半導体製造工場の仕事内容とは?働くメリットや転職需要を徹底解説
※この記事は6分30秒で読めます。
「半導体製造ってどんな仕事?」
「半導体製造にはどんな工程があるか知りたい」
など、半導体製造工場に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
半導体製造は需要が高まり続ける半導体を作る仕事であり、マシンオペレーターなら業界未経験でもチャレンジできます。
今回は、半導体製造工場の概要、工程による作業内容の違い、向いている人の特徴などを解説します。この記事を読めば、半導体製造のことがよくわかり、自分が働いている姿をイメージできるようになります。
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1.半導体とは
半導体とは、電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間に位置するもので、正式名称は「半導体集積回路」と呼ばれるものです。
本来はシリコンなどを指す言葉でしたが、現在は電子部品やそれらを集積したIC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)の総称として使われます。
半導体はパソコン・スマートフォン・液晶テレビ・冷蔵庫・自動車など、私たちの生活に欠かすことのできない家電などに使われているだけでなく、電気・ガス・水道など社会インフラの制御など生きていくうえで必ず必要になってくる重要なものとなっています。
2.半導体工場の仕事内容
では半導体の製造工場勤務とはどのような仕事内容になっているのでしょうか。半導体の製造工場の仕事内容について、それぞれの概要や特徴を紹介します。
2-1.マシンオペレーター
半導体工場の仕事の大半がマシンオペレーターの仕事です。指示書に従って機械に部材をセットし、ボタンを押すのが主な仕事です。
未経験でもできる作業ではありますが、さまざまなパターンを覚える必要があります。覚えて使いこなすのに少なからず時間がかかる仕事といえるでしょう。
以下の記事では、マシンオペレーターについてより詳しく解説しています。併せてご覧ください。
2-2.組立
マシンオペレーターが完成させたIC回路をウェーハから切断し、保護や検査をおこなって一つの製品として完成させる工程です。この工程も人間ではなく半導体製造装置によっておこなわれるので、マシンオペレーターとしての仕事募集がかかる場合もあります。
マシンオペレーターと同じく機械の操作方法を覚えれば誰でもできるので、入社前に専門知識は必要ありません。
以下の記事では、組立作業についてより詳しく解説しています。併せてご覧ください。
2-3.検査・検品
組み立てられた製品に問題がないかを確認する仕事です。人間が目視でチェックすることはできないため、専用の顕微鏡を使用して設計書や指示に従って確認をおこないます。
以下の記事では、検品作業についてより詳しく解説しています。併せてご覧ください。
2-4.運搬・出荷作業
検査・検品が終わった半導体を出荷する作業です。「運搬」は社内で次の工程に進むために半導体を運び出すことを指し、「出荷」は完成した半導体を取引先に運べるように準備することを指します。
完成した半導体の保護は完了しているので、梱包とピッキングが主な作業です。
3.半導体を製造する工程
半導体を作るにあたっては、大きく分けて以下の3つの作業工程があります。
3-1.設計
半導体を製造するには、製造する半導体の性能を満たすための設計が製造前の段階で必要です。作業内容は大きく分けて以下の2つがあります。
- 回路・レイアウトの設計
- フォトマスクの作成
回路・レイアウトの設計では、半導体の目標性能を明確にし、回路の動作シミュレーションをおこないながら設計をおこないます。フォトマスクは回路パターンを転写するためのシステムです。半導体の完成を左右することから高い加工精度が求められます。
3-2.前工程
