アーク溶接作業者になるには?主な仕事内容とやりがい、平均年収を解説

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「アーク溶接作業者ってどのような仕事?」
「アーク溶接作業者の資格を取る方法を知りたい」
など、アーク溶接作業者に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
アーク溶接作業者とは、気体の放電現象の一種である「アーク」を利用した溶接技術を扱う有資格者のことで、建築や造船業、工場など、溶接を扱う幅広い分野で活躍できる資格です。
今回は、アーク溶接作業者の概要、仕事内容、資格取得の手順や難易度などを解説します。この記事を読めばアーク溶接作業者のことがよくわかり、自分が働いている姿をイメージできるようになります。
1.アーク溶接作業者とは?
「アーク溶接作業者」とは、労働安全衛生法に基づくアーク溶接特別教育の講習を受け、修了証書を受け取った者のことです。アーク溶接の作業が不適切だと「作業者の感電」「火災・爆発」といった事故につながるため、それらを未然に防ぐ目的で特別教育が義務付けられています。
溶接とは、別々の物質を溶かして結合させる技法を指します。「アーク」は気体の放電現象の一種で、5,000度~20,000度に達する高温かつ強い光を発することが特徴です。鉄の溶融温度は1,500度~2,800度であり、鉄と鉄を接合するのに十分な温度となります。
このアークの特性を使って鉄同士を溶接するのが「アーク溶接」です。ただし、放電現象を利用して溶接する関係上、溶接できる対象は「電気伝導体」に限られます。
以下の記事では、溶接工について詳しく解説しています。
1-1.アーク溶接作業者の需要
アーク溶接は、数ある溶接技術のなかでも、生産現場から建築現場まで、金属の加工が必要な業界で極めて幅広く利用されています。そのため、一定のスキルを身につけたアーク溶接作業者の需要は高く、幅広い就職先の選択肢があります。
2.アーク溶接作業者が活躍できる現場
アーク溶接は5,000度~20,000度の温度で溶接ができることから、さまざまな金属を扱うことができます。金属加工を扱う多くの企業で需要があり、具体的には以下のような業界で勤務先が見つかります。
- 造船業
- 建築・建設
- 自動車メーカー
- 鉄鋼業・製造業
など
造船業ではアーク溶接がよく用いられており、船体が「銅船」という種類の場合はほとんどがアーク溶接によって作られます。
土木作業や工務店など建設業界も同様で、気密性・水密性に優れたアーク溶接は需要が高い技術です。自動車メーカーや修理工場でも、自動車の製造過程で部品を組み合わせるときにアーク溶接作業が利用されます。
その他、鉄鋼などの加工を扱っている鉄鋼業や製造業・加工業など、幅広い場面で活躍できます。
3.アーク溶接作業者の仕事内容
アーク溶接作業者は、以下のような仕事を担当します。
- 金属製品の溶接部品などの溶接
- 半自動溶接作業
- 溶断 など
勤務地は「工場」「建設・工事現場」に大別でき、どちらに勤務するかで作業内容は大きく変わる場合があります。工場であればアクセサリーや時計などの精密機械、家電、自動車の部品などの金属製品の溶接が主な仕事です。
建設現場であれば、配管や建築材料、船舶など、現場に応じた金属製品を加工することになります。
最近では、溶接ロボットなどを使った「半自動溶接作業」によって効率化が図られることもあります。例えば半自動溶接機を使う場合、溶接材料のワイヤーが自動的に供給され、溶接作業は溶接トーチ(溶接ガン)を使って手動でおこないます。
また、2つ以上の部材を1つに溶接するほか、アーク溶接を利用して1つの部材を2つ以上に切断する「溶断」も仕事です。
4.アーク溶接作業者の平均年収
厚生労働省によると、金属溶接・溶断従事者の平均時給は1,077円でした。
月給は約21.8万円、賞与額は年間で約32.8万円となっています。したがって、年収は「21.8万円×12ヵ月+賞与32.8万円=294.4万円」と計算できます。
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参考:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
https://www.mhlw.go.jp/content/000980675.pdf
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参考:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
https://www.e-stat.go.jp/
5.アーク溶接作業者のやりがい
アーク溶接作業者の「やりがい」は、資格手当を受け取れる点はもちろんですが、専門性を高められる点もあります。
放電を利用して材料をつなぎ合わせるというのは一見単純な作業ですが、現場では高い技術力が要求されます。アーク溶接作業者の実力次第で仕上がりに大きな差が出るため、ベテランのアーク溶接作業者はどのような現場でも重宝されます。
現在は機械化が進んでいるものの、機械ではどうしてもできない部分のスキルを磨くことで、替えの効かない人材として認められるでしょう。
また、アーク溶接を通じ、世界で高い評価を受ける日本の「ものづくり」に関わるという喜びを得られることも魅力です。
6.アーク溶接作業者になるには?
