技術者のどちらも担当することが可能です。つまり、2級より1級のほうが、より大きい工事現場を管理できます。
また、後述するように、2級のほうが受検資格を得られる年齢が上であることや、必要な実務経験年数が長いことから、受検資格を得るまでのハードルが高いといえます。
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(※)参照:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアルについて」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001580032.pdf
1-2.建築施工管理技士との違い
土木施工管理技士と建築施工管理技士の違いは「従事する工事の種類」にあります。
土木施工管理技士は、道路やトンネル、橋、ダムなどを建設する「土木工事」を担います。一方の建築施工管理技士が担うのは、住宅やビル、商業施設などを建設する「建築工事」です。
どちらも同じ施工管理であるため、施工計画の作成や工程・品質管理をおこなう点では共通しています。
2.土木施工管理技士になる魅力とメリット
土木施工管理技士になる魅力とメリットを3つ紹介します。
2-1.平均給与が日本の平均よりも高い
厚生労働省の調査によると、令和5年の土木施工管理技士の平均給与は、603万9,000円でした。(※1)令和5年の給与所得者の平均給与は460万円のため、日本の平均給与より土木施工管理技士の平均給与のほうが高いことがわかります。(※2)
また、土木施工管理技士に資格手当を支給する企業があり、なかには受検料を負担する制度や合格時に祝い金を支給する制度を設けている場合もあります。
そのため、土木施工管理技士の資格を取得することで、高い給与を得られるようになる点がメリットの一つです。
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(※1)参照:jobtag「土木施工管理技術者 - 職業詳細」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/23
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(※2)参照:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2023.htm
2-2.昇進や昇格につながる
土木施工管理技士の資格取得は、昇進や昇格、さらには昇給につながる点もメリットです。主任技術者や監理技術者は資格がないと従事できないため、昇進や昇格の条件に資格取得を挙げている企業もあり、資格保有者が優遇される傾向にあります。
また、資格を持っていることが、一定の知識や技術を持っている証明になります。そのため、社内だけでなく社外からの評価にもつながるので、転職する際は資格がない人よりも転職活動を有利に進められるでしょう。
2-3.よりやりがいのある仕事を任される
土木施工管理技士の資格を取得できれば、主任技術者や監理技術者として工事に従事できます。施工における重要な判断や工事に従事する者の指導・監督など、責任ある仕事を任されることが多くなります。
土木施工管理技士の資格を取得し、現場経験を積み重ねることで、知識や技術も向上するでしょう。その結果、企業からも重宝される人材となり、より規模の大きな現場を任せてもらえる可能性が高まります。
3.土木施工管理技士に向いている人の特徴
ここでは、土木施工管理技士に向いている人の特徴を紹介します。これから土木施工管理技士を目指す人は、自分に向いているかを見極める際の参考にしてください。
3-1.計画を立てることが得意
普段から計画を立てることが得意な人は、施工計画の作成やスケジュールの調整を円滑にできる可能性が高いため、土木施工管理技士として向いています。
土木工事に限らず、建設工事においては工期の遵守が不可欠です。工期までに工事が終わらないと、お客様に迷惑をかけるだけでなく、工事の延長により利益が減ることもあります。
そのため、土木施工管理技士は、工期に間に合うよう工事全体を管理しなければなりません。具体的には、工期に間に合うよう施工計画を作成したり、計画通りに工事が進んでいるかを確認したりするのが役割です。
普段のスケジュール管理ができる人は、工事の計画や進捗確認にスキルを活かせるため、施工管理技士の仕事でも活躍しやすいでしょう。
3-2.コミュニケーションを取るのが好き
普段からさまざまな人とコミュニケーションを取るのが好きな人は、土木施工管理技士に向いています。
土木施工管理技士は、工事現場においてお客様や作業員、周辺住民など、多くの人と関わりながら仕事を進めなければなりません。状況によっては、的確な指示を出すだけでなく、相手からの意見や要望を聞いたり説得したりする場面も出てきます。
また、工事現場では多くの作業員が集まって、一つの仕事を進めることになります。特に土木工事は大規模になることが多く、何十人もの作業員をまとめながら指揮を取ることもあるでしょう。
そのため、コミュニケーションを通じて人をまとめることが得意であれば、土木施工管理技士としてより円滑に工事を進められる可能性があります。
3-3.柔軟性がある
施工の現場ではさまざまなトラブルが起きる可能性があるため、柔軟性のある人が土木施工管理技士に向いています。
特に工事現場では、予定していた材料が届かなかったり、天候が悪く工事を進められなかったりと、予期せぬ問題が起こることがあります。このような問題を事前に予測したり対処したりすることも、土木施工管理技士の仕事です。
万が一計画にずれが生じた場合、どうすれば納期通りに終えられるかを考え、その場の状況に応じて行動できる人であれば、土木施工管理技士として重宝されるでしょう。
4.土木施工管理技士になるには?
