半導体とは?身近にあるものや主な種類、業界の情勢と未来を解説

この記事で分かること
- 半導体には電気の流れを制御するスイッチのような役割がある
- 半導体は電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持っている
- 半導体にもいくつかの種類があるが一番使われているのはシリコン半導体
- 半導体は、世界で製造・開発に力を入れているため、未来の展望が大きい分野といえる
※この記事は6分30秒で読めます。
「半導体とはどのようなもの?」
「半導体がどのように役立っているのか知りたい」
など、半導体に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
半導体は、私たちが使うスマートフォンやパソコン、テレビなどさまざまな電子機器に使われており、機械を制御する役割を担っています。
今回は、半導体の概要、役割や種類、業界を取り巻く情勢や未来などについて解説します。この記事を読めば半導体のことがよくわかり、半導体への理解を深められるでしょう。
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1.半導体とは何か?
半導体といえば小さなチップのようなものが思い浮かびますが、それ自体がどのような役割を果たすかは、詳しく知らない方も多いでしょう。
簡単にいうと、半導体は「電気を制御するスイッチ」のようなものです。
例えば、電球を電池につないだだけではただ光るだけですが、半導体を使うことによって、好きな時に光らせたり、消したりできるようになります。
同じように、モーターを動かしたり止めたりするときにも、半導体が電気の流れを制御するスイッチとして働きます。
- 代表的な材料:シリコン、ゲルマニウム、セレン、カーボン
- 主な用途:ダイオード、トランジスタ、集積回路 (IC)、太陽電池
1-1.半導体の特性
半導体は、温度や添加された不純物の量によって、電気の伝導性が変化する特性をもっています。
一般的には低温の場合は抵抗率が高くなり、電気をほとんど通しません。逆に、高温は抵抗率が低くなるため、電気の伝導性が良くなります。
また、純粋な半導体は真性半導体と呼ばれ、高い抵抗率があるためほとんど電気を通しません。
しかし、半導体に添加された微量の不純物によって抵抗率が変化するため、導体に近づいたり絶縁体に近づいたりする特性があります。
1-2.半導体と導体、絶縁体との違い
半導体、導体、絶縁体は、物質がどのように電気を伝えるかに基づいて区別されます。
下記のように区別されています。
- 導体:電気を通す性質
- 絶縁体:電気を通さない性質
- 半導体:導体と絶縁体の中間の性質
半導体は、温度や添加される不純物の量などの条件によって電気を通します。
導体は、自由電子(電流を運ぶための電子)が豊富に存在しているため、電気への抵抗が非常に低く、電流が流れやすい性質です。
代表的な材料:金、銀、銅、鉄、アルミニウム
反対に絶縁体は自由電子が非常に少ないため、電気への抵抗が高く、電流を通さない性質を持っています。
代表的な材料:ガラス、ゴム、プラスチック、セラミック、油
2.半導体ができることと役割
半導体は私たちが日常で使う電子機器の内部に組み込まれ、機器に指令を伝える役割を担っています。
スマートフォンでアプリをタッチすると、そのタッチの触感をセンサーが感知し、「アプリを開く」という指令をスマートフォンに伝えます。 機器のそういったプロセスを制御するのが半導体であり、人間の身体でいえば「頭脳」にあたります。
半導体を機械に組み込むことで、それ以前にはなかったさまざまな「便利さ」が生まれました。
例えば、温めることしかできなかったエアコンが、室温に合わせて温度を自動調節できるようになったり、洗浄しかできなかった洗濯機が、洗い・すすぎ・脱水・乾燥までを全自動でおこなえるようになったりと進化しています。
さまざまな機器のに組み込まれている半導体。その歴史は古く、1940年代に発明された「トランジスタ」に起源があります。
「トランジスタラジオ」といった言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。
「トランジスタラジオ」とは、半導体素子のトランジスタを用いたラジオで、それまでの真空管ラジオに変わって大幅な電力低減を実現し、機器の小型化、軽量化を促しました。
その後1960年代にはトランジスタと、電気を蓄えたり放出したりする「コンデンサ」などを一つにまとめたIC(集積回路)が開発されます。さらに複雑な情報処理が可能になったことで、電卓やテレビ、テレビゲームなどの製品が生み出されていくことになります。
こうして歴史をひもとくと、私たちの生活にとって半導体が欠かせないものであることがわかりますね。
3.身近にある半導体が使われているもの
普段あまり目にする機会がない半導体ですが、身近な機械に組み込まれて重要な役割を果たしています。
ご紹介するもの以外にも、TVや冷蔵庫、電子レンジなど、今や生活に関わる電子機器のほとんどすべてに半導体が使われています。
