製造業界の将来性や現状と活躍するために必要なことを解説

この記事で分かること
- 近年の製造業の業績は安定しているが、労働人口の減少や世界情勢の不安などにより、先行きは不透明である
- 製造業は人手不足と人材の高齢化やデジタル技術導入の遅れなどの課題を抱えている
- 製造業界では、DX化やロボットの活用による業務の自動化など、将来に向けてさまざまな対策を進めている
- 自動化の普及により、今後の製造現場ではデジタル技術に精通した人材が重宝される
- 製造業の将来に不安があり転職の判断に迷っている方は、転職者向けの面談サービスの利用を検討するとよい
※この記事は6分で読めます。
「製造業に将来性はある?」
「製造業の抱えている課題を知りたい」
など、製造業の将来性に関して疑問を持つ方もいるでしょう。
今後の製造業では、AIやロボットなどの最新技術の活用が加速化することで、デジタル技術に精通した人材がより重宝されることが予想されます。
今回は、製造業の将来性や現状、製造業が抱えている課題、製造業の将来に向けた対策などを解説します。この記事を読めば製造業の現状と将来性がわかり、製造業へ転職するかどうかを判断できます。
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1.製造業界の将来性や現状
経済産業省が公示している「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」によると、2022年から過去25年の日本の製造業における売上高は400兆円程度であり、ほとんど変化がありません。
また、日本の製造業トップ500社の海外売上比率は、2008年のリーマンショック以降に急上昇し、その後も増加し続けています。このことから、近年の製造業の国内市場は成熟・縮小傾向にあり、企業の多くは海外進出によって売上を維持していることがわかります。
世界情勢や新型コロナウイルス感染症の影響などを受け、製造業の純利益は2019年以降一時的に低下した時期もありましたが、その後は回復を見せ、直近では高い利益率を維持しています。
したがって、現状の製造業界は売上高、純利益などの観点から見ても、比較的安定した業界であるといえるでしょう。海外市場でのニーズをうまく事業に反映することができれば、今後業界のさらなる拡大化を狙うことも不可能ではありません。
しかし、国内の労働人口の減少や、業務のグローバル化やデジタル化など、近年の製造業界は、目まぐるしく変化する市場に対して迅速な対応が求められています。
今後も製造業界は経営の複雑性が一層高まっていくことが予測されるため、将来も安定した売上を維持し続けられるか否かについては、不透明な点も多く見られるのが現状です。
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参照:経済産業省「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/016_04_00.pdf
2.製造業界が抱えている課題
製造業が今後も成長し続けるためには、現状抱えているさまざまな課題をクリアにしていく必要があります。ここでは、製造業が抱えている4つの課題について、それぞれ詳しく解説します。
2-1.人手不足と人材の高齢化
日本の人口減少の影響を受け、近年では製造業においても深刻な人手不足が大きな課題として挙げられます。
経済産業省の「2024年版ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)概要」によると、2002年の製造業の就業者数は1,202万人でしたが、2023年の就業者数は1,055万人まで減少しており、約20年ほどで150万人近くもの働き手を失っていることが明らかになっています。
また、製造業における若年就業者数(34歳以下)の数は、2002年から減少傾向にあり、企業の多くが今後自社の中核となる若手人材の採用に苦戦しています。
このような問題を解消するために、近年では高齢就業者や外国人労働者を採用することで、現状の人材不足を補おうとする企業の動きも見られるようになりました。
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参照:経済産業省「2024年版ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)概要」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/pdf/gaiyo.pdf
