試用期間とは?期間中の給与や社会保険の待遇、解雇について解説

※この記事は6分30秒で読めます。
「試用期間ってどのような期間?」
「試用期間中の待遇について知りたい」
など、試用期間に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
試用期間とは社員としての適性や能力を見極める期間のことで、試用期間後に雇用する側・される側の双方が合意すれば正式雇用に移行する流れです。
今回は、試用期間の概要、使用期間について確認すべきこと、試用期間終了後の働き方などを解説します。この記事を読めば、試用期間のことがよくわかり、試用期間ありの企業に安心して応募できるようになります。
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1.試用期間とは?
試用期間とは、採用した社員が自社で働く適性や能力を持っているのかを見極めるために企業が設定する期間です。
正社員を採用するにあたっては、書類選考や面接を実施しても、それで転職希望者の適性や能力をすべて見抜けるわけではありません。
そのため、入社後の試用期間を活用して転職者の能力を正確に把握し、期間終了後に本採用に移行するのが一般的な流れです。
試用期間は法律的には必須ではなく、6ヵ月や3ヵ月など、期間は企業によってまったく異なります。
なお、試用期間は採用選考中の期間ではありません。すでに雇用契約が成立しており、正社員の契約と同様に就業規則の確認や雇用契約書の取り交わしなどをおこないます。
2.試用期間と似ている言葉との違い
試用期間に似た言葉はいくつかありますが、それぞれ意味が異なります。ここでは、それぞれの言葉の目的や意味について見ていきます。
2-1.研修期間
研修期間とは、1人で仕事ができるようになるために現場でトレーニングを積む期間のことです。
先輩について仕事を見て学んだり、自分が実際に仕事をしながら指導を受けたりすること(OJT)などがこれにあたります。試用期間との違いは以下のとおりです。
- 試用期間…企業の採用に関するお試しの期間
- 研修期間…業務遂行を目的にした勉強の期間
場合によっては研修期間と試用期間が重なることもあり、研修期間を終えても試用期間は続くということもあります。
2-2.仮採用
仮採用は試用期間と同じような意味で使われることもありますが、採用そのものが仮決定である、という意味で使われることが多い言葉です。
試用期間はすでに雇用契約が正式に結ばれており、この点で違いがあります。
2-3.見習い期間
見習い期間は、研修期間と同じような言葉です。業務に必要なスキルや知識を身につけるため、上司や先輩の仕事を見て学び自分のものにする期間を指します。
試用期間を超えて正社員として採用された場合でも、スキルが身につかないうちは見習いとして仕事をすることもあります。
2-4.トライアル雇用
トライアル雇用は厚生労働省が提供する制度で、以下のように定義されています。
職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3か月間試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしていただくことを目的とした制度です。労働者と企業がお互いを理解した上で無期雇用へ移行することができるため、ミスマッチを防ぐことができます。
トライアル雇用は試用期間と異なり本採用が前提ではないため、トライアル雇用の終了時にそのまま雇用関係が修了する可能性もあります。
2-5.インターン
インターンは、学生や社会人が業界研究に活用したり社会経験を得たりする目的で企業の仕事を体験する活動のことです。
試用期間との違いは、継続雇用が前提であるか否かです。インターンの雇用契約は継続雇用を前提としておらず、定められた期間が終了すれば雇用契約は解除されます。
3.試用期間中の待遇について
試用期間がある企業で働く場合、気になるのは試用期間中の待遇でしょう。ここでは、試用期間中の給与や残業代、社会保険など、基本的な待遇についてご紹介します。
3-1.給与
試用期間中であっても、雇用契約が結ばれている以上、企業は労働者に給与を支払う義務があります。また、企業は試用期間中であっても最低時給を上回る給与を支給しなければなりません。
ただ、企業ごとに試用期間中の給与設定は異なります。試用期間中でも本採用後と同じ金額の給与を受け取れる企業がある一方、試用期間中の給与が本採用後の給与より低めに設定されている企業もあります。
なお、試用期間中でも企業から労働者に残業を命じることは可能で、残業した時間に応じて残業代が支給されます。
3-2.社会保険
試用期間中であっても、入社初日から社会保険に加入する義務が生じます。「まだ本採用ではないから」という理由で社会保険への加入を先延ばしにはできません。
企業側も、採用した社員が社会保険の被保険者になる法的な要件を満たしている場合、試用期間中でも資格取得の手続きをおこなう義務があります。
