二級ボイラー技士の資格の概要と試験内容や対策方法を解説
この記事で分かること
- 二級ボイラー技士は、ボイラーの運転・管理に必要な国家資格であり、幅広い業界で活躍できる
- 二級ボイラー技士の試験は、学科試験と実地修習や職業訓練から構成されている
- 二級ボイラー技士の資格は、製造業や発電所、公共施設など、さまざまな場所で活かせる
※この記事は6分30秒で読めます。
「二級ボイラー技士はどのような資格?」
「二級ボイラー技士を取得するメリットは?」
など、二級ボイラー技士に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
二級ボイラー技士は、ボイラーの運転・管理に必要な国家資格であり、資格取得により幅広い業界で活躍するチャンスにつながります。
今回は、二級ボイラー技士の概要をはじめ、試験内容や勉強方法などを解説します。この記事を読めば、二級ボイラー技士について理解を深められ、資格取得に向けた準備を始められます。
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1.二級ボイラー技士の概要
二級ボイラー技士は、ボイラーの運転・管理に必要な国家資格です。ボイラーとは、工場やビルの暖房設備などで使用される圧力容器です。
高温・高圧で蒸気を発生させるため、安全な運転と管理が重要で、ボイラー技士の資格保有者による適切な取扱いが求められます。
二級ボイラー技士について以下の内容を解説します。
- 二級ボイラー技士の受験資格
- 二級ボイラー技士取得でできる主なこと
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.二級ボイラー技士の受験資格
二級ボイラー技士の受験資格は特になく、本人確認証明書の提出ができれば、特定の学歴や職歴は要求されず、誰でも受験できます。
ただし、後述する免許取得の条件を満たすためには、一定期間のボイラー取り扱い経験が必要です。
1-2.二級ボイラー技士取得でできる主なこと
二級ボイラー技士を取得すると、ボイラーの運転・管理に関する幅広い業務を担当できます。対応可能な仕事内容の範囲は以下のとおりです。
- ボイラーの運転操作
- 保守点検
- 故障時の対応
- 安全管理
運転操作では、ボイラーの起動・停止や温度・圧力の調整、燃料の供給などをおこないます。
保守点検では、定期的にボイラーの各部位を点検し、異常の有無を確認します。故障時には、原因を特定して適切に対処します。
安全管理では、法令に基づいた適切な運転・管理をおこない、事故を未然に防ぐことが重要な責務となります。
二級ボイラー技士の資格を取得すると、製造工場やビル、発電所といった施設など、ボイラーの安全かつ効率的な運用が求められるさまざまな現場で活躍できるでしょう。
2.二級ボイラー技士の試験内容
二級ボイラー技士の試験は、学科試験に加えて、実地修習や職業訓練の2つで構成されています。
2-1.学科試験
学科試験は、ボイラーに関する専門知識を問う筆記試験です。試験科目と範囲は以下のとおりです。
試験科目 | 範囲 |
---|---|
ボイラーの構造に関する知識 |
|
ボイラーの取扱いに関する知識 |
|
燃料および燃焼に関する知識 |
|
関係法令 |
|
学科試験では、ボイラーの構造や取扱い、燃料や燃焼、関係法令など、ボイラーの運転・管理に必要な幅広い知識が問われます。二級ボイラー技士に合格するには、これらの分野に関する十分な学習と理解が必要です。
-
参照:一般社団法人 日本ボイラ協会「二級ボイラー技士免許の取得について」
https://www.jbanet.or.jp/license/boiler-license/second-boiler/
2-2.実地修習や職業訓練
実地修習や職業訓練とは、学科試験合格後に必須となる実務経験のことです。ボイラーの取扱い経験がない方は、学科試験に合格しただけでは免許を発行できません。
免許取得の条件として、一定期間のボイラー取扱い経験や、指定された講習の修了が求められます。
一般社団法人 日本ボイラ協会の公式ホームページの記載によると、免許を受けられる主な条件は以下のとおりです。
- 高校・大学などでボイラーに関する学科を修め、3ヵ月以上の実地修習を経た方
- 6ヵ月以上のボイラー取扱いの実地修習を経た方
- ボイラー取扱技能講習を修了し、4ヵ月以上の小規模ボイラー取扱経験がある方
