溶接の主な資格一覧と取得がおすすめの資格を紹介
この記事で分かること
- 溶接の資格には、初心者から上級者までさまざまなレベルがある
- 未経験の方は、アーク溶接作業者やガス溶接技能者の資格取得がおすすめ
- 経験者の方は、アーク溶接技能者やガス溶接作業主任者など、専門性の高い資格の取得がおすすめ
※この記事は6分で読めます。
「溶接の仕事に資格は必要?」
「溶接の資格はどれを取得すれば良い?」
など、溶接の資格に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
溶接の資格を取得すると、技術や知識を証明でき就職や転職の幅を広げられます。
今回は、溶接の主な資格一覧と、おすすめの資格を紹介します。この記事を読めば、自分に合った溶接の資格が選べるでしょう。
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1.資格なしでも溶接の仕事はできる?
溶接の仕事は資格なしでもできますが、状況によっては取得が必須です。資格なしで働けるのは、主に見習い溶接工としてです。
一方で、法律で定められた国家資格が必要な溶接作業もあります。
例えば、ボイラーの溶接には「ボイラー溶接士免許」が必須です。また、アセチレン溶接装置や集合溶接装置を使う現場では「ガス溶接作業主任者免許」を持つ方による現場管理が義務付けられています。
2.溶接の主な資格一覧
溶接に関する資格は、国家資格や民間資格などさまざまです。必要な資格は、溶接の種類や現場の状況によって異なります。
- アーク溶接の特別教育
- ガス溶接技能講習
- ガス溶接作業主任者
- 溶接技能者
- 溶接管理技術者
- 溶接作業指導者
- ボイラー溶接士
それぞれどのような資格かを詳しく紹介します。
2-1.アーク溶接の特別教育
アーク溶接の特別教育の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 特別教育修了者 |
資格取得のメリット | 法的にアーク溶接作業への従事が可能 |
資格取得対象者 | アーク溶接作業に従事予定の方 |
試験の有無 | なし(講習の受講が必要) |
試験内容 | 試験なし |
取得の難易度 | 初級(講習を受けるだけなので比較的容易) |
勉強方法 | 講習を通じて学科・実技を学ぶ |
その他注意点 | 特になし |
アーク溶接の特別教育は、アーク溶接機を用いておこなう金属の溶接、溶断などの作業に従事する労働者に対して義務付けられている安全衛生教育です。
アーク溶接作業では、溶接機の整備不良や操作の誤りなどにより、感電災害、火災災害、火傷などの災害が発生する危険性があります。
災害を防止するために、法令によりアーク溶接の業務に従事する労働者に対して受講が義務付けられているのです。
2-2.ガス溶接技能講習
ガス溶接技能講習の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 国家資格 |
資格取得のメリット | 可燃性ガスと酸素を使って金属の溶接や溶断、加熱の業務が可能 |
資格取得対象者 | どなたでも受講可能 |
試験の有無 | あり |
試験内容 |
|
取得の難易度 | 初級 |
勉強方法 | 講習を通じて学科・実技を学ぶ |
その他注意点 | 労働基準協会により実施条件が異なる |
ガス溶接技能講習は、労働安全衛生法に基づいておこなわれる技能講習の1つで、ガス溶接作業に従事する労働者に対して実施される技能講習です。
ガス溶接作業にともなう潜在的な危険性を理解し、適切な安全対策を講じながら作業をおこなうために必要な知識と技能の習得を目的にしています。
ガス溶接技能講習を通じて、労働者は自らの安全と同僚の安全を守るために必要な知識と技能を身につけられます。
2-3.ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業主任者の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 国家資格 |
資格取得のメリット | ガス溶接作業の安全管理と指導が可能 |
資格取得対象者 | どなたでも受験可能 |
試験の有無 | あり |
試験内容 | 学科試験 |
取得の難易度 | 初級 |
勉強方法 | 講習やテキストで学ぶ |
その他注意点 | 労働基準協会により実施条件が異なる |
ガス溶接作業主任者は、アセチレン溶接装置やガス集合溶接装置を使用する事業所で、1名以上の選任が義務付けられている国家資格です。
可燃性ガスを用いる溶接、溶断、加熱作業で火災などの事故多発を受けて、作業の安全管理を徹底するために設けられました。