前工程は、シリコンウエハ上に電子回路を作製するまでの工程です。チップの大きさによっては、1枚のウェーハから100個以上のチップをつくることもあります。
作業名 | 内容 |
---|---|
ウェーハ表面の酸化 | ウェーハの表面を酸化させるため、高温の酸素にさらす |
薄膜形成 | ウェーハの表面にアルミニウムや酸化シリコンの薄膜形成をおこなう |
フォトレジストの塗布 | 感光性の液状樹脂(フォトレジスト)をウェーハの表面に均一に塗布する |
露光・現像 | フォトマスクと縮小レンズに光をあて、ウェーハ表面に回路パターンを転写する |
エッチング | フッ酸やリン酸などで、露出した酸化膜・薄膜を除去する |
レジスト剥離・洗浄 | 残ったフォトレジストを剥離、薬液で不純物を除去する |
イオン注入 | 不純物イオンを注入して、半導体の特性を持たせる |
平坦化 | ウェーハ表面を研磨する |
電極形成 | ウェーハに電極配線用の金属を埋める |
ウェーハ検査 | チップに針を接触し、電気に問題がないか検査をおこなう |
3-3.後工程
後工程は、前工程で作製されたウェーハ上の電子回路を機械加工により切り出し、製品を検査するまでが該当します。
作業名 | 内容 |
---|---|
ダイシング | 基礎素材を生産・加工する |
ワイヤーボンディング | 精密機器や電化製品、航空機などをつくる |
モールディング | 生活に関係する製品を製造する |
最終検査 | 温度・電圧、外観構造の最終検査をおこなう |
4.半導体工場の勤務スケジュール例
半導体工場は24時間稼働しており、日勤・夜勤の両方で働く可能性があります。ここでは二交代の工場を想定し、日勤と夜勤それぞれのスケジュール例を見てみましょう。
【日勤】
時間 | スケジュール |
---|---|
6:45 | 出勤・朝礼 |
7:00 | 業務開始 |
10:00~10:10 | 10分休憩 |
10:10 | 業務再開 |
12:00~13:00 | 昼休憩 |
13:00 | 業務再開 |
15:00~15:10 | 10分休憩 |
15:10 | 業務再開 |
19:00 | 退社 |
【夜勤】
時間 | スケジュール |
---|---|
18:45 | 出勤・夕礼 |
19:00 | 業務開始 |
22:00~22:10 | 10分休憩 |
22:10 | 業務再開 |
24:00~翌1:00 | 昼休憩 |
1:00 | 業務再開 |
3:00~3:10 | 10分休憩 |
3:10 | 業務再開 |
7:00 | 退社 |
実際のスケジュールは工場ごとにまったく異なるため、上記はあくまでもイメージです。二交代ではなく三交代のケースもあるので、気になる工場があればスケジュールを個別に確認してみましょう。
5.半導体工場で働く4つのメリット
半導体工場での勤務ではさまざまなメリットがあります。ほかの工場勤務よりも給料が高い傾向にあり、休みも多く比較的体力的には楽なことも。また、未経験でも働くことができ、キャリアアップにつながるなどもあります。
ここではそんな半導体工場でのメリットについて詳しく解説していきます。
5-1.ほかの工場に比べて給料が高い
半導体は非常に高価なものでちょっとしたミスでも大きな損害につながりかねません。そのため、半導体を扱うには細心の注意を払う必要があり、企業から求められるスキルも高くなっています。
半導体工場は都心から離れた場所にあることがほとんどで、通勤にも時間がかかってしまうため通勤補助も手厚くなっています。
そのため、必然的に半導体工場での勤務では、高額な給料や寮の完備だけでなく、マイカー通勤や各種保険など高待遇での求人が多くなっています。
また、シフト制ですのであまり残業や休日出勤は多くありませんが、残業手当や休日手当など福利厚生も整備しているところがほとんどです。
5-2.未経験から働ける
半導体工場の求人には、未経験からでも働けるものばかりです。
その理由は、機械操作などはマニュアルがありますので、マニュアル通りに作業を進めれば大丈夫だからです。専門知識がなくても大丈夫ですので、未経験からでも働くことができます!