- 他の関連資格(熱管理士、海技士、ボイラー・タービン主任技術者など)を有し、一定のボイラー取扱経験がある方
- 職業訓練のボイラー運転科を修了した方
条件の詳細については、下記の参照ページをご確認ください。
-
参照:一般社団法人 日本ボイラ協会「二級ボイラー技士免許の取得について」
https://www.jbanet.or.jp/license/boiler-license/second-boiler/
また、実地修習や職業訓練を通じて、ボイラーの実際の運転・管理に必要な技能を身につけなければなりません。
現場などでの実践的な経験を通して、ボイラーの構造や動作原理への理解を深め、運転操作や保守点検、トラブル対応などの実務能力を習得します。
実地修習や職業訓練の期間は、ボイラーの取扱いに関する安全意識や責任感を養う貴重な機会でもあります。指導者の下で、安全な作業手順や法規制の遵守、緊急時の対応などを学び、二級ボイラー技士としての基本的な心構えを身につけていきましょう。
3.二級ボイラー技士の試験日程
二級ボイラー技士の試験は、全国7ヵ所の安全衛生技術センターで毎月1回以上実施されています。令和6年度の試験日程は下記のとおりです。
北海道 センター |
東北 センター |
関東 センター (市原) |
関東 センター (東京試験場) |
中部 センター |
近畿 センター |
中国四国 センター |
九州 センター |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
令和6年 4月 |
10 | 10 | 10 | ー | 10 | 10 | 10 | 10 |
5月 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
6月 | 13 | 13 | 13 | 13 | ー | 13 | 13 | 13 |
7月 | 10 | 10 | 10 24 |
10 24 |
10 | 10 | 10 | 10 |
8月 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 |
9月 | 26 | 26 | 26 | 26 | 26 | 26 | 26 | 26 |
10月 | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 |
11月 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 |
12月 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 |
-
参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「試験の日程」
https://www.exam.or.jp/exmn/H_nittei122.htm
4.二級ボイラー技士の試験申し込み方法
二級ボイラー技士の試験申し込み方法は、主に窓口での手続きと郵送が挙げられます。窓口での申し込みの場合、受験申請書は全国にある以下の安全衛生技術センターなどで入手可能です。
- 公益財団法人 安全衛生技術試験協会
- 北海道安全衛生技術センター
- 東北安全衛生技術センター
- 関東安全衛生技術センター
- 関東安全衛生技術センター東京試験場
- 中部安全衛生技術センター
- 近畿安全衛生技術センター
- 中国四国安全衛生技術センター
- 九州安全衛生技術センター
試験の申し込みは、試験日の約2ヵ月前から始まります。受験申請書の提出期限は、郵送の場合は試験日の14日前まで、窓口持参の場合は試験日の2日前までとなっています。
オンライン申請は、公益財団法人 安全衛生技術試験協会のホームページで手続きします。
アカウントを作成し、試験種類を確認したうえで、「オンライン完結」または「オンライン+郵送」の方法で申請を進めてください。再受験の場合はオンライン申請が利用できます。
5.二級ボイラー技士の試験勉強と対策方法
二級ボイラー技士の試験に合格するには、効果的な勉強方法と対策が必要です。限られた時間の中で効率良く学習を進めるには、自分に合った勉強スタイルを見つける必要があります。
ここでは、二級ボイラー技士の試験対策に役立つ勉強法として、以下の2つを紹介します。
- 参考書や問題集を使う
