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更新日:2024年05月29日

介護休暇・介護休業とは?取得条件や申請方法、給付制度について

介護休暇・介護休業とは?取得条件や申請方法、給付制度について

※この記事は6分30秒で読めます。

「介護休暇や介護休業ってどのような制度?」
「介護休暇や介護休業を利用するメリットが知りたい」
など、介護休暇制度・介護休業制度に関して疑問を持っている方もいるでしょう。

介護休暇と介護休業は、介護を必要とする家族の介護のために取得できる休みのことです。介護休暇は時間や1日単位の休暇で、介護休業は93日を上限とした長期の休業となります。これらの制度は正社員であれば誰でも利用できますし、有期雇用のアルバイトやパートであっても、条件を満たすことで利用できます。

今回は、介護休暇制度と介護休業制度の概要、選び方や給付金制度などを解説します。この記事を読めば、介護休暇と介護休業のことがよくわかり、自分に合った制度を活用できるようになります。

1.介護休暇とは?

介護休暇とは、働く方が要介護状態の家族の介護のために使用できる休暇のことです。自宅での介護の他、病院の付添いや、介護サービスの利用のための申請や打ち合わせのためにも活用できます。

時間単位で使えるため、「介護が必要な家族のため、少しの時間仕事を調整したい!」という方にぴったりな制度です。

1-1.介護休暇を取得できる日数

介護休暇は、介護の対象となる家族が1人の場合には年間に5日、2人以上の場合には年間に10日まで利用することができます。

この場合の年間とは、企業によって特に定めがない場合、毎年4月1日から翌年3月31日までの間でカウントされます。1年の終わりに休暇日数が残っていたとしても、有給休暇のような次年度への持ち越しはなく、また残日数5日か10日から数え始めます。

介護休暇は、1日単位の取得のほか、1時間、2時間といった時間単位の取得が可能です。この時間単位の取得について、基本的には始業時刻から連続して取得するか、業務の途中から終業時刻まで連続して取得することになっています。

つまり、介護休暇を活用し出勤時間を時間単位で遅らせる、あるいは退勤時間を早めることができるということです。

ただし、より柔軟な休暇の取得を目指すため、厚生労働省は企業に対し、業務の途中で休暇を取るいわゆる「中抜け」の対応を認めることを推奨しています。中抜けが認められるかどうかは企業によって異なるため、働いている企業の就業規則を確認しましょう。

1-2.介護休暇中の給与

介護休暇中の給与は基本的には無給になります。

無給の休みは欠勤と同じではないかと感じる方もいるかもしれませんが、欠勤の場合は休むこと自体が給与査定に響くことがあります。しかし、介護休暇による休みは労働者の権利のため、給与査定に響く心配はありません。

また、国は介護休暇を有給として扱うことを推進していて、時間単位で利用できる有給を与える企業に対しては助成金の支給もあります。すでに導入している企業もあるため、介護休暇を利用する方は就業規則を確認してみてください。

1-3.介護休暇の取得条件

介護休暇は、要介護状態にある家族の介護をしている働く方であれば、すべての方が取得できます。正社員に限らず、派遣やパート、アルバイトの方も取得可能です。

ただし、従業員の過半数の代表者や、過半数で組織する労働組合と企業の間で取り交わされる「労使協定」を締結している場合は、入社6ヵ月未満の方と1週間の所定労働日数が2日以下の方は対象外になるため注意しましょう。

要介護状態とは「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある」と定められており、12項目によって判定されます。しかし、働く方の介護休暇の取得が制限されないようにするため、企業は個々の事情に合わせて柔軟に対応し、介護休暇の取得を推進することが望まれています。

1-4.介護休暇の対象となる家族の範囲

介護休暇の対象となる「介護が必要な家族」の範囲は以下の図のとおりです。

介護休暇においては、本人からみて二親等以内の親族(祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫)と配偶者およびその両親が家族の範囲とされています。同居、別居は問いません。

また、この場合の配偶者は事実婚も含み、子どもは養子を含む法律上の親子関係がある方のことを指します。この範囲外で、例えば配偶者の祖父母などの介護をしたい場合、法律上は介護休暇の対象とはなりません。

しかし、企業によって規定を定めていたり、柔軟に対応したりしてくれる場合があるため、一度職場に確認してみると良いでしょう。

1-5.介護休暇の申請方法

介護休暇の申出には、原則は書類提出の義務はなく、口頭で上司に伝えることで取得することができます。ただし、企業によって申請書類がある場合にはそれに従いましょう。

急な通院や、介護が必要な方の病状の悪化などに対応できるよう、当日の電話連絡などでも取得することが可能です。有給休暇のように、「○○日前までに申請する」と定められることはありません。

しかし、事前にわかっている介護の予定であれば、わかった時点で申請をするほうが良いでしょう。

2.介護休業とは?