土木施工管理技士になるには、国家資格の取得が必須です。ここからは、土木施工管理技士の資格を取得する際に受検する「土木施工管理技術検定」について、概要や難易度、勉強方法を詳しく解説します。
4-1.土木施工管理技術検定試験について
土木施工管理技術検定は、土木施工管理技士になるために受検する検定の名称です。前述のとおり土木施工管理技士は1級と2級に分かれており、それぞれ第一次検定・第二次検定の両方に合格する必要があります。
土木施工管理技士は、2級を取得せずに1級から取得することもできます。しかし、2級のほうが年齢的に早い段階で受検資格が与えられることや、第二次検定の受検に必要な実務経験が短いことから、2級の取得から目指すのが一般的です。
また、土木施工管理技術検定は、令和6年度から受検資格が変わっています。これまで学歴によって受検要件が異なっていましたが、新受検資格では学歴に関係なく、年齢や実務経験年数によってのみ受検資格が与えられるようになりました。
主な新受検資格を表にまとめたので、これから検定を受ける人はぜひ参考にしてください。
級 | 第一次検定 | 第二次検定 |
---|---|---|
19歳以上(受検年度末時点) | 1級 第一次検定合格後、以下のいずれかを満たす
|
|
2級 第二次検定合格後、以下のいずれかを満たす(※)
|
||
17歳以上(受検年度末時点) | 2級 第一次検定合格後、実務経験3年以上(建設機械種目については2年以上) | |
1級 第一次検定合格後、実務経験1年以上 |
(※)1級 第一次検定合格者に限る
-
参照:国土交通省「令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります(チラシ)」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001707687.pdf
なお、受検資格の変更にともない、令和6年度から令和10年度までは経過措置として旧受検資格での受検も可能です。
新受検資格をさらに詳しく知りたい人や旧受検資格で受検したい人は、一般財団法人全国建設研修センターのホームページをあわせてご覧ください。
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参照:一般財団法人全国建設研修センター「技術検定のご案内」
https://www.jctc.jp/exam/guide/
4-2.難易度
土木施工管理技術検定は、合格率が低く、難易度は高いといえます。
土木施工管理技術検定の2級第一次検定は、前期と後期の年2回実施されており、令和6年度前期の合格率は43.0%で、後期の合格率は45.0%でした。(※1、2)また、令和6年度の土木施工管理技術検定の1級第一次検定の合格率は44.4%でした。(※3)
このように、1級も2級も第一次検定の合格率は直近で5割を切っています。
類似する施工管理技術検定で、2級第一次検定の合格率を比較してみましょう。(※1)
年度 | 土木 | 管工事 | 電気通信工事 |
---|---|---|---|
令和6年度(前期) | 43.0% | 66.4% | 59.5% |
上記の表から、管工事や電気通信工事に比べて、直近は土木の合格率が低いことがわかります。
さらに、1級・2級ともに第二次検定は第一検定より難易度が上がります。なぜなら、第一次検定より第二次検定のほうが試験範囲が広いうえ、第二次検定では第一次検定になかった記述式の問題もあるためです。
特に記述式は、自身の経験をもとに、具体的にどのような仕事に関わったかを文章にする独特の問題も出題されるため、事前のトレーニングが必要です。
上記からわかるように、土木施工管理技士の資格は簡単に取得できる資格とはいえません。そのため、資格取得に向けて、受検に必要な実務経験を積みながら、計画的に勉強することが大切です。
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(※1)参照:一般財団法人全国建設研修センター「令和6年度2級土木・管工事・電気通信工事・造園施工管理技術検定『第一次検定(前期)』」
https://www.jctc.jp/kentei/info/datasheets20240702.pdf
-
(※2)参照:一般財団法人全国建設研修センター「令和6年度2級土木施工管理技術検定『第一次検定・第二次検定(受検者の内、第一次検定)』、『第一次検定(後期)』の合格者の発表について」
https://www.jctc.jp/kentei/info/datasheets20241204.pdf
-
(※3)参照:一般財団法人全国建設研修センター「令和6年度1級土木施工管理技術検定『第一次検定』の合格者の発表について」
https://www.jctc.jp/kentei/info/datasheets20240815.pdf
4-3.勉強方法
土木施工管理技術検定試験の勉強方法には、主に以下の3つがあります。
- 参考書や過去問で独学する
- オンラインの通信講座を利用する
- 専門学校に通う
独学で勉強するなら、市販の参考書や過去問などを活用しましょう。自分のペースで勉強でき、試験勉強にかかる費用を抑えられます。ただし、周りに質問できる人がいないと、理解できない箇所がそのままになってしまう点がデメリットです。
オンラインの通信講座は、自宅に届く問題集やDVD、動画などを活用して勉強します。すきま時間で勉強を進められ、教材によっては解答を添削してくれたり、わからないことをメールやチャットで質問できたりします。
独学で勉強するより費用はかかりますが、勉強をサポートしてもらいやすい点がメリットです。
専門学校では合格に向けて適切なカリキュラムが組まれているうえ、すぐに質問できる環境が整っているため、理解を深めながら勉強できます。特に、短期間でより確実に合格したい人におすすめの方法です。
ただし、専門学校は授業のある日程や時間が決まっているため、現在仕事に就いている人は通学が難しい場合もあるでしょう。独学や通信講座に比べて費用も高めな点に注意が必要です。
資格取得のスケジュールや予算を踏まえ、自分にあった勉強方法を見極めましょう。
5.まとめ
土木施工管理技士とは、土木工事の工程や安全、予算を管理する職種で、工事の主任技術者や監理技術者として活躍できます。
土木施工管理技士は平均給与が日本全体の平均給与より高く、資格取得によって昇格や昇進につながったり、やりがいのある仕事を任されたりすることなどが魅力です。
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