半導体業界の特徴と今後の動向、主な職種の例と働く際のポイントを解説

※この記事は6分で読めます。
「半導体業界ってどのようなところ?」
「半導体業界にはどのような仕事があるのか知りたい」
など、半導体業界に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
半導体業界には、半導体を作るメーカー、製造装置を作るメーカー、商社などがあり、業態ごとに強みや特徴が異なります。
今回は、半導体業界の概要、現状や将来性、職種例などを解説します。この記事を読めば半導体業界のことがよくわかり、転職活動の参考にできます。
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1.半導体業界ってどんなところ?
半導体は、電気を通す金属のような「導体」と、ゴムのように電気を通さない「絶縁体」の中間の電気伝導率を持つ物質のことです。半導体に別の元素を含ませることで電気が通る性質を活かし、電気制御に活用されます。
より簡単にいえば、半導体は電気を制御するスイッチと覚えておくと良いでしょう。半導体が電気の流れを制御することで、モーターを動かしたり止めたりすることができるようになります。
半導体業界は、
- 半導体材料メーカー
- 半導体製造メーカー
- 半導体製造装置メーカー
- 半導体商社
などの企業によって形成されています。
半導体を作るには1,000以上の工程が必要とされており、さまざまな企業が半導体の製造や装置作成の事業を展開しています。
半導体についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
1-1.4つの専門分野
半導体に関連する企業は、1社ですべての分野・工程をカバーするのではなく、各企業が専門分野に特化した事業を展開しているケースが多くなっています。
具体的には、主に以下の4つの専門分野にわかれています。
- 半導体材料
- 半導体デバイス
- 半導体装置
- コンポーネント・部品
1-1-1.半導体材料
半導体材料は半導体を構成する材料のことで、代表的な材料はシリコンです。シリコン以外にも、セレン、ゲルマニウムなどの材料が使われるケースがあります。
半導体材料メーカーでは、これら半導体に必要な材料を次の工程を担う企業に提供します。
1-1-2.半導体デバイス
半導体デバイスとは、半導体の材料であるシリコンなどの基盤の上に、トランジスタ、ダイオードなどの素子を組み合わせた電子回路を形成して、チップ状に切り分けたものです。
メモリやマイコンといった集積回路のことを指します。
1-1-3.半導体装置
半導体装置は、半導体(集積回路)を製造するための装置のことです。
材料膜を形成する装置、材料膜を形状加工する装置、不純物を取り除く装置、組立用装置、検査装置などがあります。
1-1-4.コンポーネント・部品
コンポーネント・部品とは、半導体製造に欠かせない部品のことです。MFC(マスフローコントローラー)、流体制御、ポンプ、機械要素部品、ダイヤモンド工具などの種類があります。
MFCはマス(質量)の流量を制御する機器(質量流量計)のことで、プロセスガスと呼ばれる気体の高精度な流量制御が半導体製造工程には欠かせません。
ポンプは半導体製造に欠かせない真空のクリーンな環境を用意するためのもの、ダイヤモンド工具はウェーハ表面の研削に用いるなど、それぞれ半導体工程で重要な役割があります。
1-2.3つの業態
半導体業界は、半導体メーカー、各種機器メーカー、半導体商社の3つに分けられます。
1-2-1.半導体メーカー
半導体メーカーは、半導体そのものを製造するメーカーです。
原料メーカーから材料になるケイ素を調達し、ケイ素の塊を円柱状にしたものをスライスしてシリコンウェーハを作ります。シリコンウェーハが半導体装置メーカーの装置で加工されることで半導体が作られます。
1-2-2.各種機器メーカー
各種機器メーカーは、半導体を製造するための精密機械を製造するメーカーのことです。
半導体のもとになるシリコンウェーハを取り出す際には目に見えないくらい小さい回路を書き出す必要があり、この工程では寸分のミスも許されません。
- 薬品・超純水による洗浄
- ウェーハに電気を通さない膜を形成する
- 光やレーザーで回路を書き出す
各種機器メーカーでは上記のような工程に必要な装置を製造します。
1-2-3.半導体商社
半導体商社は、半導体メーカーから半導体を買い付け、電子部品メーカーや精密機器メーカーに販売する卸売業者です。半導体業界で生み出された製品を別の業界につなげる役割があります。
2.半導体業界の今と今後
半導体は現在、どの程度の需要があるのでしょうか。また、今後の需要はどう予想されているのでしょうか。
一般社団法人日本半導体製造装置協会によれば、
- 2023年はインフレの進行
- 政策金利の引き上げ
- ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰
などの理由から購買意欲が低下しており、パソコンやスマートフォンの需要がコロナ禍で一巡したこともあって、前年割れの見込みです。
一方、2024年以降はAI活用の拡大やデータセンター向けサーバーの新規・入替投資の拡大などを理由に成長するとしています。
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参照:一般社団法人日本半導体製造装置協会「2023年7月発表 半導体・FPD 製造装置 需要予測」
https://www.seaj.or.jp/file/seajforecastjuly202307_j%28forpress%29.pdf
2-1.半導体業界にはサイクルがある
半導体業界には、シリコンサイクルと呼ばれる景気循環があります。シリコンサイクルは、技術革新のペースが速い半導体業界で設備投資や在庫調整の難しさから生まれる需要の増加・減少のサイクルのことです。
メーカーは、数兆円にものぼる設備資金を回収するため、半導体の生産を長く続けようとしますが、需要が落ちると在庫過多による値崩れが発生します。
その後、技術革新などで需要が回復した際に新たに設備投資をし、1~2年後にまた需要が低迷するというサイクルが4年周期で発生するとされています。