アーク溶接作業者を目指すなら、大前提として「アーク溶接等の業務に係る特別教育」を修了する必要があります。具体的な特別教育の内容を把握し、受講の準備を進めていきましょう。
6-1.アーク溶接等の業務に係る特別教育の概要
アーク溶接作業者になるには、アーク溶接等特別教育の修了証が必要です。講習は商工会議所や公的機関のほか、一般企業で受講できる場合もあります。
受験要件は「18歳以上」という年齢制限だけであり、性別や学歴・職歴の有無に関係なく、誰でも試験を受けることができます。
講習費用は受講する期間によっても差がありますが、テキスト代と消費税込みで1万円~2万5千円程度になることが一般的です。
6-2.アーク溶接等の業務に係る特別教育の講習内容
アーク溶接等特別教育では、「学科」と「実技」の2つが実施されます。学科では、アーク溶接に必要な知識と労働安全衛生法などの関連法を学び、実技ではアーク溶接装置の使い方やアーク溶接の作業を学ぶことになります。
学科試験の内容と実施時間は以下のとおりです。
学科 | |
---|---|
アーク溶接などに関する知識 | 1時間 |
アーク溶接装置に関する基礎知識 | 3時間 |
アーク溶接などの作業方法に関する基礎知識 | 6時間 |
関係法令 | 1時間 |
実技 | |
アーク溶接装置の取扱いおよびアーク溶接などの作業の方法 | 10時間以上 |
6-3.難易度・合格率
アーク溶接等の業務に係る特別教育は試験ではなく「講習」であり、所定の技能講習を受けた受講者なら基本的に資格が与えられます。よって、最後まで受講をすれば合格率はほぼ100%といえます。
6-4.勉強方法
アーク溶接等の業務に係る特別教育では、試験はおこなわれません。学科・実技の両方の講習の内容をしっかり身につけることが合格への近道です。2日間の学科講習と1日間の実技講習を乗り切るために、体調管理に注意しましょう。
7.アーク溶接作業者とガス溶接技能者はどちらを取得するべき?
溶接工に関連する資格としてアーク溶接作業者と並んで知名度があるのが「ガス溶接技能者」という資格です。アーク放電を利用するアーク溶接と、可燃性ガスと酸素が結び付いて燃焼する際に発生するガスを利用するガス溶接、という違いがあります。
この2つの資格のうち「どちらを取得するほうが良いのか」については甲乙つけがたく、一概にどちらが優れた資格かも断言はできません。もしアーク溶接とガス溶接の両方に携わる場合には2つの資格が必要になるケースもあるため、可能であれば両方とも取得することが望ましいといえるでしょう。
ガス溶接技能講習では、計14時間の学科と実技講習を2日間受講し、修了試験で合格する必要があります。しかし、講習内容を理解していれば難しい試験ではありません。同時並行で勉強し一気に取得することも可能です。
8.アーク溶接作業者として働くときの注意点
アーク溶接作業では強烈な光や熱を利用するため、不適切な作業によって事故が発生することもあります。
例えば、溶接棒を使って交流アーク溶接作業をおこなっている際、出力状態でうっかり溶接棒に触れると感電の危険があります。また、作業で発生する金属カスなどに可燃物が接触すると引火して火災や爆発につながる可能性もあります。
以下のような事故も起きています。危険がともなう仕事であることを認識し、常に慎重な作業を心がけなければいけません。
【実際に起きたアーク溶接の事故の一例】
- 猛暑の日に工場内で作業中、軍手が汗で濡れた状態で作業をおこなっていたことで感電
- 雨天での溶接作業中に材料を仮抑えしていた同僚が感電
- 焼酎の原酒タンクのアーク溶接中にアルコール蒸気に着火し爆発
濡れた軍手を使っての感電は、「自動電撃防止装置を設置し使用する」「濡れた軍手や作業服でアーク溶接をおこなわない」などの対策によって未然に防ぐことができます。危険ポイントを理解し、事故を未然に防ぐ対策を講じたうえで作業することが大切です。
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参照:職場のあんぜんサイト|労働災害統計
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=782
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=385
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=100839
9.まとめ
アーク溶接作業者は、電気の放電によって5,000度~20,000度の温度で溶接をおこなう仕事のことです。造船業から建築、土木、自動車メーカーなどさまざまな就職先があります。
日本の「ものづくり」に携わりたい方や、手に職をつけて長く働きたい方におすすめの資格といえます。熱を扱う仕事であることから危険がともないますが、講習で学んだ内容を仕事に活かすことで安全に作業できるでしょう。
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