2-2.生産性の向上や効率化の遅れ
近年では各業界で積極的に業務のIT化を導入していますが、製造業は他業界と比べてデジタル化や自動化の導入が遅れており、多くの企業が生産性の向上・効率化に対する課題を抱えています。
工場の生産性向上につながる技術として、IoTやAI、ロボットなどが挙げられます。しかし、これらの技術を導入するには初期投資や設備維持費などの金銭的な問題を解決する必要があり、現時点ではすべての企業がデジタル化や自動化に踏み切れるわけではありません。
特に、大企業と比べると中小企業は潤沢な資金を確保できていないところも多く、新たな技術や設備を導入するには一定の時間を要することが予想されます。
2-3.サプライチェーンの不安定さ
サプライチェーンとは、企業の作る製品が消費者に届くまでの、原材料や部品の調達、生産、物流、販売など、一連の流れを意味する言葉です。サプライチェーンは製造業内だけで完結できるものではなく、多様な企業や人材が複雑に関わり合って成り立っています。
そのため、サプライチェーンは自然災害や世界情勢などの外的要因による影響を受けやすく、近年では特に原材料の価格高騰や製造コストの圧迫などの影響により、製造業のサプライチェーンの不安定さが問題視されています。
サプライチェーンの不安定さは、各企業の供給計画や在庫管理に直接的な影響を及ぼします。この問題は製造業界内だけで解決できる問題ではないからこそ、今後どのように対応をしたほうがよいのか、業界全体の深刻な課題として認識されています。
2-4.グローバル市場との差別化
近年の日本の製造市場には、低価格や短期間での製造に対応できる海外企業が積極的に参入しています。これにより、日本の製造業は海外の競合他社との差別化を図らなければならず、製造業におけるグローバル競争は年々激化しています。
単純な価格競争になることを避けるべく、製造業に携わる企業の多くは、日本のものづくりの品質の良さを示したり、日本性ならではの付加価値を見いだしたりするなど、各社が適切な対応に迫られています。
3.製造業界で将来に向けて進められている対策の例
ここからは、日本の製造業の将来に向けて現在進行している、4つの対策について紹介します。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
3-1.デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
近年の製造業界では、デジタルトランスフォーメンション(DX)の積極的な推進が高い注目を集めています。
デジタルトランスフォーメンション(DX)とは、企業がデジタル技術を活用することにより、自社の業務プロセスやビジネスモデルなどを改革することを意味します。
製造業界においては、IoTやAIなどのデジタル技術を、生産管理や予知保全(製造機械の故障を予測し、あらかじめ対応すること)などへ活用する企業が多いようです。
このように製造ラインのDX化を図ることで、各社は生産性の向上や製品の不良率の削減、設備の最適化などの恩恵を受けられるでしょう。
3-2.自動化・ロボティクスの導入
人手不足による生産性の低下を防止し、少ない人員でも効率的に製品を製造することを目的として、ロボット技術を活用した自動化や、無人搬送車(AGV)を導入する製造会社もあります。
製造工程や商品の運搬などにこのような技術を取り入れると、これまで従業員が担ってきた一部の作業を自動化できるため、少人数でも無理なく稼働できる生産体制を整備できます。
また、従業員は法律により一日に稼働できる勤務時間に制約がありますが、ロボットはメンテナンスさえおこなえば長時間稼働し続けることが可能です。
3-3.環境負荷の軽減とサステナビリティ
近年では製造業に限らず、多くの業界でサステナビリティ(経済・社会・環境のバランスを重視し、社会全体の持続的な発展を目指す考え方)を重視する流れがあり、製造業においては生産活動による環境負荷を軽減する対策を意欲的におこなっています。
環境問題において特に重要な課題が、二酸化窒素やメタンなど、温室効果ガスの増加にともなう地球温暖化です。日本政府は、2025年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスを実質的にゼロにすること)の実現を目標に掲げています。
製造業は生産過程において多くの二酸化炭素を排出することが避けられない業種であることから、各企業はカーボンニュートラルの実現に向けて迅速な対応を求められています。