なお、社会保険には健康保険・厚生年金保険だけでなく、労災保険や雇用保険も含まれます。労災保険は1日限りのアルバイトであっても保険給付の対象であり、試用期間中の社員であっても雇用主は所定の手続きをする必要があります。
4.働く前に試用期間について確認すべきこと
試用期間がある企業に入社する場合は、必ず試用期間の雇用契約を確認しましょう。試用期間中の労働条件が本採用後と異なる場合もあります。
本採用時と待遇に違いがあるのか、あるとすればどのように異なるのか、福利厚生や休日、業務内容などがどうなっているかなど、働き始めてからトラブルにならないよう最初に確認しておきます。
なお、試用期間中であることを理由に残業代が支払われなかったり、社会保険に加入できなかったりするのは違法です。企業が適切な対応をしてくれない場合、ハローワークや年金事務所などに相談しましょう。
5.試用期間が終了したあとの働き方
試用期間が終了したあとは本採用を受けるのが原則的な考えですが、場合によっては試用期間の延長という可能性もあります。ここでは、試用期間が終了したあとの働き方について詳しく解説します。
5-1.本採用になる
試用期間が終了したあとは、そのまま本採用として同じ業務で働き続けることが一般的です。本採用後の待遇が試用期間と異なる場合は新たに労働条件が提示されるので、目を通しておきましょう。
試用期間が終わる際に、「試用期間が終わり、○月○日付で本採用になる」という旨の書類にサインをする可能性もあります。
5-2.試用期間を延長する
試用期間は一般的に3~6ヵ月の範囲で決められることが多いですが、入社した全員が同じ期間で終了するとは限りません。
就業規則に延長の可能性について記載があったり、延長の可能性があることを事前に伝えられていたりした場合は、試用期間が延長されることもあります。
試用期間が延長される理由はさまざまですが、以下のような場合は延長がおこなわれる可能性があります。
- もう少し仕事ぶりをチェックしたいと企業側が判断した
- 病気・ケガが原因で試用期間中に十分な出勤日数にならなかった
- 別部署のほうが向いている可能性があると上司が判断した など
なお、試用期間の延長は雇う側・雇われる側の合意があれば成立するため、試用期間中の社員側から申し出ることも可能です。
6.試用期間中に解雇されることはある?
企業側は、仕事ぶりが気に入らないなどの理由があったとしても、試用期間中にいつでも解雇できるわけではありません。企業が従業員を解雇するには、試用期間であっても正当な理由が必要です。
しかし、客観的な視点からみて合理性がある理由の場合は、解雇される可能性があります。解雇の原因は人によってさまざまですが、以下のようなケースが一例です。
- 出席率が低いなど、勤怠に問題がある
- 健康状態が悪く、会社が求める働き方ができない
- 業務で求められるレベルに能力が達していない など
7.もし試用期間中に退職したくなったら
試用期間中であっても、社員が退職を選択することは可能です。ただし、試用期間だからといっていつでも自由に退職はできません。
試用期間中に退職する場合でも、労働基準法の「退職日の2週間前までに退職の意思を会社側に伝えること(民法第627条1項)」を守る必要があります。
また、企業の就業規則では「退職は1ヵ月前までに申し出る」などの規定が定められているケースもあるため、退職の時期に関しては企業側とよく相談しましょう。
ここでは、試用期間中に退職を決意した場合の流れをご紹介します。
7-1.直属の上司に退職の意思を伝える
入社したあとに「思っていた仕事と違う」「人間関係が良くないと気付いた」などの理由で退職を決意した場合、まずは退職の意思について直属の上司に相談しましょう。
事前に面談の時間を設定してもらい、直接口頭で退職の意思を伝えることが重要です。
退職理由の伝え方については以下の記事も参考にしてみてください。
7-2.退職届を提出する
退職の意思を伝えて受理されたあとは、正式な退職日を打ち合わせで決定し、直属の上司に退職届を提出します。退職届が受理されて14日後には法的には雇用関係が終了します。受理されたあとは原則撤回できません。
退職届は企業ごとに独自のフォーマットが指定されている場合もあるため、事前に提出用の用紙がないかを確認しておくと手続きがスムーズに進みます。
退職届の書き方は以下の記事を参考にしてください。
7-3.業務の引き継ぎをおこなう
試用期間は企業と労働者双方のお試し期間であり、そこまで重要な仕事は任されないのが一般的です。上司の仕事のフォローに入ったり、単純作業を任されたりするケースが多いでしょう。
人によっては、その人しかできない仕事を任されているケースもありますが、担当する仕事の内容に関係なく、円満退職のためにも引き継ぎはしっかりとおこなっておきましょう。
新しい担当者に直接引き継ぐだけでなく、業務内容の一覧を上司に渡すなどしておくと丁寧です。
8.試用期間中に退職すると次の転職に不利になる?
