工場の仕事図鑑
更新日:2023年08月24日

防火管理者になるには?働くメリットや向いている人、資格難易度を解説

防火管理者になるには?働くメリットや向いている人、資格難易度を解説

※この記事は6分30秒で読めます。

「防火管理者ってどのような仕事?」
「防火管理者として働くメリットが知りたい」
など、防火管理者に関して興味や疑問を持っている人もいるでしょう。

防火管理者は、不特定多数の人が集まる場所で起きる火災を未然に防ぐための管理をおこなう人です。人の命に関わる重要な役割を担います。

今回は、防火管理者の概要、配置基準、主な仕事内容、メリットや大変なこと、向いている人の特徴などを解説します。この記事を読めば防火管理者のことがよくわかり、転職活動の参考にできます。

1.防火管理者とは?

防火管理者とは、不特定多数の人が集まる施設などで、火事を未然に防ぐための管理をする人のことです。

消防法の第1章8条では、劇場や大規模店舗、集合住宅など、多くの人が集まる施設において、「建物の所有者などは防火管理者の資格を持つ人から防火管理者を選任し、防火管理業務をおこなわせなければいけない」と定めています。

2.防火管理者の配置基準は?

防火管理者が必要とされる建物では、すべてのテナントで防火管理者の選任が必要であり、配置基準には製造業の工場も含まれています。

【防火管理が必要な防火対象物】

1 火災発生時に自力で避難することが著しく困難な者が入所する社会福祉施設など(消防法施行令別表第一(6)項ロに掲げる防火対象物の用途)を含む防火対象物のうち、防火対象物全体の収容人員が10人以上のもの
2 劇場・飲食店・店舗・ホテル・病院など不特定多数の人が出入りする用途(特定用途)がある防火対象物を「特定用途の防火対象物」といい、そのうち、防火対象物全体の収容人員が30人以上のもの(前①を除く。)
3 共同住宅・学校・工場・倉庫・事務所などの用途(非特定用途)のみがある防火対象物を「非特定用途の防火対象物」といい、そのうち防火対象物全体の収容人員が50人以上のもの
4 新築工事中の建築物で収容人員が50人以上のもののうち、総務省令で定めるもの
5 建造中の旅客船で収容人員が50人以上のもののうち、総務省令で定めるもの
6 同一敷地内の屋外タンク貯蔵所または屋内貯蔵所で、その貯蔵する危険物の数量の合計が指定数量の1,000倍以上のもの
7 指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う防火対象物で、床面積の合計が1,500㎡以上のもの
8 50台以上の車両を収容する屋内駐車場
9 車両の停車場のうち、地階に乗降場を有するもの

なお、防火管理者には「甲種」と「乙種」があり、それぞれ配置基準が異なります。

2-1.甲種防火管理者

甲種防火管理者は、すべての施設で防火管理者になれる資格です。甲種を取得すれば、乙種防火管理者の資格も兼ねることができます。

2-2.乙種防火管理者

乙種防火管理者は、建物の用途や収容人数が比較的小規模な建物の防火管理者として選任される区分です。乙種を取得したあとに甲種の資格が必要になった場合、甲種の講習を受講し直す必要があります。

甲種・乙種の配置基準をまとめると以下のとおりです。

【防火対象物と防火管理者の資格区分】

用途 特定用途の防火対象物 非特定用途の防火対象物
(6)項ロの施設が入っている防火対象物 左記以外
防火対象物全体の収容人員と延べ面積 10人以上 30人以上 50人以上
すべて 300㎡以上 300㎡未満 500㎡以上 500㎡未満
防火対象物区分 甲種防火対象物 甲種防火対象物 乙種防火対象物 甲種防火対象物 乙種防火対象物
資格区分 甲種防火管理者 甲種防火管理者 甲種又は乙種防火管理者 甲種防火管理者 甲種又は乙種防火管理者

【テナントの防火管理者の資格区分】

区分 甲種防火対象物のテナント 乙種防火対象物のテナント
テナント部分の用途 特定用途 非特定用途 すべて
(6)項口 左記以外
テナント部分の収容人員 10人以上 10人未満 30人以上 30人未満 50人以上 50人未満 すべて
資格区分 甲種防火管理者 甲種又は乙種防火管理者 甲種防火管理者 甲種又は乙種防火管理者 甲種防火管理者 甲種又は乙種防火管理者 甲種又は乙種防火管理者