5-3.ほかの工場に比べて休みが多い
半導体工場での勤務は、1ヵ月平均15日程度になっていますので、休日が多く設定されていることから仕事とプライベートの両立がしやすくなっているのもポイントです。
また、作業時間も8時間勤務または12時間勤務での交代制となっています。8時間勤務の場合は一般的なサラリーマンと同じ程度の休日ではありますが、12時間勤務の場合には年間の休日日数が多くなります。
ただし、多くの工場は24時間稼働しての2交代か3交代制になっていて、工場によっては日勤だけでなく夜勤もローテーションで働かなければいけない場合があります。
これらは、面接のときなどに確認することで工場での働き方について理解することができます。
5-4.キャリアアップできる
未経験の人は半導体と聞くと非常に難しいことをするイメージを持ってしまいますが、半導体はまだまだ成長をしている業界になっており、未経験であっても募集している求人は多くあります。
また、2年以上働くことで実務経験を重ねることができ、半導体製品製造技能士の資格を受験することができます。この資格はクリーンルームのような環境を整えるための知識を得ることができます。
半導体製品製造技能士は、残念ながら就職に役立つほどの資格ではありません。しかし、待遇の向上などになりますので、キャリアアップにつながる資格といえます。
6.半導体工場の仕事できついポイント
ここまでは半導体工場勤務の給料面や休日面など待遇の良さについて解説してきましたが、待遇が良い反面きつい部分もありますので注意が必要です。ここからは、半導体工場の仕事できついと感じられがちな点について、いくつか紹介しておきます。
6-1.単純作業で飽きる
単純な作業が多いということは人によってはきついと感じてしまうことがあります。これは半導体工場勤務に限った話ではありませんが、工場勤務は単純な作業が多くなるので、慣れていない人や同じことを繰り返すことが苦手な人にとっては大変だと感じることになります。
基本的に工場内での作業は、ベルトコンベアから流れてくる部品を組み立てる作業となるので、ある程度慣れてくると簡単に感じるかもしれません。しかし、単純な作業に慣れてくると、眠気が襲ってきたり、集中力を欠いてしまったりすることで失敗しやすい点もあります。
このような単純な作業であっても、失敗することで多大な損害が出る場合もありますので十分な注意が必要な作業になってきます。
6-2.生産ノルマがある
半導体工場では、1日に何個生産するかを決めていますので、それぞれに生産ノルマが課せられています。
生産ノルマは工場によって違ってきますが、1時間単位で生産個数を決めている工場もあります。仮に生産が遅い場合には改善を求められるなど、精神的なストレスになってしまう場合があります。
ただし、ある程度慣れてしまえば、その生産ノルマも無理難題な個数ではありませんので、単純作業を繰り返しているうちに気付いたらノルマを達成していたということもあります。
また、特別なスキルも必要としていませんので、誰でも普通に作業をしていればノルマをクリアできないなんてことはありません。
7.半導体工場の転職需要や将来性
半導体はさまざまな産業で欠かせないものですが、転職需要や将来性はどうなのでしょうか。
7-1.転職需要
2020年以降は半導体の需要と供給のバランスが崩れており、世界的に半導体不足が起きています。新型コロナウイルスの流行で在宅勤務やタブレット学習の需要がより高まり、半導体の需要が増加している一方、工場閉鎖や物流停止の影響で供給が追いついていません。
多くの半導体メーカーは、生産性の向上に向けてさまざまな取り組みをしている最中です。人手不足に悩まされている工場もたくさんあるので、労働者にとっては転職するチャンスです。
7-2.将来性
パソコンやスマートフォンだけでなく、今後はさまざまなデバイスがインターネットとつながるようになり、ますますIoTが普及する世の中になることが予想されています。
IoTに関する機器はあらゆる部分に半導体を使用するため、IT技術の発展とともに半導体の需要も高まっていくでしょう。特に今後は自動車、産業用ロボット、遠隔医療、仮想空間技術(AR・VR)などの分野において半導体の需要が高まっていく可能性があります。
