仕事人の技
更新日:2017年05月24日

職人チームは最後の砦!JAL2、800人の整備士の頂点に立つトップマイスターが救った1本のボルト

職人チームは最後の砦!JAL2、800人の整備士の頂点に立つトップマイスターが救った1本のボルト

「飛行艇乗りの一番大事なものは、金でも女でもない。名誉だって!」

スタジオジブリの映画「紅の豚」で主人公ポルコ・ロッソを支える女の子の整備士フィオの名言です。作品では、飛行機にとって操縦士と同じくらい、欠かせない存在として描かれています。

実際に、世界中を飛び回る飛行機が時間通りにフライトできるのは、飛行機整備士のおかげでもあります。その仕事は、髪の毛より細い精度のミスも許されません。

日本航空の飛行機を整備する株式会社JALエンジニアリングにおいて、最高レベルの整備士「トップマイスター」を認定されている杉本好夫さんは、1975年に入社して整備士歴42年。不可能とさえ言われた修理の相談を実現してしまう、職人肌の整備士です。杉本さんが所属するJALエンジニアリング修理チームは、JAL整備士たちの「最後の砦」と呼ばれています。その頂点に立つ杉本好夫さんの職人魂をご紹介しましょう。

ミスは絶対に許されない神技整備士の世界

JALエンジニアリングには約2、800人の飛行機整備士がいます。その頂点に立つ唯一の存在が、「トップマイスター」である杉本好夫さんです。杉本さんは、エンジンの修理を行う整備士チームに所属しています。

エンジン修理に必要なのは、1ミクロン(0.001mm)単位の精度で修理できる高度な技術。さらに、フライトスケジュールに合わせなくてはならないため、限られた時間内での精密で正確な仕事を求められます。

時間に追われて整備ミスをすれば、乗客の命が危うくなる大事故につながりかねません。非常に重い責任を背負っているのです。

杉本さんの仕事は、修理を完璧にこなすだけでは終わりません。依頼されていないところまで徹底的にチェックし、修理や整備が必要な場所がないかを確認します。この徹底した仕事ぶりは、杉本さんの信念である「作業者じゃなく、整備士になれ」から生まれるものです。

「言われた仕事だけではなく、一歩進んで完璧だということをやらないとね」と、杉本さんは話します。

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「教科書の勉強では歯が立たない」職人の腕と経験

トップマイスター杉本さんの修理チームは、ほかのチームから「最後の砦」と呼ばれています。それは、どんな難題でも解決してくれるという、絶対の信頼があるからです。

ある日、修理チームへ特殊な整備の相談が持ち込まれました。エンジンの一部にあるボルトが、ネジ山が折れて穴に先端が残ったまま取り出せなくなってしまったというものです。穴に残ったボルトの先端は、ひとつ間違えばエンジンの中に落ちてしまう危険な場所にあります。ボルトを落としてしまえば、エンジン自体の交換をしなくてはなりません。そうなれば、飛行機のスケジュールに大幅な遅れが発生し、何千人に影響が出る可能性もあります。決して失敗が許されない作業です。工具を握る杉本さんの手にも汗がにじんだことでしょう。

飛行機の出発時刻を横目に、ネジ穴に残ったボルトとの過酷な戦いです。

慌てず、根気強く、折れたボルトを引き出します。焦ってはダメです。でも、時間は残りわずか。何千人が待っています。普通の人なら、想像するだけで心拍数が上がるような場面。「無事にボルトを取り除けた時は、とても達成感がありました」と杉本さんは振り返っています。

乗客の知らない場所で、最後の砦として戦う修理チームの仕事は、息の詰まるような緊張の連続です。また、教科書に解決方法が載っているわけでもありません。現場は、常に見たこともないような難題にあふれています。そんな整備場で、今日も杉本さんはトップマイスターとして修理を行っているのです。

杉本さんの難題を乗り切る力は、現状に満足せず妥協を許さず、向上心をもって目の前に仕事に向かう信念から生まれています。

杉本さんは定年を迎えているのですが、今も現場で次の敏腕整備士を育てています。トップマイスターから技と信念を引き継いだ整備士たちは、これからも最後の砦を守っていくことでしょう。

航空整備士の仕事・なる方法とは?

航空整備士になるには?

最後に、航空整備士になる方法と、仕事内容についてご紹介いたします。

航空整備士は、飛行機の整備や点検を行う技術者のことです。

飛行機は複雑な仕組みで作られていて、最先端の機械や精密部品などがたくさん使用されています。ちょっとした不具合が原因で事故につながってしまう可能性があるため、整備には厳重な点検作業が必要です。

航空整備士の仕事とは?

航空整備士の仕事が大きく分けると2つの仕事になります。

ライン整備

飛行機の駐機場で、フライト前に整備や点検などを行います。

飛行機が空港に到着して出発するまでの短い時間で、飛行機の整備や点検などをを行うので、スピードと正確さが求められます。

ドック整備

飛行機の格納庫で定期的に行う整備や点検作業です。自動車でいうと車検のようなものです。

ある程度、空を飛んだら1ヶ月から2ヶ月に渡って、飛行機の整備や修理を行います。

航空整備士になるには?

航空整備士になる方法は、最初に、航空整備の専門学校か、大学の工学部に進学して航空整備の知識・技術を身につけ、国家資格を取得する方法です。

資格取得後には、航空会社の航空整備会社に就職する人や、飛行機やヘリコプターを持っているメディア(テレビ局や新聞社)や、消防や警察機関で働く人もいるようです。

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