甲種防火対象物に入居するテナントなどのうち、以下は乙種防火管理者の区分です。

  • 不特定多数の人が出入りする収容人員が30人未満の物件
  • 事務所、倉庫などで収容人員が50人未満の物件
  • 自力避難困難者が入所する養護老人ホームなどで収容人員が10人未満の物件

3.防火管理者の主な仕事内容

ここからは、防火管理者の主な仕事内容について理解を深めていきましょう。防火管理者の仕事は主に以下の6つがあります。

3-1.消防計画の作成および見直し

消防計画とは、訓練の実施や消防設備の点検、使用の監督、火気の取扱いなど、防火管理のうえで必要になる業務について立てる計画のことです。

消防計画のテンプレートを用い、防火対象物をどのような人が利用しているかによって、柔軟に内容を考える必要があります。また、作成した内容を従業員が把握できるように周知徹底し、必要な知識を教育することも大切な仕事です。

なお、消防計画の届出は防火管理者の名前で届け出る必要があります。先に防火管理者を選任してからでなければ、消防計画を作成できても届け出ることができません。

3-2.消火・通報・避難訓練

特定防火対象物では、消火訓練と避難誘導訓練が年2回以上、通報訓練は年1回以上おこなわなければいけません(非特定防火対象物では年1回以上)。

なお、総合訓練(個別訓練を連携させて総合的におこなう訓練)をおこなうと、消火、避難誘導、通報の訓練を各1回おこなったことになります。

3-3.建物収容人員の管理

防火対象物ごとに収容人員が定められており、この収容人員を超えないように管理することも防火管理者の仕事です。

防火対象物の広さや避難施設の数と比べて過剰な人員を収容すると、万が一のときにパニックを起こす可能性があります。パニックを未然に防ぐために、収容人員が定員になった場合には入場制限をかけるなど、監視・監理が求められます。

3-4.消防設備や火気設備などの点検・整備

防火管理者の仕事の一つに「消防設備の点検・整備」があります。設備の点検整備は「消防設備士」または「消防設備士点検資格者」の業務であるため、防火管理者は有資格者への委託が主な仕事になります。

ただ、設備点検報告書には防火管理者の名前を記入する必要があります。設備に不具合が見つかった場合に、整備の現場に立って指揮を取るのも防火管理者の仕事です。

なお、訓練をおこなう場合には、事前に所轄の消防署への通知と書面による記録が必要です。

3-5.施設内での火気の使用と取扱いに関する監督

火気の使用と取扱いに関する監督には、一般的な火気管理のほか、喫煙の管理や制限、放火防止対策などがあります。

火を使用する設備・器具について、「周辺の可燃物がないか、または一定の距離が保たれているか」「燃料漏れがないか」「転倒防止措置が適正か」などがチェック対象です。

また、タバコは出火原因の多くを占めており、喫煙場所と禁煙場所を明確に分けて管理することが必要となります。

3-6.避難・防火上で必要な構造や設備の管理

万が一の出火の際に煙の拡散防止や延焼防止の役割を持つ防火設備や、すみやかに非難するための避難設備について、いざというときに使えるように毎日の点検をするのも防火管理者の仕事です。

防火施設としては、以下のような種類があります。

  • 防火区画:火災を部分的にとどめ、炎症や気振りの拡散を防止する区画
  • 防火戸・防火シャッター・ドレンチャー設備:防火区画の開口部に設置されるもの
  • 防火ダンパー:防火区画を貫通しているダクトを通じて延焼を防止させる遮断装置

4.防火管理者として働くメリット

防火管理者として働くメリットには、主に以下の3つがあります。

4-1.大きなやりがいを得られる

防火管理者として働くことのメリットの一つに、大きなやりがいを感じられることが挙げられます。

防火管理者の仕事は、防火設備の管理や消防訓練の実施など華やかなものではないかもしれませんが、火事などの有事の際に人々の命や財産を守る大切な役割があります。その役割が大きなモチベーションにつながるでしょう。

