工場の仕事は危険?安全対策の5S活動、KTY訓練について解説
※この記事は5分30秒で読めます。
「工場の仕事は危険って聞くけど本当?」
「事故が起きないように工場ではどんな対策をしているの?」
など、工場の仕事の安全性に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
工場では原則安全が確保されていますが、工場勤務を始めるなら製造現場独自のルールを把握しておくべきです。
今回は、工場における安全のためのルール、起きる可能性がある事故の種類などについて解説します。この記事を読めば工場の安全性がよくわかり、工場勤務の仕事に関する理解が深まります。
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1.工場は危険?安全のためのルール
日本国内にあるほとんどの工場は、「安全のためのルールや対策」をしっかり整備したうえで稼働しています。ルールや対策があるからこそ、作業員は安心して働くことができ、日々の製造や開発の成果をあげられるのです。
しかし、対策をしているといえど、工場で事故が起きる可能性がゼロというわけではありません。作業員一人ひとりの行動次第では、命にかかる重大な事故が発生する可能性もあります。
また、大きな事故が起きれば工場はもちろん、会社自体の存続にも関わってくる問題になるでしょう。
そのため、工場勤務をする方は全員が、ルールや対策はもちろん、実際にどんな事故が起きているのかも把握しておくべきです。
工場内の安全性を高めるには、ルールや対策を決めるだけでなく、作業員が安全性や事故に関する意識を高めるために、定期的に作業員同士で話し合い、ルールや対策に関する情報を更新していくことも大切になってきます。
2.工場で起きる事故の種類
それでは、工場で起こり得る事故にはどのようなものがあるか説明していきます。
下記の事例は、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に掲載されている大きな事故になりそうだった実際の報告からピックアップしています。
2-1.墜落・転落事故
- 排気ファンの異常を確認するために写真を撮っていたら、写真に気を取られて屋上から転落しそうになった
- 港湾を自動車で巡回している時に、海に車ごと転落しそうになった
2-2.転倒事故
- 両手に荷物を持って雪道を歩いていたら、滑って転倒しそうになった
- 熱湯の入った大鍋を運んでいる時に、転倒しそうになった
2-3.激突事故
- 廃棄物保管場で清掃中、後進してきたショベルカーに激突されそうになった
- 巨大な鉄屑入れの中身が崩れて体に当たりそうになった
2-4.崩壊・倒壊事故
- 古紙の集積所で圧縮物が崩れ、清掃していた人が下敷きになりそうになった
- 給水ポンプの運搬中、車輪の位置を変えようとしたら、ポンプユニットが倒れて下敷きになりかけた
2-5.はさまれ・巻き込まれ事故
- トラックの積み荷を下ろす際、坂道でトラックが勝手にバックし、停車場との間にはさまれそうになった
- サスペンションの修理のためトラックの下で作業中、車両の電気を入れられ、サスペンションと地面に間にはさまれかけた
2-6.高温・低温の物との接触事故
- 炎天下で草刈りをしていたら、終業後に具合が悪くなった
- 高音の鉄板を素手で触って火傷しそうになった
2-7.感電・火災事故
- 機械にまたがって調整しようとしたら、電源の絶縁ケーブルが破損していて感電した
- 電源スイッチを切り忘れたままアーク溶接機の端子部に触れそうになった
他の事故に関する情報も知りたい方は、下記をご覧ください。
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参照:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」(ヒヤリ・ハット事例)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.htm
3.知っておくべき工場の5S活動
お伝えしたような事故を防ぐために、多くの工場では「5S」と呼ばれる取り組みがおこなわれています。この5Sは、文字通り5つの「S」によって構成され、目的は生産性の向上や業務の効率化にあります。
工場で働くのであれば、まずは5Sについて正しい理解を深めておきましょう。5Sの内容は以下のとおりです。
3-1.整理(Seiri)
必要なものと不要なものを分けて不要なものは処分する
3-2.整頓(Seiton)
必要なものをすぐに取り出せるよう置き場所や置き方を決めておく
3-3.清掃(Seisou)
機械設備や身辺を常時きれいな状態にしておく
3-4.清潔(Seiketsu)
上記の3つのSを徹底し、散らかったり汚れたりしている状態になることを避ける
3-5.しつけ(Sitsuke)
決められたルールを確実に実行できるような習慣づけをする
工場においては、整理整頓された現場の状態を保つことで、生産性を高めるとともに、安全性を高める5Sの徹底が必要となります。
それぞれの項目を見ると当たり前のような内容ともいえますが、だからこそあらためて5Sを習慣化し、慣れによる手抜きから事故が起こらないような仕組みを作らなければならないのです。
4.工場で危険予知のためにおこなうKYT訓練とは?
