治具設計とは?未経験でもできる?目的や流れ、仕事例を紹介
※この記事は4分で読めます。
「治具設計ってどのような仕事?」
「治具設計として働ける企業が知りたい」
など、治具設計に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
治具設計は、加工する対象物を固定するなどして加工を補助する治具を設計する工程のことで、製造業の作業効率化に大きく貢献できる仕事です。
今回は、治具の概要、治具設計の目的、治具設計の流れ、仕事の例などを解説します。この記事を読めば治具設計のことがよくわかり、転職活動の参考にできます。
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1.治具とは?
治具とは、加工する対象(ワーク)を固定して加工の案内をしてくれる補助的なツールのことです。治具を利用することで加工物の固定や位置決めが容易になり、品質の向上と均一化が実現します。
ひとくちで治具といってもその種類は多く、用途に合わせて以下の10種類に分かれます。
治具の種類 | 用途 |
---|---|
切断治具 | 加工物を決められた角度やサイズに切断するように固定する治具 |
曲げ治具 | 板金などを曲げるために受具と押し付け具がセットになった治具 |
熱処理治具 | 1,000度を超える高温にも耐えられる固定用治具 |
溶接・溶着治具 | ワーク同士の溶接や溶着の際に使われる治具 |
組立治具 | 部品を正しい位置に置いて固定し、スムーズに組み立てるための治具 |
めっき治具 | めっき処理の際に液体のなかで加工物を固定する治具 |
塗装治具 | 指定の方法で塗装ができるように補助をするための治具 |
検査治具 | 検査時に加工物を固定するための治具 |
挿入治具 | 加工物をパーツに挿入する際の作業者にかかる負担を軽減するために使う治具 |
引抜治具 | 台座に固定して部品を外す際に用いる治具 |
治具を用いることで、初心者でもベテラン社員と同じ品質の製品を作ることが可能となるため、製品の均一化を目指す製造業の多くの現場で採用されています。
2.治具設計の目的
製造業で治具を導入する目的には、以下のようなものがあります。
- 加工時間を短縮する
- 加工の精度を高めて不良品の発生を予防する
- 誰でも同じ品質の商品を作れるようにする
ベテラン作業員でなくても一定品質の製品を製作することが可能となり、1つの治具で複数の工程に対応できることで作業効率も向上します。加えて、人的ミスや不良品の発生を抑えられるため原材料を余すところなく使え、結果としてコストカットにも役立ちます。
3.治具設計の流れ
主な治具の種類は前述のとおりですが、治具ごとの細かな仕様は企業によってさまざまです。治具を製作する工場では、以下の手順に沿って顧客の希望に沿った治具を製作していきます。
3-1.顧客の要望を聞く
もっとも重要な工程の1つが、顧客のヒアリングです。顧客が持参した仕様書や聞き取った要望から治具を設計・製作します。
認識に相違があると希望する治具が製作できないため、事前に加工する対象物や加工物の図面、治具の仕様を顧客と自社の担当者で共有することが大切です。
3-2.見積もりを作成する
顧客の要望どおりの治具を製作するために必要な費用の見積もる工程です。製作する治具の材料費、加工費、設計費に、仕様書作成の費用などが上乗せされた見積もりを作成して顧客に提出します。
3-3.治具を設計する
顧客が見積もりを確認し正式に発注が入ったら、治具設計に移ります。設計された治具が顧客の仕様書の内容をカバーしていることが確認されたあとで、治具の作成に入る流れです。
3-4.加工および製作をする
設計図と仕様書の整合性が取れたら、治具の加工・製作に入ります。
治具を構成する部品を製造し、品質検査や寸法公差(サイズ公差ともいう。許容できる誤差範囲を指示すること)のチェックなどの検査と試運転をしたうえで、問題がなければ納品します。
4.治具設計のポイント
治具設計でミスが発生すると正確な位置や角度を保った状態で加工物を固定できず、クレームのもとになります。そうしたことのないよう、以下の4つのポイントに注意して作業することが必要です。
4-1.ヒアリングは漏れがないようにする
治具設計には納品までさまざまな工程がありますが、なかでも重要な工程がヒアリングです。ここで聞き漏らしや聞き間違いがあると、顧客が希望する治具が納品できません。
実際に現場でどのような課題が発生しているか、治具にどのような機能を持たせたいかはもちろん、寸法公差などの仕様書を両社間で事前に共有することが重要となります。
4-2.同じ位置に固定されるように位置決めをする
治具を製作する際は、何度使っても同じ位置に固定されるように位置決めをすることが大切です。
加工設備に治具を設置するたびに位置調整をすると作業が非効率になり、コストカットの目標が遠のいてしまいます。
設備と治具のあいだにピンを差し込む構造にするなど、誰がやっても同じ位置に治具を固定できる構造にすることが重要です。
4-3.治具へのラベリングをおこなう
治具には見た目が似ているものが多くあり、間違った治具を使用してしまうと必要とされる製品を製作できません。それを避けるため、治具を製作する際にはレーザーなどを用いてラベリングをおこないます。
ラベリングは個人で工夫する仕事ではありませんが、万が一今の職場や転職先でラベリングがおこなわれていなければ導入を提案しましょう。
5.治具設計の仕事例
ここからは、実際の求人を参考に、どのような治具設計の仕事があるかをご紹介します。
5-1.機械加工
汎用加工機などを使った機械加工業では、金型製作と並行して金属治具の設計・製作が業務に含まれる場合があります。
機械加工業の主な仕事内容は、成型用の金型加工や修正作業、金属治具の設計・製作、真空成型機の操作などに付随する業務などです。
5-2.機械設計
機械設計の仕事のなかでも、ロボットを利用した機械システムの導入提案や設計をおこなう会社で治具の設計が業務に含まれることがあります。
自動車製造における省力化機械の製造などの現場で、治具設計・組付けといった仕事を見つけることが可能です。
機械設計の会社には、自動車部品生産設備装置における2D設計図や3Dデータの設計業務など、治具以外にも専門的な業務が多数あります。
5-3.生産技術
自動車やバイクの金属部品を扱う金属加工会社の生産技術職の仕事の1つに治具設計があります。
エンジン部品、変速機部品、ブレーキ部品、電子機器部品といった自動車部品の製造において、3D CADを用いた治具設計や金型設計が仕事に含まれます。
6.治具設計の仕事は未経験でもできる?
治具設計の仕事では3DCADの実務経験が問われるケースもありますが、未経験でOKという求人も少なくありません。
未経験で入社した場合は、生産技術や開発部門などのアシスタントとしてキャリアがスタートします。アシスタントの仕事を通じて経験を積み、3D CADの操作ができるようになれば、将来的に治具設計の仕事に就くことが可能です。
7.まとめ
治具は工場で効率的に製品を加工するために必要不可欠なものであり、それを生み出す治具設計の仕事も安定した需要が見込めます。手に職をつけて長く働きたい方に治具設計の仕事はおすすめです。
未経験でも転職は可能ですが、3DCADなど業界に関係する資格を身につけることで転職の成功率は大きく上がります。興味があれば今のうちに資格取得にチャレンジしましょう。
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