ガス溶接作業主任者は、ガス溶接技能講習を修了した作業員を指導・監督する立場にあります。また作業計画の立案や設備の点検・維持管理、安全衛生教育の実施など、幅広い職務を担います。
学科試験では過去問題と類似した問題が多く出題される傾向があるため、過去問題集を中心に勉強するのが効果的です。過去問題集は、書店やオンラインで入手できる他、安全衛生技術試験協会の公式サイトでも公開されています。
2-4.溶接技能者
溶接技能者の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 民間資格(一般社団法人日本溶接協会) |
資格取得のメリット | 溶接作業に従事できる能力を証明できる |
資格取得対象者 | 資格の種類により異なる |
試験の有無 | あり |
試験内容 |
|
取得の難易度 | 資格の種類により異なる |
勉強方法 | 講習やテキストで学ぶ |
その他注意点 | 各都道府県に設置された指定機関へ申し込む |
溶接技能者の資格は、対象材料と溶接方法によって区分されています。主な種類は以下のとおりです。
資格 | 適用規格 |
---|---|
手溶接技能者(アーク溶接・ガス溶接) |
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半自動溶接技能者 |
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ステンレス鋼溶接技能者 |
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チタン溶接技能者 |
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プラスチック溶接技能者 |
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銀ろう付技能者 |
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すみ肉溶接技能者 |
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石油工業溶接士(JPI溶接士) |
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基礎杭溶接技能者 |
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溶接技能者は、それぞれの対象材料や溶接方法に特化しています。資格取得によりそれぞれの分野における高品質な溶接が可能となるため、自らの専門性を活かし、適切な資格を取得しましょう。
資格の選択は、実際におこなう溶接作業と同じか近い内容のものを選ぶのが基本です。また発注元から特定の資格を要求される場合は、応じる必要があります。
2-5.溶接管理技術者
溶接技能者の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 民間資格(一般社団法人日本溶接協) |
資格取得のメリット | 溶接作業の品質管理や安全管理が可能 |
資格取得対象者 | 実務経験(年数は学歴によって異なる) |
試験の有無 | あり |
試験内容 |
|
取得の難易度 |
|
勉強方法 | 講習やテキストで学ぶ |
その他注意点 | 各都道府県に設置された指定機関へ申し込む |
溶接管理技術者は、鋼構造物の製作などにおいて、溶接・接合に関する設計や施工計画、管理などをおこなう技術者のための資格です。
溶接技術に関する専門的な知識と、施工および管理に関する職務能力を持った技術者を認定するもので、工場認定や官公庁における工事発注の際に、必須条件として要求されます。
学科試験では約60%が過去問題やその類似問題で構成されているため、過去問題を確実に解けるようにしておけば合格に近づくでしょう。
2-6.溶接作業指導者
溶接作業指導者の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 民間資格(一般社団法人日本溶接協会) |
資格取得のメリット | 溶接作業の指導や教育が可能 |
資格取得対象者 |
|
試験の有無 | あり(原則3日間の講習受講後) |
試験内容 | 筆記試験 |
取得の難易度 | 初級 |
勉強方法 | 講習やテキストで学ぶ |
その他注意点 | 各都道府県に設置された指定機関へ申し込む |
溶接作業指導者は、溶接施工現場における溶接作業および関連作業の指導・管理をおこないます。また、溶接技能者の技量向上を図る役割を担う資格です。