半導体が使われている代表的なものは、以下の6つです。
- スマートフォン
- パソコン
- 自動車
- エアコン
- デジタルカメラ
- 洗濯機
など
どのように半導体が使われているのか、詳しくご紹介します。
3-1.スマートフォン
私たちの身近にあるスマートフォンには、たくさんの半導体が使用されています。
例えば、アプリケーションの実行やシステム全体の管理をおこなうCPU(中央処理装置)などです。
他にも、グラフィックスや映像の処理、ゲームや動画再生、UIのレンダリングなど大量のデータを高速に処理する能力を持っているGPU(グラフィックス処理装置)も半導体チップです。
また、音声通話、音楽再生、マイク入力を高品質に処理するオーディオチップなどにも使われています。
半導体はスマートフォンの高度化には欠かせない存在です。
3-2.パソコン
パソコンもスマートフォンと同様、本体に半導体が使用されている他、電源供給を管理し、効率的に各部品に電力を分配する電源管理IC(PMIC)が使われています。
また、USBやHDMIなどの外部デバイスとの接続と、データ転送を管理する入出力コントローラ(I/O Controller)に使用されている点もポイントです。
3-3.自動車
半導体は、自動車を安全に快適に使用するための大きな役割を担っています。
自動車で半導体が使用されているのは、物体にかかる加速度を検出する加速度センサーや、対象物を検知するための衝突回避用のレーダーセンサーです。
また、自動運転機能をサポートするカメラやレーダー、LiDAR(光学的レーダー)などのセンサーのデータを処理するための半導体も組み込まれています。
快適な運転をサポートするナビゲーションシステムやオーディオシステム、マルチメディアディスプレイなどにも半導体が使われています。
3-4.エアコン
エアコンの中には「サーミスタ」という半導体が使われており、温度センサーの役割を担っています。
屋内機には室温を検知する室温サーミスタが取り付けられており、設定された温度と室温との差を感知して、暖房・冷房の運転をコントロールします。
また、配管の中には配管の温度を検知する配管サーミスタ、コンプレッサーの中にはオーバーヒートを防ぐためのオーバーヒートサーミスタが組み込まれています。
エアコンはあらゆる半導体で制御されているのです。
3-5.デジタルカメラ
カメラに使われている半導体には、カメラの心臓部ともいえる「イメージセンサー」があります。光センサーの一つで、光の強度を検出し電気信号に変換する光量センサーです。
光量センサーによって、レンズから入ってきた光を電気信号に変換し、画像データとして起こしています。デジタルカメラの画質の良さはこのイメージセンサーのおかげです。
3-6.洗濯機
洗濯機の中に組み込まれている半導体は、「ボタンを押す」という操作に対して「注水」「洗い」「すすぎ」「脱水」をどのような順序で、どのくらいの時間おこなうかという指令を出しています。
洗濯機に半導体が組み込まれたことで、それまで二槽式であった洗濯機が一槽式となり、全自動が実現されました。
4.半導体の主な種類
生活のいたるところで活用されている半導体ですが、実はいくつかの種類があります。どのような種類があるのか、例を挙げてご紹介します。
4-1.シリコン半導体
シリコン半導体とは、主にシリコン素材を基盤として作られた半導体の一種です。シリコンは、地球上で酸素の次に多い元素の一つであり、物理的・化学的性質が半導体製造に適しているため、広く利用されています。
また、純度の高いシリコンは電気を通さない性質を持っているため、不純物を混ぜて電気を通しやすくしているのが特徴です。
シリコン半導体は、電子機器の製造において非常に重要であり、トランジスタや集積回路などの電子デバイスの基本材料として主に使用されています。
高温での作業に耐えられる耐久性や安定性、信頼性が高く、数多くの高性能な電子機器の製造に用いられています。
4-2.ゲルマニウム半導体
ゲルマニウム半導体とは、ゲルマニウム素材を基盤として作られた半導体の一種です。資源量が豊富なシリコン半導体の普及により、一時期は衰退しました。
しかし近年では高周波や光デバイスなど、特定の用途において、ゲルマニウム半導体の特性が再評価されています。
ゲルマニウムは、シリコンよりも低い温度での活動が可能です。一部の特定の用途においてはシリコンよりも使い勝手の良さが評価され、光通信や高周波デバイスの分野での利用が増加しています。
4-3.化合物半導体
化合物半導体とは、複数の元素からなる化合物から作られた半導体です。通常は、主族元素と遷移元素、または他の主族元素との組み合わせで生成されています。
化合物半導体の一例は、以下のとおりです。
- ガリウム砒素 (GaAs)
- インジウムリン化物 (InP)
- ガリウム窒化物 (GaN)
化合物半導体は、シリコン半導体と比較して高い電子移動度や高速動作、高周波特性などの特性を持っています。
