植物工場とは?仕事内容や向いている人の特徴、将来性を解説
※この記事は4分30秒で読めます。
「植物工場にはどのような仕事がある?」
「植物工場の将来性が知りたい」
など、植物工場に関して興味や疑問を持っている方もいるでしょう。
植物工場とは、人工的に水・光・二酸化炭素などを管理して作物を栽培する工場のことで、気候や土地の性質に左右されずに一定数の植物を栽培できます。
今回は、植物工場の概要と種類、植物工場の仕事内容、植物工場で働くためのポイントなどを解説します。この記事を読めば、植物工場のことがよくわかり、転職活動の参考にできます。
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1.植物工場とは?
植物工場は、工場などの施設内で植物の生育環境を制御し、野菜などを計画的に生産する工場のことです。
温度・湿度・二酸化炭素などを複数のセンサーを使ってモニタリングし、それらの数値を適正に制御することで、季節や気候に関係なく農産物を収穫できる点が特徴です。
従来の農業とは違って土を使わないことで、野菜に付着する菌が少なく、農薬を一切使わずに栽培することも可能です。
植物工場で栽培できる主な品目は、葉物野菜と一部の果菜類です。レタス、ケール、パクチー、ミニトマトなどが栽培できます。一方、土のなかで生育するタイプの根菜類や芋類は、生育には向いていません。
2.植物工場の種類
植物工場は、「完全人工光型」「太陽光利用型」「併用型」に分かれます。ここでは3つの違いや特徴について解説します。
2-1.完全人工光型
完全人工光型とは、人工光のみを使って植物を育てる工場です。小松菜、リーフレタスやサラダ菜などの小型な葉菜類が主に作られています。
完全人工光型では、閉鎖環境で太陽の光を用いず、LEDライトのみで周年・計画栽培を実施します。
外気を完全に遮断できることで害虫の侵入を防げること、土を使わないため無農薬栽培ができること、段式栽培による省スペース生育が実現できることがメリットです。
一方、初期費用が高額になることや、太陽光利用型より光熱費がかかるというデメリットもあります。
2-2.太陽光利用型
太陽光利用型は、温室など半閉鎖の環境を利用して、太陽の光を活用しながら栽培をおこなう方法です。人工光源のみではコスト面で実現が難しいトマトやイチゴなどの果菜類が栽培できます。
太陽光利用型は、雨天・曇天時でも人工光による補光をおこないません。太陽の光を利用することで光熱費が抑えられ、完全人工光型よりも初期費用が安く抑えられる点がメリットです。
一方で、温度管理が難しい、虫の侵入の可能性が高まる、平面栽培しかできないこともあるといったデメリットもあります。
2-3.併用型
併用型は、完全人工光型と太陽光利用型を併用した施設です。温室など半閉鎖の環境を利用して太陽の光を活用しながら、雨天・曇天時に補光としてLEDライトを利用します。
栽培できる品目としては、レタスを始めとした葉菜のほか、果菜類、ハーブ、花きなど、ほかの2種類に比べてバランスよく生育できます。
3.植物工場の主な仕事内容
植物工場での主な仕事は、工場内で生産される野菜の栽培、管理、収穫です。そのほか、工場の衛生検査や栽培に必要な機器のメンテナンスを担当することもあるでしょう。
ここでは、植物工場の主な仕事内容について解説します。
3-1.作物の栽培管理や収穫
栽培管理の仕事では、以下のような業務を担当することになります。
- 育苗室で種子を発芽させる
- 育った苗を栽培室に移動する。培養液を与えて生育を促す
- 室内の光量・温度、培養液の温度と湿度が適正になるように管理する
収穫後の野菜は、選別機にかけて重量や形、色合い、糖度などによって分けたうえで、袋づめ、もしくは箱詰めをして出荷されます。
3-2.工場の温湿度・光量の管理
植物工場では、野菜や苗などの作物を、光や温度、湿度、二酸化炭素濃度などの環境条件を人工的に制御して自動的に連続生産をおこないます。
ハウスの奥行や畝幅(うねはば)、株間(かぶま)などを考慮して設定された適正値があるため、その適正値の範囲内で栽培できるような調整をおこないます。
3-3.工場内の衛生検査
