NC旋盤とは?種類やできること、扱う仕事や役立つ資格を解説
※この記事は4分30秒で読めます。
「NC旋盤ってどのような機械?」
「NC旋盤を使う仕事の内容を知りたい」
など、NC旋盤に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
NC旋盤は、汎用旋盤(普通旋盤)の作業を自動化でき、手作業では難しい精密な形状を大量生産できる特徴があります。
今回は、NC旋盤の概要、NC旋盤を使った仕事内容、NC旋盤の種類、NC旋盤を扱う仕事などを解説します。この記事を読めばNC旋盤のことがよくわかり、NC旋盤を使った仕事をイメージできるようになります。
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1.NC旋盤とは?
NC旋盤は、それまで人間の手でおこなっていた操作を、コンピュータによる数値制御で可能にした工作機械です。
そもそも旋盤は、円柱状の加工材料を回転させて刃物を押し当て、不要な部分を削って目的の形状に整えていく機械を指しますが、NC旋盤は数値制御を活用して、事前設定されたとおりに自動的に加工がおこなわれます。
NC旋盤の基本的な構成は以下のとおりです。
- チャック:工作物をつかんで回転させる「チャック」を取りつける。
- 刃物台:切削用の工具を取りつける。刃物台の形状によって「クシ刃型」「タレット型」などがある。
- センタ:加工する対象物を支えるための保持工具。
- 心押台(しんおしだい):センタを取りつける台座。
- 振れ止め:加工物(ワーク)の揺れを止めるための治具。
1-1.NC旋盤と普通旋盤の違い
コンピュータによるプログラムで操作をするNC旋盤に対し、人の手でハンドルやレバーを動かして操作する旋盤は「普通旋盤」や「汎用旋盤」と呼ばれます。
汎用旋盤は人の手で操作するため、試作品やオーダーメイドなど単品の加工や、修正加工などに向いている特徴があります。一方、曲面や複雑な形状を大量に生産するのには不向きです。
NC旋盤は、加工位置や回転速度などの細かな制御をコンピュータでおこなうことで、汎用旋盤よりも高精度かつ高速で大量生産する場面に向いています。
1-2.NC旋盤とCNC旋盤の違い
CNC旋盤とは、コンピュータによる数値制御をおこなう旋盤のことです。
NC旋盤が開発された当初は、プログラムの制御を基板ごとの動作の組み合わせによっておこなっていました。そのあとに制御用コンピュータが機械に内蔵されるようになり、それをNC旋盤と区別してCNC旋盤と呼ぶようになりました。
現在はコンピュータによる制御が主流になっているため、CNCとNCを呼び分ける必要がなくなり、NC旋盤=CNC旋盤であることが多くなっています。
1-3.NC旋盤とマシニングセンタの違い
マシニングセンタとは、自動工具交換装置がついたNCフライス盤のことです。NC旋盤は、工作物を回転させて刃物に押し当てて加工する点に違いがあります。
また、工具の交換方法についても、マシニングセンタでは自動工具交換装置でおこなうのに対し、NC旋盤では刃物台に複数の工具を装着し、回転やスライドをさせることで交換します。
2.NC旋盤ができること
コンピュータによる制御をおこなう点を除き、NC旋盤でできることは一般的な汎用旋盤と変わりません。外径加工、内径加工、ねじ切り、溝加工、穴加工、突っ切りなど、さまざまな切削に対応しています。
- 外径加工:回転している工作物の外側に刃を当てて外径を削ったり、表面を整えたりする加工
- 内径加工:パイプのような円柱状の製品の内側を削ったり、内側の表面を整えたりする加工
- ねじ切り:ねじのピッチ(ねじ山)を作る加工
- 溝加工:素材の一部分を凹ませてさまざまな幅や深さの溝を作る加工
- 穴加工:回転するドリルで素材に穴をあける加工
- 突っ切り:素材を加工したあと、製品になる部分を切り落とす加工
3.NC旋盤の種類
ひとくちにNC旋盤といっても、その種類によって特徴や用途はさまざまです。ここではNC旋盤の主な種類、特徴、役割について表にまとめました。