- 動画やオンライン講座で勉強する
それぞれ詳しく解説します。
5-1.参考書や問題集を使う
二級ボイラー技士の試験対策には、参考書や問題集を活用することが効果的です。まずは、試験範囲に沿った参考書を選び、基礎知識をしっかりと身につけましょう。
参考書では、ボイラーの構造や運転、法令など、試験に頻出のテーマが体系的に解説されています。
次に、問題集を用いて実践的な問題演習をおこないます。過去の試験問題は、出題傾向や自身の弱点を把握できるでしょう。問題を繰り返し解くことで、知識の定着と解答パターンが習得できます。
問題集は種類が豊富なので、自身の学習スタイルに合ったものを選択しましょう。例えば、写真や図解が多い問題集は、ボイラーの構造や機能をイメージしやすくなります。
一方、試験問題のみをまとめた問題集は、効率的に問題演習ができるでしょう。
参考書や問題集は、一般社団法人 日本ボイラ協会の図書オンラインショップからも購入できます。自身の学習スタイルに合った教材を選び、計画的に学習を進めましょう。
5-2.動画やオンライン講座で勉強する
二級ボイラー技士の試験対策では、動画やオンライン講座を活用した学習も有効です。
YouTubeなどの動画プラットフォームには、ボイラーの構造や操作方法を視覚的に解説したコンテンツが投稿されています。実際の設備や機器の動きを見ながらの学習は、知識の理解がより深まるため、記憶に定着しやすくなるでしょう。
また、一般社団法人日本ボイラー協会では、二級ボイラー技士免許試験の通信講座を開講しています。
- ボイラーの構造
- 燃料および燃焼
- ボイラーの取扱い
- 関係法令
上記4つの分野について、4ヵ月間かけて学習します。通信講座では税込2万7,500円の受講料と別途教材費が発生しますが、自宅にいながら効率的に学習できるでしょう。
6.二級ボイラー技士に合格したあとの手続き
二級ボイラー技士の試験に合格すると、免許取得の手続きを進める必要があります。手続きの主な流れは以下のとおりです。
- 合格通知書を受け取る
- 免許申請をする
- 免許証を受け取る
- 勤務先に報告する
それぞれ詳しく解説します。
6-1.合格通知書を受け取る
二級ボイラー技士の試験に合格すると、指定された住所に合格通知書が送付されます。合格通知書には、免許申請に関する詳細な情報が記載されているので、内容をよく確認しておきましょう。
6-2.免許申請をする
合格通知書を受け取ったら、免許取得のために免許申請をおこないます。都道府県労働局や労働基準監督署、または各センターで配布している免許申請書に必要事項を記入します。
そのうえで合格通知書および必要書類を添付して、東京労働局免許証発行センターに郵送か持参する形で提出します。
申請に必要な書類は下記のとおりです。
- 免許申請書
- 合格通知書
- 顔写真(証明写真サイズ)
- 本人確認書類
- 切手392円分(免許証郵送用)
- 収入印紙1,500円分の手数料(日本政府発行のもの)
- 実務経験などを証明する書類
免許申請の手続きをおこなわないと、免許証は交付されないので注意しましょう。なお、18歳未満(高圧室内作業主任者は20歳未満)の方には免許証が交付されないため、該当する年齢に達してから申請する流れになります。
6-3.免許証を受け取る
申請が受理されると、数週間後に免許証が発行されます。免許証が届いたら、記載内容に誤りがないかを必ず確認しましょう。万が一誤りがある場合は、問い合わせて修正依頼をかけてみてください。
6-4.勤務先に報告する
免許取得後は、勤務先に報告をおこなうのが一般的です。ボイラー技士としての業務に就く場合は、免許証のコピーの提出を求められることがあるので、合格や免許取得の報告は忘れずにおこないましょう。
会社によっては、従業員情報の更新や資格手当の支給に手続きが必要な場合もあります。
7.二級ボイラー技士の資格を活かせる職場や業界
二級ボイラー技士の資格は、幅広い業界で活躍できる専門的な技術資格です。ここでは、二級ボイラー技士の資格を活かせる代表的な職場や業界として、以下の4つを紹介します。
- 工場や製造業の現場
- ホテルや病院
- エネルギー業界
- 公共施設や自治体
それぞれ詳しく見ていきましょう。
7-1.工場や製造業の現場
工場や製造業の現場では、さまざまな製造プロセスでボイラーが使用されており、二級ボイラー技士はその運転やメンテナンスを担当します。
