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更新日:2024年05月29日

裁量労働制とは?対象になる職種や業務内容と求人の見つけ方

裁量労働制とは?対象になる職種や業務内容と求人の見つけ方

※この記事は6分30秒で読めます。

「裁量労働制ってどのような働き方?」
「裁量労働制で働くメリットが知りたい」
など、裁量労働制に関して疑問を持っている方もいるでしょう。

裁量労働制は、労働時間や仕事の進め方が労働者の裁量にゆだねられ、自由度の高い仕事が実現するなどの特徴があります。

今回は、裁量労働制の概要、他の労働制度との違い、メリット・デメリット、労働時間の仕組みなどを解説します。この記事を読めば、裁量労働制のことがよくわかり、転職活動の参考にできます。

1.裁量労働制とは?働き方や制度について

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、「働いたことによって得られた成果」に対して報酬が支払われる制度です。事前に労使協定で定めた時間を働いたものとみなし、それに値する賃金が支払われます。

例えば労働したとみなす時間(みなし労働時間)が8時間の場合、働いた時間が6時間でも10時間でも8時間分の賃金を受け取ることになります。ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超えた場合などは別途で残業代が発生します。

裁量労働制が採用される目的は労働者の生産性向上です。研究や開発など専門性の高い仕事では、決められた労働時間の枠にとらわれると生産性が下がる場合があります。

始業や終業の時間を含めた労働時間の管理をゆだねられることで、労働者は労働時間を気にする必要がなくなり、自由度の高い働き方によって生産性の向上が期待できます。

ただし、裁量労働制はすべての職種に適用できるわけではありません。適用できるのは以下の2種類の仕事に限定されます。

業務型 対象になる仕事
専門業務型 業務遂行の手段・方法、時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要がある業務
企画業務型 企業の本社などにおいて企画・立案・調査・分析などをおこなう労働者

2024年4月1日からは、裁量労働時間制のルール変更がおこなわれます。2024年4月以降に裁量労働制を継続または導入するためには、本人同意や同意の撤回の手続き方法を定める必要があります。

【2024年4月以降に労使協定で定めるべき事項として加わった本人同意に関する事項】

  • 制度を適用するにあたって労働者本人の同意を得ること
  • 制度を適用するにあたって労働者が同意をしなかった場合、不利益な取扱いをしないこと
  • 制度を適用するにあたって同意の撤回をするための手続きと、同意と撤回に関する記録を保存すること

2.裁量労働制と他の労働制度の違い

ここでは、裁量労働制と、それ以外の労働制度の違いについて解説します。

2-1.変形労働時間制との違い

変形労働時間制は、1週・1ヵ月・1年間など、一定期間の平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で、特定の期間において法定労働時間を超えた労働ができるようになる制度です。

労働時間は1日8時間、週40時間以下が原則です。この時間を超えた場合は、原則として時間外手当が発生します。しかし、業種や職種によっては通常の法定労働時間がなじまないこともあります。

例えば経理部門では年度末の決算時期に残業が増える可能性が高いです。変形労働時間制を導入していれば比較的余裕がある閑散期の残業代を節約でき、代わりに繁忙期の残業に充てることができます。また「1日15時間働き、翌日は休みにする」といった対応も可能です。

裁量労働制と違って、適用できる職種に制限はありません。

2-2.フレックスタイム制度との違い

フレックスタイム制は変形労働時間制の1つです。事前に定められた総労働時間の範囲内であれば始業時刻や終業時刻を自分で決められます。

一般的には社員全員の出勤時間や退勤時間が就労規則に定められていますが、フレックスタイム制度が導入された企業なら労働者の裁量で出勤時間帯を決められます。

両者の違いの1つは労働時間の計算方法です。裁量労働制は一定時間をみなし労働時間として採用することから、1日の時間外労働のカウントは不要です。一方のフレックスタイム制は、事前に決められた清算期間で時間外労働の清算をおこないます。

また、フレックスタイム制は労働するべき期間や総労働時間が定められています。「1日の出勤のうち、この時間の出勤は必須」というコアタイムの設定がある点も裁量労働制とフレックスタイム制の違いです。

2-3.高度プロフェッショナル制度との違い

高度プロフェッショナル制度は、専門的かつ高度な職業能力を持ち、1年間に支払われる賃金額が少なくとも1,075万円を超えるなどの一定要件を満たした方を対象にした制度です。

労使委員会の決議と労働者の合意を前提に、年間104日以上の休日確保や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を設ける代わりに、労働基準法の労働時間・休日・休憩・深夜割増賃金の規定が適用されなくなります。

裁量労働制と違い、年収に制限がある点が大きな違いです。裁量労働制は法定労働時間を超えた残業には時間外手当が出るなど労働基準法が適用されますが、高度プロフェッショナル制度では採用されないといった違いもあります。