密閉された空間であっても細菌が侵入する可能性はあるため、必要に応じて衛生検査をおこなうことも大切です。
特に、人工光型の植物工場では細菌を持ちこませないための安全・衛生ガイドラインが用意されており、そのガイドラインを守った丁寧な仕事が求められます。
例えば、定期確認項目には、従業員の健康診断や検便の実施と記録、日々の確認として体温測定や健康チェックなどの記録が定められています。
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参照:JPFIA|人工光型植物工場における安全・衛生ガイドライン
https://jpfia.org/guideline/files/download/JPFIA_anzeneiseiGuidelineVer2_2110.pdf
3-4.機器の管理や保守・メンテナンス
栽培に関連する機器の管理や保守・メンテナンスも、植物工場で働く人の重要な仕事です。例えば、送風機を含む空調機に関して、プレフィルターの定期メンテナンスを実施します。
メンテナンスに用いるパーツ類の整理整頓、および在庫が少ない場合の担当者への発注依頼、劣化部分があれば部分的に補修をおこなうなどの業務もあります。
4.植物工場で働くには?
植物工場で働く場合、専門的な知識や経験は必要ありません。製造工場と同様に作業のガイドラインやマニュアルがあるため、それに沿って作業をすることで未経験でも働けます。しばらく正社員から離れていた人が働くことももちろん可能です。
また、工場での実地研修やセミナーを受講し、知識や技術を身につけて入職するケースもあります。
4-1.必要な資格
植物工場に転職・就職するにあたっては、農業・園芸系の高校・専門学校を卒業していたり、大学で農学を専攻していたりする人が有利です。しかしながら、そのような専門的な知識がなくても就職・転職は可能です。
もっとも大切なのは植物を育てる仕事に打ち込めることであり、学歴や資格は必須ではありません。
4-2.向いている人の特徴
植物工場の仕事に向いている人の特徴には、主に以下の2つがあります。
- 農業への興味関心がある
- マニュアルに沿って丁寧に作業できる
4-1-1.農業への興味関心がある
農業に関心がある人は、植物工場の仕事に向いています。
また、育苗、栽培、収穫とさまざまな仕事に携わるため、そもそも「生き物が好き」「植物を栽培するのが好き」という人に向いています。
4-1-2.マニュアルに沿って丁寧に作業できる
植物工場の仕事はマニュアルがしっかりと作られており、マニュアルに沿った作業を正確におこなうことが求められます。
マニュアル外の作業をしてしまうと、細菌が侵入したり外注が発生したりして、作物の品質が低下する原因となります。
自分で考えて働くクリエイティブな仕事よりも、マニュアルに従ってコツコツと働く製造業・工場への就職・転職を希望している人が、植物工場に向いているでしょう。
5.植物工場の将来性
近年の異常気象による農作物の供給不安や食料自給率の低下、農業就労人口の減少など、日本の農業を取り巻く環境は日々変化しています。
安定した作物の供給をおこなうために農業を工業化する企業も増えてきており、今後も植物工場は増える可能性があるでしょう。
現状は導入コストが高いために、一般的な露地栽培の野菜よりも値段が高いのが実情ですが、コストを抑えられれば需要の増加も期待できます。
また、5-1.気候や土地の性質に左右されずに栽培できるという特徴から、農業がおこなえない砂漠地帯や寒帯での需要も期待できます。世界的に不安視されている食糧危機に対する対策として世界に進出できれば、植物工場のニーズはさらに高まるでしょう。
これらの理由から、植物工場には十分に将来性があると考えられます。
6.まとめ
農家の減少による担い手不足や近年の異常気象により、今後はますます野菜の供給価格が高騰する可能性も考えられます。
一方、植物工場は外の気温や土地柄に関係なく、一定品質の作物を安定して栽培できる点が強みです。ロボット技術や情報通信技術を使ったスマート農業との相互利用が進むことで、今後もさらに需要が向上する可能性もあります。
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