種類 | よみ | 特徴 | できること |
---|---|---|---|
NC立旋盤 | たてせんばん | 軸(ワークの回転軸)が縦向き | 重たい大型材料でも安定して加工できる |
NC正面旋盤 | しょうめんせんばん | 主軸が作業者の「正面」を向く | 直径が大きく長さが短い製品の加工ができる |
NC単能機 | たんのうき | 1つの工程に特化している | シンプルな構造なので低コストかつメンテナンス性が高い |
NCロール旋盤 | ろーるせんばん | 大きな円筒ワークを旋削(せんさく)する | 発電機の大型シャフトやタービン向け |
NC車輪旋盤 | しゃりんせんばん | 鉄道車輪を削るための旋盤 | 車輪の外周加工、摩耗の修理など |
NC倣旋盤 | ならいせんばん | 倣い(ならい)加工の機能を搭載したNC旋盤 | 倣い装置でトレースして加工する加工 |
NCタレット旋盤 | たれっとせんばん | 旋回式の刃物台(タレット)を搭載したNC旋盤 | タレットに装着された複数の刃物を順番に使うことで穴あけやねじ切りの連続加工ができる |
NC自動旋盤 | じどうせんばん | 加工物(ワーク)脱着が自動化したNC旋盤 | 作業者による加工物(ワーク)の着脱が不要になる |
同じ形の小型部品を大量生産するのには、NC自動旋盤が向いています。
NC自動旋盤は、供給する素材によって棒材加工用と素材加工用に分かれており、棒材加工では素材の「送り」、タレット旋回、主軸回転の正逆などを自動化できます。
素材加工では素材を自動で供給できる装置を備えており、工作物の取り外しを自動化できます。
4.NC旋盤を扱う仕事
NC旋盤工の仕事には、主に以下の2つがあります。
- 機械に正しい指示を出す「プログラミング」
- プログラムどおりに機械が動いているか、製品の品質を確認する「オペレーティング」
プログラミングとは、工作機械に作業内容を入力する業務であり、図面の形状から決めた治具や工具に対して、回転方向・回転数・切削速度などの条件を指定します。処理が終われば、加工の終了指令を出すような設定もおこないます。
オペレーティングは、プログラムどおりに機械が作動しているか、製品が仕様どおりにできているかを確認するのが主な作業です。機械に異常を感じたときは、不良品の生産を防ぐために機械を止め、メンテナンスや修理の手配までおこないます。
5.NC旋盤を扱う仕事に役立つ資格
金属加工の専門家としてNC旋盤の技術力を客観的に証明できる資格が、機械加工技能士です。
金属などを切削したり研磨したりして、形を整える機械加工の技術を証明する国家資格として知られています。旋盤の種類ごとに試験があるので、自分が扱う機械を選択して受験することになります。
機械加工技能士の資格のなかでも、NC旋盤工に関係するのは数値制御旋盤の資格です。 等級が特級、1〜3級に分かれており、級ごとに求められる実務経験が異なります。必要な経験年数は以下のとおりです。
等級 |
実務経験 |
---|---|
特級 |
1級合格後5年以上 |
1級 |
7年以上 |
2級 |
2年以上 |
3級 |
不問 |
-
参照:資格概要(技能検定・機械加工)
https://www.jtex.ac.jp/user_data/nq01_g03
客観的に技術力を証明できる資格を持てば、仕事に自信が持てるだけでなく、昇進などキャリアアップにもつながるでしょう。
6.まとめ
NC旋盤は、人の手作業では加工が難しい複雑な形状の製品を大量に生産するときに特に力を発揮します。
しかし、すべてが自動でおこなわれるわけではなく、旋盤にプログラムで命令を下すプログラミングや、命令どおりに作業が進んでいるかをチェックし、必要に応じてメンテナンスをするオペレーティングは人の手によっておこなわれます。
加工物の材質や形状に合わせたプログラミングをおこなうには、オペレーターの高い技術力や知識が必要になります。
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