具体的には、各企業は二酸化炭素排出量の削減を目指し、以下のような対策を実施しています。
- 再生可能エネルギー(太陽光や風力)の活用
- エネルギー効率の高い設備への移行
- 廃棄物処理とリサイクルの最適化
3-4.働き方改革と労働環境の改善
製造業に携わる企業の中には、人手不足による長時間労働が常態化しているところも多くあります。そのため、近年では各社が働き方改革や労働環境の改善を早急に進めています。
生産ラインを支える現場の従業員に対しては、これまでの労働時間を見直し、シフト制や交代勤務を正しく運用する動きが顕著に見られるようになってきました。
また、従来よりも柔軟かつ効率的な働き方を実現するために、フレックスタイム制やテレワークを導入する企業も増加傾向にあります。
4.時代が進んでも人の手が必要な仕事はある
上述したように、近年の製造業ではDX化や自動化が積極的に取り入れられています。しかし、このような時代の流れを受けても、製造業において人の手が必要な仕事が一切なくなる、ということはないでしょう。
製品作りにおける単純作業はロボットで代用できたとしても、厳しい製品基準をクリアするために必要な設計の見直し作業や、材料や素材の変更作業など、状況に応じた繊細な判断が重要とされる業務は、今後も人の力が必要不可欠です。
また、製造現場でAI化やロボット化がますます普及することを踏まえると、今後の製造業界では、それらのデジタル機器を的確に扱うために人の力が欠かせなくなります。
使用環境や目的に応じて的確にロボットの設定を調整したり、定期的にメンテナンスをおこなったりと、専門機器を扱うためには人の力がいる仕事が多々存在します。
このように、たとえ今後の製造現場の環境がこれまでと大きく変わったとしても、製造業で人の手が必要な仕事が途絶えることはないでしょう。
5.製造業で活躍するために必要なこと
ここからは、製造業で活躍するために必要な4つのポイントについて紹介します。長期的に製造業の仕事に携わりたい方は、ぜひ参考にしてください。
5-1.学び続ける姿勢
今後も技術や製品が進化し続ける製造業界では、それらの変化に柔軟に対応していくためにも、常に学び続ける姿勢が求められます。
例えば、製造工程に関わる新技術や新設備が導入された場合、使用方法を理解できていなければ、円滑に業務をおこなうことができなくなってしまいます。
しかし、積極的に新たな技術を学び、機材を的確に扱うスキルを身につけることで、変化の激しい製造現場でもスマートに仕事ができる人材として重宝されるでしょう。
5-2.柔軟な問題解決力
製造現場では業務中の予期せぬトラブルに見舞われることも多々ありますが、どのようなことがあっても柔軟に対応できる力がある人材は、どの現場に行っても活躍できるでしょう。
生産ラインでのトラブルや不良品の発生など、目の前の問題に対して一つひとつ適切な対応を取ることで、工場の生産性低下を防ぐことができます。
また、日頃から業務の効率化や品質向上に対する高い意識を持っていれば、トラブルそのものの発生リスクを抑えやすくなり、製造の現場に欠かせない人材として評価される可能性が高まります。
5-3.高い安全意識
数多くの機械が稼働する製造工場の現場では、少しの油断が大きな事故や怪我につながるため、高い安全意識と安全に関する専門知識を持った人材が重宝されます。
製造の仕事は常に危険と隣り合わせであるからこそ、事故を防ぐために定められたルールや作業手順を順守できる人材は、時代を問わず製造の現場で活躍し続けられるでしょう。
5-4.ITリテラシーの向上
DX化が推進されている製造業界では、IoTやAI、データ分析など、デジタル技術を使いこなすための知識や能力を保有している人材が高く評価されます。
生産管理のシステム運用や、トラブルシューティングなどのスキルを有していれば、生産ラインの効率化や品質管理の精度向上に貢献できる人材として、現場の第一線で活躍できるかもしれません。
現在製造現場にデジタル技術を導入していない企業でも、今後同様の技術を取り入れる可能性は十分にあるため、ITリテラシー向上のための学習は決して無駄にはならないでしょう。
6.まとめ
近年の製造業は、人手不足や人材の高齢化などさまざまな課題を抱えていますが、自動化技術の導入や働き方改革の推進など、各社は目の前の問題を解決するために多様な取り組みをおこなっています。
今後、製造業のデジタル化が一層進んだとしても、専門機器を適切に扱い定期的なメンテナンスをおこなうためには、人の手が必要不可欠です。
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