介護休業とは、働く方が要介護状態の家族の介護のために使用できる休業のことです。

介護休暇との違いは、1日や時間単位の取得ではなく、通算93日までの長期的な休業として取得できるという点です。仕事を一定期間休み、介護に専念したいという方などに向いている制度です。

2-1.介護休業を取得できる日数

介護休業は、介護を必要とする家族1人につき、93日まで取得(最大3回まで分割可能)できます。例えば、30日+30日+33日のように、時期を分けて3回取得することもできますし、93日間連続で取得することもできます。

休業を取得する時期についての定めはないため、対象となる家族が介護の必要な状態にある限り、どのタイミングでも取得が可能です。1回目に30日間の休業をし、休業終了の1ヵ月後にまた取得することや、1年後や2年後に取得することもできます。

2-2.介護休業中の給与

介護休暇と同様に、介護休業中も原則として会社からの給与の支払いはありません。ただし、企業によっては独自に給与を支給している場合もあるため、就業規則を確認しましょう。

また、休業期間中も社会保険料や住民税などが発生するため、その扱いについてもよく確認しておく必要があります。

制度の詳細については「介護休業給付金制度について」の章でご説明しますが、一定の条件を満たす方は「介護休業給付」の制度を利用することで、給与の一部を給付金として受け取ることができます。

2-3.介護休業の取得条件

要介護状態の家族の方を介護する正社員であれば、原則としてすべての方が介護休業を取得できます。

有期雇用のアルバイトやパートの方も取得できますが、取得する予定の日から数えて93日から6ヵ月までの間に契約期間が終わり、更新されないことが明らかである方は対象外となるため注意しましょう。

上記に当てはまらない場合は、アルバイトやパートで労働時間が短い方でも、原則として介護休業の取得が可能です。

ただし、働く方と企業の間で労使協定が締結されている場合には、入社1年未満の方と、申出の日から93日以内に雇用契約が終了する方、1週間の所定労働日数が2日以下の方は介護休業取得の対象外となります。

介護休業の取得を考えている方は、自分が取得対象かどうか、就業規則であらかじめ確認しておくと良いでしょう。

2-4.介護休業の対象となる家族の範囲

介護休業取得の対象となる「介護が必要な家族」の範囲は以下の図のとおりです。

本人から見て二親等以内の親族(父母、祖父母、兄弟姉妹、子、孫)と配偶者およびその両親が介護休暇制度に関する家族の範囲となります。この場合の配偶者は事実婚を含みます。

介護というと高齢者の方の介護を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、障がいや病気を患った子どもや孫の介護のために介護休業を活用することも可能です。

なお、二親等以内に要介護状態の方が2人以上いる場合には、人数分の介護休業を取得することができます。

2-5.介護休業の申請方法

介護休業を取得するためには、介護休業を開始したい日の2週間前までに申請書を作成し、企業に提出する必要があります。

2週間前までに申請書を提出できなかった場合も介護休業の取得は可能ですが、その場合は休業開始日が希望どおりではなく、申請日から2週間の間で企業によって指定されることもあります。

申請書には以下の内容を記載します。

  • 介護を必要とする家族の氏名、続柄、介護を必要とする理由
  • 介護休業の期間
  • 今回とこれまでの申出に係る状況(2週間前までに申し出ているか、何回目の介護休業かなど)