2-4.事業場外みなし労働時間制との違い

事業場外みなし労働時間制は、会社外での業務をおこなう際に労働時間の把握が難しい場合、所定労働時間を働いたとみなす制度です。外回りや出張など、営業職の働き方に適用されることが多くあります。

裁量労働制とは異なり、会社の外でおこなう業務のみが対象です。また、会社の外でおこなう業務であっても、労働時間を管理できる場合は適用されません。

3.裁量労働制の対象になる職種や業務内容

裁量労働制はすべての職種が対象ではなく、「専門業務型」「企画業務型」に当てはまる職種に関して適用されます。

専門業務型 企画業務型
対象業務 業務遂行の手段や時間配分などを大幅に労働者の裁量に委ねる業務 企画、立案、調査、分析の業務で、業務遂行の手段や時間配分などを大幅に労働者に委ねる業務
対象の職種の一例
  • 公認会計士

  • 弁護士

  • 税理士

  • 建築士

  • インテリアコーディネーター

  • プロデューサー

  • ディレクター

  • プログラマー
  • 事業運営に関する業務

  • 企画・立案の業務

  • 調査・分析の業務

※経営企画や営業企画、人事や広報など

3-1.専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、専門性の高さゆえに業務の遂行を労働者にゆだねる必要があり、労働者に大幅な裁量を認める業務に適用されます。

対象になるのは以下の20の仕事です。

  • 新商品・新技術の研究開発、人文科学、自然科学に関する研究
  • 情報処理システムの分析または設計の業務
  • 新聞または出版の事業における記事の取材・編集または放送番組の制作のための取材または編集
  • 衣服、室内装飾、工業製品、広告などの新しいデザイン考案
  • プロデューサーまたはディレクター
  • 広告、宣伝などにおける商品などの内容、特長を紹介するコピーライター
  • システムコンサルタント
  • インテリアコーディネーター
  • ゲーム用ソフトウェアの創作
  • 証券アナリストの業務
  • 金融工学などの知識を用いておこなう金融商品の開発
  • 学校教育法に規定する大学における教授研究
  • M&Aアドバイザー
  • 公認会計士
  • 弁護士の業務
  • 建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)
  • 不動産鑑定士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 中小企業診断士

3-2.企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する企画や立案・調査・分析業務のうち、労働者の大幅な裁量を認めるべき業務について適用できる制度です。

企画業務型裁量労働制を導入するには、「労使委員会での決議」「労働基準監督署に決議の届出」といった手続きが必要です。

対象に含まれる業務の範囲は以下のとおりです。

  • 所属する事業場の事業の運営に関する業務
  • 企画、立案、調査および分析の業務
  • 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務
  • 業務の遂行の手段・時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をしない業務

4.裁量労働制ならではのメリット

裁量労働制の仕事で働くメリットとして考えられるのは、以下の2つです。

4-1.自由度の高い働き方ができる

裁量労働制では、始業時間や終業時間を自由に決めることができます。例えば「子どもを保育園に送迎する必要があるから月曜は10時始業の17時終業にする」といったように、ライフスタイルに合う働き方が実現します。

また、朝型の方は朝早く出勤し、夜型の方は朝の出勤時間を遅らせるなど、比較的自由に仕事を進められます。

4-2.状況によっては働く時間を短くできる

通常の働き方では決められた時刻に出勤し、仕事の進み具合に関係なく所定の労働時間分は会社にいる必要があります。

一方、裁量労働制は定時に拘束される働き方ではありません。個人に設定された売り上げ目標やノルマを達成するなどの成果さえ上げることができれば、勤務時間を短縮して早く退勤することもできます。

成果次第ではみなし労働時間よりも短い時間しか働かず、プライベートの時間を確保することもできるでしょう。

5.裁量労働制ならではのデメリット

自由度が高い裁量労働制ですが、以下のようなデメリットもあります。

5-1.長く働いても残業代が出ない

裁量労働制では、事前に労使協定で定められた「みなし労働時間」が適用され、毎月固定のみなし残業代が支給されます。

裁量労働制では長時間労働になった場合でも、みなし労働時間が法定労働時間内なら、休日と深夜の労働以外の残業代は支払われません。

仕事を効率よく進められなかったり、契約や開発などの目標やノルマを達成できなかったりする場合は、長時間労働をするうえに残業代を受け取れないという状況に陥る可能性もあります。働き方によっては通常の勤務形態よりも収入が少なくなる点に注意が必要です。

5-2.自分で仕事を管理しなければならない

裁量労働制は働く時間が決まっておらず、どれだけ働いても給与が変わらない働き方です。業務を効率化して作業時間が短縮されれば労働時間に対して多くの収入を受け取れる反面、仕事が長引くほど受け取れる収入の時間単価は安くなっていきます。

自分で仕事の進捗や作業の進み具合、納期やノルマの達成率などを管理し、みなし労働時間の範囲内で毎月の業務を完了できるような仕事管理が求められます。

不慣れな仕事を任されたり非効率な仕事の進め方をしたりすると働く時間が長くなる一方です。与えられた仕事に対するスキルや知識を身につけるだけでなく、短い時間で成果を出せる仕事の遂行能力を高める努力が求められます、