職長や班長などとして現場の溶接作業を直接指導・監督する立場にある人材を対象としていることも特徴で、溶接に関する深い知識と豊富な経験を活かし現場の作業員に対して適切な指導と助言をすることも仕事になります。
資格取得には講習最終日の筆記試験に合格する必要があるため、講習内容をしっかりと復習し、理解を深めておきましょう。
2-7.ボイラー溶接士
ボイラー溶接士は、普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士の2種類があります。まず、普通ボイラー溶接士の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 国家資格 |
資格取得のメリット | 溶接部の厚さが25mm以下のボイラーや圧力容器の溶接作業に従事可能 |
資格取得対象者 | 1年以上溶接作業の経験 |
試験の有無 | あり |
試験内容 |
|
取得の難易度 | 中級 |
勉強方法 | テキストで学ぶ |
その他注意点 | 労働基準協会により実施条件が異なる |
特別ボイラー溶接士の概要は、下記のとおりです。
資格の種類 | 国家資格 |
資格取得のメリット | ボイラーや第一種圧力容器の溶接作業に従事可能 |
資格取得対象者 | 普通ボイラー溶接士免許取得後、1年以上ボイラーまたは第一種圧力容器の溶接作業の経験者 |
試験の有無 | あり |
試験内容 |
|
取得の難易度 | 中級 |
勉強方法 | テキストで学ぶ |
その他注意点 | 労働基準協会により実施条件が異なる |
ボイラー溶接士は、ボイラーや圧力容器の溶接作業に従事するために必要な国家資格です。
特別ボイラー溶接士は、ボイラーや第一種圧力容器の溶接業務に必要であり、普通ボイラー溶接士は、溶接部の厚さが25mm以下の場合や管台・フランジなどの取り付け溶接に必要です。
ボイラー溶接士の合格率は60%程度であり、決して高いとはいえません。学科試験対策としては、テキストの繰り返し学習・復習、過去問演習、安全知識と法令の学習が効果的です。
実技試験対策としては、溶接練習の継続や溶接技能の向上、試験条件の確認が有効でしょう。
3.溶接の資格はどれを取得すれば良いの?
溶接の資格は種類が多いため、どの資格を取得するか迷うでしょう。ここでは、未経験の方とスキルアップを図りたい方におすすめの資格を紹介します。
3-1.まずはアーク溶接作業者やガス溶接技能者がおすすめ
未経験の方や初心者は、アーク溶接作業者やガス溶接技能者の資格取得がおすすめです。
アーク溶接作業者の資格は、アーク溶接の基本的な技術と安全衛生面での知識を身につけられます。アーク溶接作業者の資格があれば、安全かつ適切な方法でアーク溶接作業に取り組めるでしょう。
ガス溶接技能者の資格は、ガス溶接の基礎的な技術とガス溶接に関する安全管理の知識が身につきます。
またアーク溶接作業者は、原則として講習の受講で資格取得できます。試験がないため、未経験者や初心者でも比較的容易に資格取得が可能です。
未経験の方や初心者は、まずはアーク溶接作業者やガス溶接技能者の資格を取得し、基礎を覚えましょう。
3-2.スキルアップにはアーク溶接技能者やガス溶接作業主任者など
溶接の経験を積み、さらなるスキルアップを目指す方や管理職を目指す方には、アーク溶接技能者やガス溶接作業主任者など、より専門性の高い資格の取得がおすすめです。
アーク溶接技能者は、アーク溶接の高度な技術を習得できる資格です。より複雑で難易度の高い溶接作業にも対応できるようになり、溶接のプロとしてのスキルが身につきます。
ガス溶接作業主任者は、ガス溶接作業の管理・監督に必要な知識と技術を学べる資格です。ガス溶接作業の現場を適切に管理・監督し、作業の効率化と安全性の向上に貢献できます。
他にもボイラー溶接士や溶接作業指導者など、専門性の高い資格は多くあります。目的に合わせて計画的に資格を取得し、スキルアップを目指しましょう。
4.まとめ
溶接の資格は、アーク溶接作業者やガス溶接技能者など、初心者向けから上級者向けまでさまざまなレベルがあります。
未経験の方や初心者は、まずアーク溶接作業者やガス溶接技能者の資格取得で基礎を身につけ、徐々に専門性の高い資格にチャレンジするのが良いでしょう。
一方経験者やスキルアップを目指す方は、アーク溶接技能者やガス溶接作業主任者など、専門性の高い資格の取得がおすすめです。
自分の目指すキャリアや今後どのような溶接作業に携わりたいかを考えて、適切な資格を選択しましょう。
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