社内規定の申請書があればその様式で提出しましょう。申請書がない場合には、厚生労働省のサイトにある様式例を参考にして準備します。

原則として申請後3日以内に企業から介護休業期間などが記載された通知書が発行されるため、必ず内容を確認してください。

申請後に休業開始日を変更したい場合には、就業規則に記載があればそれに従い、記載がない場合には企業と働く方の間で話し合いをして定める必要があります。

また、介護休業を取得中、期間が終わる2週間前までに申出をすることで、原則1回に限り、理由を問わず、93日におさまる範囲内で休業期間を延長することが可能です。

3.介護休暇と介護休業の違い

介護休暇と介護休業の違いについて、表で比較してみましょう。

介護休暇 介護休業
取得できる日数
  • 対象家族1人の場合は年に5日
  • 2人以上の場合は年に10日
対象家族1人につき通算93日間
(3回まで分割可能)
給与 原則支給なし 原則支給なし
主な取得条件 要介護状態の家族を介護している
すべての労働者。
要介護状態の家族を介護してい
るすべての無期雇用労働者。
有期雇用の場合は、休業取得予
定日から数えて93日から6ヵ月
までの間に契約期間が終わり、
更新されないことが明らかでな
い者。
対象となる家族
の範囲
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 実父母、義父母
  • 子(養子を含む)
  • 配偶者の父母
  • 兄弟姉妹
  • 祖父母
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 実父母、義父母
  • 子(養子を含む)
  • 配偶者の父母
  • 兄弟姉妹
  • 祖父母
申請方法
  • 会社の規定に従う。口頭でも
    可。
  • 当日の連絡で休暇を取得し、後
    日申請も可能。
  • 会社の規定に従い、申請書
    を提出する。
  • 休業予定日の2週間前までに申
    請。

介護休暇と介護休業の一番大きな違いは、取得できる日数です。また、申請方法も介護休暇のほうが簡易的であり、介護休業を申請するためは計画的な手続きが必要となります。

給与や対象となる家族の範囲について大きな違いはありません。

4.介護休暇と介護休業の選び方

介護と仕事の両立は大変ですが、制度をうまく利用することで両立の負担も軽減することができます。介護のために仕事を調整したいと考えるとき、自分は介護休暇を使うべきか、介護休業を使うべきか迷う方もいるでしょう。

ここでは、介護休暇か介護休業かを決める際の状況の例をご説明します。

4-1.介護休暇を選ぶべき人

介護休暇を選ぶべき人は、以下のような状況にある方です。

  • 家族の急な体調不良で介護が必要になった
  • 自宅から病院や施設までの送迎をしたい
  • 通院やリハビリの付き添いをしたい
  • 買い物の付き添いをしたい
  • 役所の手続きをするための付き添いをしたい
  • ケアマネージャーと面談をしたい
  • 自宅で短時間の身の回りの介護をしたい

ポイントは、「介護に充てる必要がある時間が長時間ではない」という点です。自宅で過ごすぶんには問題ないが通院や買い物には付き添う必要がある、普段は介護サービスを利用しているが、その相談などのために時間を使いたいなどという状況の方は、介護休暇を使うと良いでしょう。

介護休暇は、それを活用することで、仕事をしながらピンポイントで介護のための時間を作ることができる点がメリットです。

4-2.介護休業を選ぶべき人

以下のような状況にある方は、介護休業を選ぶことを検討してみましょう。

  • 長期間および同居での介護が必要になった
  • 施設入居に向けた引越しの準備をしたい
  • 看取りが近づいているとき

介護休業を選ぶ際には、「目が離せない状況か」「まとまった時間が必要か」をポイントに考えます。例えば、付きっきりの介護が必要な状況であるにも関わらず介護サービスを利用していない方は、介護できる方が常にそばにいる必要があるため、介護休業の利用が必要となります。

また、介護サービスを利用しつつも、看取りが近づいていることを感じている場合には、介護休業を利用して、なるべく長い時間そばにいられるようにすることも一つの方法です。

これから介護施設に入るというタイミングも、介護休業を利用するには良いタイミングといえるでしょう。単なる引越しとは異なり、さまざまな手続きがあるため、まとまった休みを取っていると安心です。

介護休業は、仕事を辞めるわけではないですが、一定期間仕事から離れて介護に専念できるという利点があります。

5.介護休業給付金制度について

家族のために介護休業を使いたいけど、長い期間無給になるのは心配だという方も多いでしょう。しかし、介護休業を取得する方は、一定の条件を満たすことで「介護休業給付金」を受給できる可能性があります。

介護休業給付金を受給するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 雇用保険に加入している労働者で、家族を介護するために介護休業を取得していること。
  • 介護休業をはじめる日までの2年間のうち、11日以上勤務した月が通算で12ヵ月以上あること。もしも12ヵ月に満たない場合は、勤務時間が80時間以上の月を1ヵ月として扱うことも可能。

期間の定めがある労働者については、さらに以下の条件が加えられます。

  • 介護休業を開始する日から数えて93日から6ヵ月の間に、労働契約が満了することが明らかでないこと。

受け取れる介護休業給付金の額は、休業前の給与を基準に算出されます。

まず、介護休業前の賃金日額を計算します。

  • 賃金日額=直前6ヵ月の賃金(賞与を除く)÷180

この賃金日額が給付金の基準となりますが、支給額は介護休業期間中に企業から賃金が支払われているかどうかによって計算方法が変わります。

    <介護休業中に賃金の支払いがない場合>

  • 1ヵ月まるごと休んでいる場合(休業が終わる月を除く)
    支給額=賃金日額×30日×67%
  • 休業が終わる月の場合
    支給額=賃金日額×支給日数×67%