4-2.資格手当がつく

防火管理者として選任されるには、建物の大きさや収容人数などに応じて、甲種防火管理者か乙種防火管理者の資格を取得する必要があります。

企業によっては有資格者に資格手当を支給しているため、収入のアップにつながるでしょう。資格手当の金額は企業によってさまざまですが、月1,000円の資格手当を得られれば、年間で1万2千円の収入アップにつながります。

5.防火管理者の大変さ

防火管理者の仕事は大きなやりがいを感じられる一方、責任をともなう仕事でもあります。

防火訓練や設備点検、防災訓練は、人の命に直結する重要な仕事です。もし有事の際に機械が故障して動かなければ、大惨事につながる可能性もあります。

責任が重いことから、日々プレッシャーを感じながら仕事をすることになるかもしれません。

6.防火管理者になるには?

続いて、防火管理者資格の取得方法について解説します。

6-1.防火管理者の国家資格が必要

防火管理者になるには国家資格の取得が必要です。しかし、講習会を受講すれば資格を取得できるため、難易度が高いものではありません。

講習会に関しては、甲種・乙種のどちらの資格を取得するかによって、講習内容と所要時間が以下のように異なります。

  • 甲種:約10時間(2日間)の講習
  • 乙種:約5時間(1日間)の講習
講習種別 講習時間 講習内容
甲種新規講習 おおむね10時間(2日間講習) 防火管理の意義および制度火気管理、施設・設備の維持管理防火管理に係る訓練および教育防火管理に係る消防計画など
乙種講習 おおむね5時間(1日間講習) 上記の講習事項のうち、基礎的な知識および技能
甲種再講習 おおむね2時間(半日講習) 最近の法令改正の概要火災事例研究

なお、消防設備点検資格者(特殊・第1種・第2種)や自衛消防業務講習修了者であれば、甲種防火管理者を講習免除で取得できます。

講習の受講条件は「日本語を理解できる中学卒業程度以上の学力を有する者」です。消防職員の経験や大学での単位取得などの要件はありません。

6-2.防火管理者に選任される要件とは?

防火管理者に選任されるためには、防火管理の知識や資格を有することが要件となります。具体的に選任されるための要件は以下のとおりです。

  • 防火管理業務を適切に遂行できる「管理的、監督的地位」にあること
  • 防火管理上必要な「知識・技能」を有していること

なお、管理的・監督的な地位であることは防火管理者に選任される際の要件ですが、防火管理者講習は管理責任者でない人も受講できます。

7.防火管理者に向いている人

防火管理者に向いている特徴には、主に以下の3つが挙げられます。

  • 責任感が強い
  • プレッシャーに強い
  • 周囲を良く見渡せる

防火管理者に興味がある人は、上記の項目が自分に当てはまるか考えてみると良いでしょう。

7-1.責任感が強い

防火管理者の仕事は、消防設備の点検、避難訓練、防災計画の作成など、すべてが人の命に直結した重要な仕事です。

責任感を持って間違いなく仕事をこなさないと、有事の際に人の命を危険にさらす可能性があります。責任感が強く、「施設利用者の命を守るのは自分だ」という強い気持ちを持っていなければ、その役割は務まらないでしょう。

7-2.プレッシャーに強い

防火管理者の仕事は人の命に関わる責任重大なものばかりです。「自分が点検したものに不具合があったらどうしよう……」というプレッシャーを感じることもあります。

そうしたプレッシャーも前向きにとらえ、平常心で仕事ができる人が防火管理者に向いています。

7-3.周囲をよく見渡せる

全体を俯瞰して見られる人、視野が広い人は、防火管理者に向いている傾向にあります。

防火管理者がおこなう仕事は多岐にわたり、一つでも見落としがあると大事故に直結する可能性があるためです。

8.まとめ

防火管理者は、工場や飲食店などでは選任が必須な資格です。資格を持っていることで重宝され、転職活動にも有利に働くことが期待できます。これから工場への転職を目指している人は、アピールできる資格の一つとして講習の受講を検討してみてはいかがでしょうか。

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