そのため光デバイスや高周波デバイス、高効率のエネルギー変換デバイスなどの分野で広く使用されているのが特徴です。
4-4.ディスクリート半導体
ディスクリート(discrete)とは、「個別の」「別々の」という意味をもつ単語です。ディスクリート半導体は「単一の目的のために使われる単一の機能を持つ半導体」のことを指しています。
電流をコントロールする「トランジスタ」、電流を一定の方向に流す役割をする「ダイオード」などがこれにあたります。
デジタルカメラの例でご紹介した「イメージセンサー」もディスクリート半導体の一つです。「外からの光強度をイメージデータに変換し送電する」という役割のみを担っており、それ以外の機能はありません。
このように、ある目的のためにその機能だけをもつ半導体がディスクリート半導体です。スマートフォンは一台あたり数十個のディスクリート半導体が使われており、それぞれの役割を組み合わせて動作しています。
4-5.光半導体
光半導体とは、その名のとおり光を扱う半導体の総称です。身近なものではLEDライトがイメージしやすいでしょう。
LEDライトは「発光ダイオード」とも呼ばれ、それ自体が半導体の一つです。電気の流れを光に変える働きをします。
逆に、光を電気に変える光半導体もあります。例えば赤外線通信においては、赤外線を受けてそれを電気信号に変える「フォトトランジスタ」と呼ばれる半導体が活用されています。
4-6.集積回路(IC)
「集積回路」とは英語で「Integrated Circuit」。略して「IC」と呼ばれます。半導体基板の上に「トランジスタ」や「コンデンサ」などの部品を組み合わせ、さまざまな機能を持たせた電子部品です。
身近なものでは、クレジットカードや交通系電子マネーなどのICカードがあります。クレジットカードの表面にある金色の四角い部品は「ICチップ」と呼ばれます。このICチップがカードリーダーと通信をおこない、カードリーダーからの問い合わせに対して回答をすることで機能します。
カードリーダーとのやり取りの中で「認証」や「機能のロック」といったアクションを起こせるのは、ICチップ内の半導体がさまざまなアプローチに対して自分で考えて命令を出せるからです。
他にも、コンピューターや外部記憶装置のデータの記憶をする「メモリ」や、演算や命令をおこないパソコンなどの頭脳部を担う「ロジックIC」など、ICは複雑で多岐にわたる動作をおこなうことができます。
5.半導体業界を取り巻く情勢と未来
新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大した影響により、リモートワークを導入する企業も増え、生活スタイルが大きく変化してきました。
自宅での仕事や家事、プライベート時間を快適にするために、高機能のパソコンやスマートフォン、家電などの需要が増え続けています。
またコロナ渦による生活スタイルの変化で、あらゆる製品に必要な半導体の需要が急増し、製造が追いつかない状況になりました。
半導体開発が変革期を迎える今、世界だけでなく日本でも国を挙げて半導体の製造・開発に力を入れているため、未来の展望が大きい分野であるといえるでしょう。
半導体が今後どのように進化し、発展していくのかについて説明していきます。
また以下の記事では、半導体工場の仕事内容について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
5-1.ナノテクノロジーの進化
半導体は、 ナノスケールでの材料や構造の制御により、デバイスの性能をさらに向上させることが期待されています。
例えば、半導体量子ナノワイヤーは、光電子デバイスの超集積化、高感度・高密度の量子ナノセンサー、高効率の量子構造太陽電池などのデバイスへの応用が予測されています。
今後は、量子ドットやナノワイヤーなどのナノ構造を利用したデバイスが、新たな応用分野を開拓する可能性があるでしょう。
5-2.AIと機械学習の発展
近年、さまざまな分野でAI(人工知能)が活用されており、機械学習も発展しています。
AI(人工知能)技術の発展には、高速かつ効率的なデータ処理が求められ、半導体の機能向上が欠かせません。
今後は、高性能なプロセッサや専用のAIチップの開発が進むでしょう。
5-3.自動車技術の革新
自動運転技術が進む中、より安全な運転や車載センサーの普及を目指すために、自動車産業における半導体技術の需要がさらに増加すると見込まれます。
例えば、高性能なセンサー、画像処理技術、通信技術などが、自動車の安全性や快適性を向上させるために重要な役割を担っています。
また、運転中の不測の事態に対応するためには、複雑な情報処理を高速でおこなえる車載半導体の開発が必要です。
6.まとめ
半導体は、パソコンやスマートフォン、家電など、身近な電子機器のあらゆるところに使われています。
また、技術は今も世界各国で高まり続けています。半導体の開発や発展にともない、人間の生活はこれからもより便利になり、豊かになっていくでしょう。
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