1ヵ月単位の休みをとっていた場合、たとえ暦上の日数が31日だったとしても30日分として計算されます。

    <介護休業中に賃金の支払いがある場合>

  • 支払われた賃金が休業前の賃金月額の13%以下の場合
    支給額=賃金日額×支給日数×67%
  • 支払われた賃金が休業前の賃金月額の13%より多く80%未満の場合
    支給額=(賃金日額×支給日数×80%)-実際に支払われた賃金
  • 支払われた賃金が休業前の賃金月額の80%以上の場合
    支給されません

つまり、労働者が受け取る賃金と給付金を合わせた額が、休業前の賃金月額の80%を上限とする範囲で給付額の割合が変化するということです。そのため、賃金月額の80%以上の給与を企業から受け取っている方は、介護休業給付の対象外となります。

また、介護休業を開始したときの賃金月額には上限と下限があり、令和6年3月現在、上限額は50万9,400円、下限額は8万2,380円です。

上限額を上回る賃金を受け取っている方は、自動的に上限額によって給付金が計算され、逆に賃金が下限額を下回っている方は、下限額によって計算されます。

支給額にも上限があり、令和6年3月現在の支給上限額は34万1,298円です。給付額を計算した結果この額を超えている場合、支給額は上限額まで減額されます。

申請は企業がハローワークに対しておこないます。その際に、介護対象家族との間柄がわかる住民記載事項証明書などが必要となる場合もあるため、企業から求められたら速やかに準備して提出しましょう。

書類の提出期限は介護休業を終了した翌日から2ヵ月先の月末までなので、給付金を受け取れるのはそのあとになります。休業中に受け取れるわけではないため、注意してください。

6.介護休暇・介護休業を取得する前に

介護という状況に働きながら対応するため、介護休暇や介護休業の制度をぜひ使いたいと考える方も多いでしょう。ただし、これらの制度を使う前に注意してもらいたいことがあります。ここでは2つの注意点をご紹介します。

6-1.取得前に家族と話し合いをする

介護休暇も介護休業も便利な制度ですが、取得日数には上限があり、その間の収入も普段より下がってしまう方がほとんどです。そのため、1人で決めるのではなく、取得前に家族とよく話し合ったうえで取得することが大切になります。

なかには1人で介護のすべてを担わないといけない方もいますが、介護と仕事の両立は重労働です。1人で抱え込むことで、介護離職につながってしまうリスクもあります。

できる限り介護離職をしなくてもいいように、家族や兄弟などと協力できるように話し合い、順番に休みを取るなどの工夫ができると良いでしょう。

6-2.介護サービス・介護施設の利用も検討する

費用はかかってしまいますが、介護サービスや介護施設の利用も選択肢の一つとして検討しましょう。休暇を取得して仕事がない状態であったとしても、介護による心身への負担は大きいものです。

要介護認定を受けると、担当のケアマネジャーに相談しながら介護保険サービスを利用することができます。自宅での介護には、訪問介護や訪問入浴、デイサービスなどがあります。

また、短期宿泊のショートステイや、高齢者の方の入居施設の特別養護老人ホームなどの利用が可能です。これらのサービスは、介護の必要なレベルに応じて、国からの補助を受けながら利用でき、家族の介護の負担を減らすことができます。

介護サービスを上手に利用することで、家族に過度な負担がかかることなく介護と仕事の両立をしていける可能性が高くなるでしょう。

7.まとめ

少子高齢化や晩婚化の影響もあり、働き盛りの世代でも介護の担い手となる状況となってきました。介護と仕事を両立していきたいと考えている方は、介護休暇や介護休業などの制度を積極的に活用しましょう。

収入の面で不安を感じる方もいるかもしれませんが、無理して制度を使わずに介護を続け、結果として介護離職につながってしまったら元も子もありません。

雇用保険に加入している方なら介護休業給付金を受給できる可能性もあるため、そういったものを活用しながら仕事を調整してみると良いでしょう。

これらの制度を活用しても今の仕事を介護と両立していくことが難しいと感じたら、より介護に時間を割ける働き方に変えるのも一つの方法です。完全に離職するのではなく、働き方を変えるという選択肢を取ることで、キャリアの継続も実現することができます。

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