例えば、製紙工場では製紙プロセスに関わるボイラーの管理や保守をおこない、安定した製造ラインの維持に貢献します。
また、食品加工工場では、食品製造に必要な蒸気や温水の供給を担うボイラーの管理と、食品安全に関わる衛生管理をおこないます。
7-2.ホテルや病院
ホテルや病院では、宿泊客や患者の快適性を維持するために、温水供給や暖房設備の運転管理が欠かせません。
二級ボイラー技士の免許取得後は、これらの設備に関わるボイラーやエアコン、ヒートポンプなどの熱源機器の管理やメンテナンスを担当することが可能です。
設備の適切な運転やトラブル対応など、施設の快適性と安全性を維持する重要な役割を果たします。
7-3.エネルギー業界
エネルギー業界では、電力や熱の安定供給とともに、エネルギー効率の向上や環境負荷の削減が求められるため、ボイラー技士が求められます。
また、発電所では火力発電やバイオマス発電などの熱源設備の管理と保守を担当し、安定したエネルギー供給を支えます。
他にも、エネルギー管理サービスを提供する会社では、工場やビルなどの施設におけるボイラーの運転管理や、エネルギー効率向上のための提案・サポートなども主な役割です。
7-4.公共施設や自治体
学校や市役所、図書館などの公共施設では、快適な環境を維持しつつ、エネルギーコストの削減が求められます。
二級ボイラー技士の免許があると、施設管理部門においてボイラーの運転管理や保守を担当でき、適切な温度管理や省エネルギー運転により、施設の快適性と経済性の両立を支えられます。
また、自治体の施設管理部門では、公共施設全体のエネルギー管理や設備の長期保全計画の立案などに関わることもあるでしょう。
8.二級ボイラー技士取得後のキャリアアップの例
二級ボイラー技士の資格を取得したあとに、さらなるキャリアアップを目指す際の方向性はさまざまです。ここでは、二級ボイラー技士取得後のキャリアアップの具体例として、以下の3つを紹介します。
- 一級ボイラー技士を取得する
- リーダーや管理職への昇進
- 新技術への対応と学びを継続する
それぞれ詳しく見ていきます。
8-1.一級ボイラー技士を取得する
二級ボイラー技士の次なる目標は、一級ボイラー技士の取得です。一級ボイラー技士は、より大型で複雑なボイラーの運転や管理を担当でき、高度な知識と技術が求められます。
一級の試験では、ボイラーの構造や取扱い、法令などに関するより深い理解が問われます。合格するには、二級の知識をさらに発展させ、実務経験を積むことが重要です。
一級ボイラー技士を取得できれば、より大きな責任と権限をともなう役割を担え、キャリアの選択肢が広がります。
8-2.リーダーや管理職への昇進
ボイラー技士としての経験と専門知識を活かし、リーダーや管理職へのキャリアアップを目指すことも可能です。
例えば、工場や施設のボイラー設備管理責任者、メンテナンスチームのリーダー、エネルギー管理部門の監督者など、さまざまなポジションが考えられます。
リーダーや管理職の役割では、技術的な判断力に加え、部下の育成や業務の調整、予算管理などのマネジメント能力が求められます。
リーダーシップやコミュニケーション能力、問題解決力などのスキルを向上できれば、現場を管理する能力を高められるでしょう。
8-3.新技術への対応と学びを継続する
二級ボイラー技士取得後も、最新の技術動向や法規制の変更に関する情報をアップデートし、自らのスキルを向上させ続けることが重要です。
ボイラー技術は日々進歩しており、省エネルギーや環境負荷低減に向けた新しい取り組みがおこなわれています。
先進的な技術の習得に積極的に取り組むことで、時代のニーズに応える価値の高い技術者になれるでしょう。社内外の研修や資格取得、学会や業界団体との交流など、さまざまな学びの機会を活用し、専門性を高めていくことが求められます。
9.まとめ
二級ボイラー技士は、ボイラーの運転・管理に必要な専門知識と技能を認定する国家資格です。資格取得のためには、筆記試験の合格と実地修習や職業訓練の修了が求められます。
二級ボイラー技士の資格があると、製造業やエネルギー業界、公共施設など、幅広い職場での活躍が期待できるでしょう。
さらなるキャリアアップを目指す場合は、一級ボイラー技士の取得やリーダー・管理職への昇進、新技術の習得など、さまざまな選択肢があります。
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