一般的に早期退職は採用担当者からの印象が良くありません。「うちに入ってもまた早期に退職してしまうのでは?」という不安を与えてしまうためです。
次の転職活動に影響しないためには、前向きな退職だったと採用担当者にアピールすることが大切になります。社風が合わない、人間関係が悪いなどの理由は単なる愚痴とも取れ、低評価につながる可能性があるので注意が必要です。
愚痴で終わらず、以下のような前向きな表現に言い換えれば、さほど不利にならずに採用選考を受けられるでしょう。
- 希望した部署とは違う部署での配属になったが、自分の性格や長所を考えると希望した部署で働きたい気持ちが強かった
- 前の会社は保守的な社風だったため、お客様のためにどんどん改善提案ができる風通しの良い社風の企業で働きたいと思った
きちんとした退職理由と志望動機を話せるほうが、早く内定を得られる可能性が高くなるでしょう。
9.試用期間に関するよくある質問
最後に、試用期間に関してよくある質問とその回答をまとめました。
9-1.試用期間中にトラブルが起きたらどうすれば良い?
試用期間中にトラブルに見舞われた場合、周囲に相談することが第一ですが、トラブルの内容によって相談する場所が変わります。仕事内容や従業員同士の人間関係の場合、直属の上司や人事部などの相談窓口に相談しましょう。
一方、会社が残業代を支給してくれない、法律の定めを超える長時間労働を強いられているなど、会社とのトラブルが生じている場合、労働基準監督署やハローワークなど社外の専門機関に相談しましょう。
9-2.試用期間中によくある退職理由は?
試用期間中に退職したいと思う原因は人それぞれ異なりますが、一般的には以下のような理由で退職を決意することが多いようです。
- 想像していた業務内容とは違った
- 会社の社風や雰囲気になじめない
- 職場の人間関係が良くない
- 親の介護などの家庭の事情で続けられなくなった
など
9-3.試用期間に退職しても職歴に書いて良い?
試用期間に退職した場合でも、履歴書や職務経歴書に職歴として記載しましょう。
試用期間中に社会保険に加入していると、加入履歴で試用期間に退職した事実が面接先の企業に伝わる可能性もあります。
面接では早期退職の理由を聞かれるため、しっかりと退職理由を説明できることが大切です。早期退職の理由が前向きなものであれば、あまり不利にはなりません。
9-4.試用期間中の働き方で注意することある?
試用期間は企業にとっても労働者にとってもお試しの期間ではありますが、気を抜かずに意欲的に仕事に取り組むことが大切です。
企業側は試用期間だからといっても簡単には解雇できませんが、勤務態度が悪いと雇用契約が終了になる可能性もあります。遅刻や無断欠席などは絶対にせず、本採用の正社員と同様に協調性のある仕事を続けましょう。
まじめに仕事に取り組むことでスキルや知識をいち早く吸収することができ、部署内での評価が高くなって、早期に試用期間を終了させることもできるでしょう。
10.まとめ
試用期間は本採用を前提としたお試し期間です。しかし、試用期間だからといって企業側は簡単には解雇できません。だからといって欠勤が多かったり勤務態度が不真面目だったりすると、企業が本採用に合意してくれない可能性もあります。
試用期間であっても会社の従業員であることに変わりはありません。その立場にふさわしい節度と熱意をもって仕事に臨みましょう。
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