6.裁量労働制の労働時間の仕組み

ここでは裁量労働制の「労働時間」の仕組みについて解説します。

6-1.裁量労働制でも残業代が出るケース

裁量労働制の労働時間は、実際に働いた時間ではなく、契約で定めた「みなし労働時間」です。1日のみなし労働時間を8時間と設定した場合、実労働時間が10時間でも8時間分の賃金が支払われ、残業代は支給されません。

ただし、契約でみなし労働時間を1日9時間と定めた場合、法定労働時間である8時間を超える1時間については残業代が発生します。法定労働時間は1日8時間、週40時間が条件であるためです。

また、裁量労働制の仕事であっても、深夜や休日の勤務をおこなうと、企業は深夜手当・休日手当を労働者に支払わなければいけません。22時から翌朝5時までに労働をした場合は2割5分以上の割増賃金が支払われます。

さらに、法定休日である1週1休(または4週4休以上)に労働した場合には、休日手当として3割5分以上の割増賃金が支払われます。

6-2.裁量労働制でも36協定は適用される

36協定は、労働基準法第36条に基づいて労使で結ぶ協定のことです。労働基準法では1日、1週間の労働時間および休日日数を定めています。

これを超えてみなし労働や深夜労働、休日労働をおこなう場合、企業と労働者で36協定を締結して、企業は労働基準監督署へ届けを出さなければいけません。

裁量労働制は労働時間に関する裁量を労働者に持たせる制度ですが、裁量労働制でも36協定による法定労働時間や時間外労働、休日労働の上限時間は適用されます。

例えば残業時間の上限は月45時間、年360時間と定められており、企業がこれを超える労働をさせることは禁止されています。

7.裁量労働制の求人の見つけ方

裁量労働制を採用した求人を探す場合、求人情報に裁量労働制の仕事であることが明示されていることを確認しましょう。対象の職種や業務だとしても、裁量労働制を導入する義務はなく、一般的な労働契約で労働者を使用する企業も少なくありません。

一方、裁量労働制を採用する場合は、以下のように「裁量労働制の業務であること」を明示することが必要です。

【裁量労働制の求人に記載される労働時間の表記の例】

裁量労働制(企画業務型/専門業務型)により出退勤の時間は自由で、8時間働いたものとみなされます。

8.裁量労働制で働く前に確認しておくべきこと

裁量労働制の職種を扱う企業に入社する際には、以下の3点を必ず確認しておきましょう。

8-1.自分が裁量労働制の働き方に合っているか

裁量労働制は、始業時刻や終業時刻に縛られない、自由な働き方ができる制度です。しかし、みなし労働時間のなかで自分の仕事の進捗を管理する必要があり、うまく仕事を管理できないと長時間の労働をしても残業代を受け取れない状況に陥ることがあります。

自分で率先して仕事の進み具合を管理できる方は、働き方の自由度が大きいメリットを活かせます。一方、「決められた労働時間に出勤したい」「自分で仕事を管理するのではなく、決められた作業を黙々とこなしたい」と考える方には向いていない可能性があります。

求人に応募する前に、裁量労働制が自分に向いた働き方なのかは必ず確認しておきましょう。

8-2.どこまでの裁量を持って働けるか

裁量労働制の職種に応募する際は、面接などで「どこまでの裁量を持たせてくれるのか」を確認しましょう。

裁量労働制は労働者の裁量で仕事を進められることが前提の制度ですが、どこまでの裁量を持たせてもらえるのかは企業ごとに判断が異なります。

例えば、みなし労働時間のなかで成果を出しても自由に退勤できなければ、みなし労働時間と実労働時間に大きな乖離(かいり)が生じるかもしれません。具体的にどのくらいの裁量を持って働けるかを確認し、納得してから働くことが大切です。

8-3.評価の制度や報告の仕方はどうするか

裁量労働制を採用した仕事で働く場合、長く働いても得られる報酬は変わりません。労働時間の制約をなくした環境で、いかに効率よく成果を残すかが求められます。

裁量労働制の働きぶりを評価してもらう場合、企業側の評価制度が定まっていることが大前提です。評価基準が決まっていないと成果に対して適正な評価がなされず、昇進や昇給が遅れるといった弊害がうまれることがあります。

裁量労働制の評価制度や成果の報告の仕方の流れなどを、応募時点で必ず確認しておきましょう。

9.まとめ

裁量労働制は残業時間などの制約をなくすことで、自由度の高い働き方ができる制度です。

成果を出せば効率的かつ自由に働ける一方、非効率な仕事の進め方ではメリットが失われてしまいます。裁量労働制のメリット・デメリットを踏まえたうえで、対象の求人に応募するかを決定しましょう。

また、JOBPALでは柔軟な働き方ができるお仕事情報を掲載しております。気になる求人があったら、お気軽にご応募ください。

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