8.半導体工場に就職・転職する方法
ここまでは、半導体の工場勤務の仕事内容について解説してきましたが、実際にどうすれば半導体の工場で働くことができるのか気になるかと思います。そこでここからは、半導体工場で働くための方法について紹介していきます。
8-1.半導体工場の求人の探し方
半導体工場の求人は主に以下の方法で探すようにしましょう。
- 求人数の多いサイトで探す
- 自分にとって外せない条件をもとに探す
ただし、地方などの勤務地も多く、自分の希望に合う工場を見つけることができない求人サイトもあるので、求人サイトを利用する際には求人数の多いサイトを利用するのがおすすめです。
また、体力的にきつい部分もあります。自分にとって重要な条件は必ずチェックしておきましょう。
8-2.半導体工場の面接対策
求人サイトを利用して働きたい半導体工場が見つかったら、次は面接の段階に進みますが、面接の際にも注意すべき点があります。特に以下の点に注意しておきましょう。
- 服装や髪型、身だしなみを整える
- 志望動機の答え方を練っておく
面接に行くのですから服装や髪型は整えておかなければいけません。服装も工場勤務だからといって普段着でも良いわけではありません。スーツを着用したほうが良いですし、髪の毛も、染めているのであれば黒髪に戻すなどの対応をしておきましょう。
また、工場勤務の面接では、志望動機を聞かれることが多いです。志望動機の質問では、自社のことをどれほど調べているのか試されています。面接を受ける企業のことを十分に調べておき、企業が求めている回答を用意しておくことが重要です。
面接に不安を感じている方は、一度JOBPALの面談応募をして対策してみましょう。
9.半導体工場の仕事に向いている人の特徴
半導体工場の仕事は極小の精密機械を扱うため、人の性格や志向によって向き・不向きがあります。半導体製造の仕事に興味がある人は、自分に向いている仕事か、以下にご紹介する判断項目から確認してみてください。
9-1.丁寧に仕事ができる人
半導体は非常に精密な部品であり、異物が入ると誤作動を招いてしまいます。どの工程で作業するとしても、わずかなゴミ・チリも見逃すことができません。ミスのないように高い集中力を維持して丁寧に仕事をする姿勢が求められます。
また、丁寧さに加えて根気強さも重要な要素です。半導体が完成するまでにはさまざまな工程があり、いずれも黙々と担当する業務をこなしていく必要があります。一見地味な作業でも根気強く仕事ができる人に向いているといえるでしょう。
9-2.責任感を持って仕事ができる人
すべての仕事に共通していえることですが、一つのミスが企業の損失に大きく関わる可能性があります。自分が製造に携わった半導体の精度が低ければ、企業としての信頼を失ってしまいます。自分の仕事に責任感を持ち、真剣に日々半導体と向き合える人こそ、半導体製造の仕事にふさわしいといえるでしょう。
9-3.需要の高い業界で活躍したい人
半導体は今後のデジタル社会を支える部品として大きな期待が寄せられています。そのため、半導体に関する知識が増えれば活躍できる場も増えるでしょう。
需要が高まっているだけあって、多くの半導体工場は活気にあふれています。自分が携わっている分野が成長すれば高収入を見込めるだけでなく、経験を積むことで業界になくてはならない人材を目指すこともできます。したがって、自分自身を成長させたい人にも向いている仕事です。
10.半導体工場の仕事に興味があるなら!
今回は半導体の仕事内容や工程、半導体工場で働くことのメリット・デメリットをご紹介しました。
半導体工場に転職すると、まずマシンオペレーターの工程で働くことになるでしょう。マニュアルが完備されており実際の処理は機械がおこなうので、完全未経験でも働ける可能性があります。
ただし、半導体は非常に精密な部品であり、わずかなチリも見逃さないほどの集中力が求められる仕事です。丁寧に仕事ができることや責任感の強さが必要となります。集中力を維持することに自信があれば、半導体工場での勤務を検討してみてはいかがでしょうか。
まずは半導体の求人をチェックするところから始めていきましょう。