2023年におけるシリコンサイクルは調整局面のサイクルにあったとされ、特に台湾や韓国では半導体の生産・輸出が前年比で大幅にマイナスとなっています。
ただし、先行指標や周期解析によれば、2024年春頃には回復局面に入るという見方もあります。
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参照:みずほリサーチ&テクノロジーズ「シリコンサイクルは漸く底打ち」
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/research/insight/2023/insight-as230710.html
2-2.今後も需要はあると考えられる
カナダに本社を有する技術情報サービス会社TechInsightによれば、2024年の半導体売上高は同10%増とプラスに転じる見込みです。
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参照:独立行政法人日本貿易振興機構「2023~2024年の世界半導体市場の見通しと米国の戦略」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2023/0501/f407d28bc70f206c.html
半導体はパソコンやスマートフォン、自動車などに組み込まれており、現代の生活には欠かすことができません。今後はAIや5Gなどの技術でも半導体が利用されることから、需要自体は大きく減らず安定して維持されると考えられます。
3.半導体業界の主な職種例
続いて、半導体業界の主な職種例を見ていきましょう。半導体業界には、大きく分けて設計・研究開発、評価および検証、製品資材などの調達、営業といった職種があります。
3-1.設計・研究開発
設計・研究開発は、半導体装置メーカーで半導体や半導体製図装置の設計・研究開発をおこなう職種です。
半導体の技術は日々進化しています。そのため、設計・研究開発の仕事では、最新技術を取り入れたり顧客のニーズに合わせた材質を選択したりと、常に高いアンテナを張る必要があります。
専門的な知識や技術力が要求される仕事ですが、世界中で必要とされる半導体を開発できるやりがいがあります。
以下の記事では、半導体製品製造技能士について詳しく解説しています。
3-2.評価および検証
半導体や半導体製造装置について、ハードやプロセスの評価・検証をおこなう仕事です。
製造フローの問題点を洗い出し、より高品質の製品を作れるよう改善点を探ることが大きな役割となります。
半導体に不具合がないか、製造装置を仕様どおり正確に製造できているかをチェックすることにより、本当に不具合が発生した際の対策を先回りで考えることができます。
正常な機能を持つ半導体を世の中に送り出すために不可欠な仕事であり、半導体業界を支えるという大きなやりがいが感じられるでしょう。
以下の記事では、半導体工場の仕事内容や転職需要などを詳しく解説しています。
3-3.製品資材などの調達
半導体を作るために必要な資材やツールを調達する仕事です。
ニーズに合う資材を仕入れるだけでなく、より高品質で低コストの資材を調達することで、会社の利益に大きく貢献できるやりがいがあります。
国内外からニーズを満たす資材を調達するため、世界中を飛び回ることもあるでしょう。
3-4.営業
半導体メーカーの営業部門として自社製品の営業をする仕事です。
半導体メーカーなら商社が、商社の営業なら電子機器メーカーや精密機器メーカーが主な顧客となります。
顧客ごとの希望や悩みごとを聞き、その悩みを解決できる半導体製品を提案することで売り上げに貢献します。営業経験がある方なら、商材が変わっても今までの仕事経験を活かせます。
加えて、販売した製品のアフターフォローも重要な仕事です。顧客の満足度を高めることで、新たな注文を受けられる可能性も高まります。
製造現場ではなくとも、半導体という先端技術やものづくりに携われること、会社の売り上げに直接貢献できることが営業の魅力です。
4.半導体業界で働く際のポイント
半導体業界を目指すなら、これからご紹介するポイントを把握したうえで、自身に合う企業を探しましょう。
4-1.業界の動向を知る
半導体業界に限った話ではありませんが、転職をする際は転職を希望する業界の将来性や現状について研究を進めておく必要があります。
業界研究を進めることで、給与水準はどうか、将来まで安定して働けるかがわかるようになります。
いま半導体業界で働いている方が同じ業界に転職する際も同様です。安定性や将来性をあらためて調べ、転職する先として自分に合っているかを確かめておきましょう。
4-2.各専門分野や業態ごとの特徴を知る
前述のとおり、ひとくちに半導体といっても、メーカー、製造装置メーカー、商社などさまざまな業態・職種があり、それぞれ特徴が異なります。
ものづくりに携わりたい方や専門的な知識を身につけたい方はメーカーに向いているかもしれません。一方、人と接することに抵抗がなく、半導体で企業の困りごとを解決したいと考える人なら、商社での仕事に向いているでしょう。
企業ごとの特徴や向いている人の特徴を考え、自分に合った業態への転職を目指しましょう。
4-3.未経験可の求人を探す
半導体業界では専門的な知識が求められる求人もありますが、異業種からの転職が不可能というわけではありません。
製造や営業などで業界未経験から働ける職種もありますので、半導体業界に転職することは十分に可能です。現場や営業として知識を身に付けたあと、他部署に異動という形でキャリアアップを狙うこともできるでしょう。
JOBPALでは面談サービスを提供しており、半導体業界で未経験可の求人をご紹介することも可能です。他業種からの転職を希望する際は、ぜひJOBPALの面談サービスをご利用ください。
5.まとめ
半導体業界は、時代によって多少の需要の変動はあるものの、今後も持続的な需要が見込まれる業界です。
半導体業界には、メーカー、製造装置メーカー、商社など、さまざまな業態がありますので、半導体業界を志す際はどの企業が何を強みにしているのかを知るための業界研究をしっかりと進めましょう。
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