工場で働く際に知っておくべきこととして、「KYT訓練」という言葉があります。KYT訓練は、安全性に直結する非常に重要な訓練です。
KYTとは、「危険」(Kiken)、「予知」(Yochi)、「トレーニング」(Training)の頭文字を取ったもので、工場の危険を予知するための訓練を意味しています。
実際に、ほとんどの工場には多くの機械があり、いくつかの危険が潜んでいます。その原因や危険性をイラストや現場での実際の作業を通じて、グループで解決していくというのがKYT訓練の内容です。
KYT訓練は、各ラウンドによって4つのステップがあり、次のように順を追って訓練を進めていきます。
4-1.【1R】事実・現状の把握
まずは現場の状況を把握し、そのなかに潜んでいる危険を一つずつあぶり出します。
4-2.【2R】原因を探る
あぶり出した危険の一つひとつの原因を探り、危険性の順位づけをおこないます。
4-3.【3R】対策を練る
原因がわかれば対策が立てられるので、危険度の高いもの順に対策案をディスカッションします。
4-4.【4R】行動計画を立てる
具体的にどのような対策を実施していくかという計画を立て、その内容をグループや組織の共通認識とします。
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参照:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
5.事故の一歩手前!ヒヤリハットについて
ヒヤリハットという言葉も、工場ではよく耳にする安全性に関する重要なキーワードです。
ヒヤリハットとは、「ヒヤッと」したり「ハッと」したりといった、もう少しで事故になるような状況のことを指し、これを報告することで危険な経験の情報を共有し、安全性を高めることにつなげます。
労働災害における経験則の一つである「ハインリッヒの法則」によると、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、さらに300件のヒヤリハットがあるといわれています。
ヒヤリハットを0件にするために、起きてしまったヒヤリハットの情報を現場のメンバー全員で共有し、同じことが起きないように事前に対策することが必要となります。
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参照:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」(ハインリッヒの法則(1:29:300の法則))
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo24_1.html
6.工場の仕事中に怪我をしたときの対処法
ここまでご紹介したような対策を取ったとしても、工場での事故をゼロにすることは、現実的には難しいものです。
軽微なものを含め、工場勤務で怪我をしてしまう可能性はどうしても残ってしまいます。それでは、もしも怪我をしたらどのように対処すれば良いのでしょうか。
まず一番大切なことは、労災指定の病院で治療することです。
仕事中に怪我をした場合は、労災に認定される可能性があるので、治療費は労災保険でまかなえます。しかし、もし労災病院以外で治療を受けてしまうと、あとから労災が下りたとしても、一時的に自費で治療費を払わなければなりません。
なお、労災を使うためには労災申請書に事実関係を記載しなければなりませんから、怪我をした場所や状況、関係した方などをできるだけ細かく、かつ早めに記録しておき、適切な対処を取るようにしましょう。
7.安全に働ける工場の見分け方
現在、日本国内の多くの工場のには、非常に厳密な安全に対する意識が根付います。しかしながら、事故の可能性がゼロとは限りませんので、働くならできる限り安全性が高い工場に勤務したいと思うのは当然のことでしょう。
実際に、安全に働ける工場かどうか見分けるためには、以下の2点を意識すべきです。
- 働く前に工場見学をする
- 実際に働いていた人の口コミを見る
それぞれのポイントについてお伝えします。
7-1.働く前に工場見学をする
「採用されて工場に行ったら、思ったよりも環境が悪かった...」ということは避けたいものです。安全な工場かどうかを確認するためには、できれば働きはじめる前に工場を見学し、ルールや対策、5Sが徹底されているかどうかをチェックしておきましょう。
何も言わなくても面接時に工場を見学させてくれる場合もありますが、頼まないと見せてくれないこともあるので、面接の際に見学させてほしい旨を伝えることをおすすめします。
7-2.実際に働いていた方の口コミを見る
実際に、その工場で働いていた方の口コミを、インターネットで見つけることができるかもしれません。口コミサイトを見てみると、必ずしもすべてが真実とは限りませんが、社風や現場の環境などを垣間見ることができる可能性があります。
また、もし実際に働いている方が身近にいるのなら話を聞いて、工場の内部の情報を収集しておくと良いでしょう。内部情報を知らずに働き始めると、理想と現実のギャップから、早期に退職を考えてしまう可能性もあります。
そのため、口コミサイトを見たり、知人に話を聞いたりして、工場の情報を集めるようにしましょう。
なお、工場の仕事については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
8.まとめ
今回は、工場の安全性についてお伝えしました。
お伝えしたとおり、各工場ごとに大きな事故の発生を防ぐために、ルール決めや対策をおこなっています。しかし、100%安全な工場は残念ながらありません。
大きな機械があったり、複数の方が同時に作業をしたりするため、どんなにルールや対策がしっかり定まっていても、一人ひとりの意識が高くなければ、絶対に事故が起きないとは言えないでしょう。
もし、これから工場で働くことを考えているなら、安全性をチェックするために事前に工場見学をさせてもらったり、口コミサイトを見て作業員が投稿している内部事情を確認したりしましょう。
安易に大丈夫と自分で決めつけず、慎重に働く場所を検討することをおすすめします。
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