板金工になるには?仕事内容や役立つ資格、やりがいや向いている人を解説
※この記事は6分30秒で読めます。
「板金工ってどのような仕事?」
「板金工で働くのに有利な資格を知りたい」
など、板金工の仕事に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
板金工は、金属を曲げたり溶接したりして加工する技能を持つ職人のことで、金属を扱う工場や建設現場、自動車修理工場などで働くことができます。
今回は、板金工の概要、仕事内容や働く場所、向いている人の特徴などを解説します。この記事を読めば板金工のことがよくわかり、自身が働いている姿をイメージできるようになります。
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1.板金工とは?
板金とは、金属を加工する技術のことです。加工する金属の種類は、主に銅や鉄、アルミなどの薄い鉄板で、「溶接」「塗装」「曲げ加工」「取り付け」などの工程があります。
板金の仕事に従事する方のことを「板金工」と呼びます。ものづくりの現場ではなくてはならない重要な存在です。
2.板金工の仕事内容と働く場所
板金工として働く場所としては、大きく分けて以下の3つがあります。
- 自動車工場(自動車板金)
- 製造工場(工場板金)
- 建設現場(建築板金)
2-1.自動車板金
板金工の仕事内容としてもっともイメージしやすいのが「自動車板金」でしょう。事故などで曲がったり凹んだりした車体やパーツを、もとの形状に戻したり塗装を施したりして新車同様に復元させます。主な仕事場は、自動車整備工場、ディーラーなどです。
2-2.建築板金
建築板金は、建設現場で住宅の外壁や屋根などを施工する仕事です。外装や雨どいのほか、飲食店のダクトや調理台を作成することもあります。
建築板金のなかでも外観に関するものは、建物の美観に影響するため繊細な技量が要求されます。
2-3.工場板金
工場内で製造される部品にも、板金工のスキルが活かされます。薄い金属板のほか、「厚もの」と呼ばれる厚い鉄板を加工して、自動車や飛行機のボディ、日用品、空調設備まで、さまざまな工業製品が製造されます。
3.板金工の平均給与・年収
板金工の平均給や年収はどのくらいなのでしょうか。令和4年賃金構造基本統計調査に、板金従事者の給与の記載がありました。以下の表は、企業規模計(10人以上)をもとに作成しています。
年代 | 決まって支給する現金給与額 | 年間賞与その他特別給与額 |
---|---|---|
20~24歳 | 23万9,600円 | 34万7,900円 |
25~29歳 | 26万3,800円 | 46万9,800円 |
30~34歳 | 29万5千円 | 58万5,300円 |
35~39歳 | 31万4,300円 | 78万5,700円 |
40~44歳 | 33万7,100円 | 81万5,500円 |
45~49歳 | 35万6,400円 | 74万5,800円 |
50~54歳 | 33万400円 | 52万2,300円 |
50~59歳 | 34万9,900万円 | 65万8,200円 |
-
参考:政府統計の総合窓口|令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429&tclass1=000001202310
令和3年の平均年収は、男性が545万円、女性が302万円でした。月で換算すると男性が約45万円、女性が約25万円ですので、それに比べると板金工の年収は低めの傾向にあります。
ただし、職場によっては賞与や特別給与がもらえることもあるので、それを含めると年代によっては日本の平均年収に近くなる場合もありそうです。
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参考:国税庁|令和3年分 民間給与実態統計調査
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2021.htm
4.板金工の仕事のやりがいと魅力
板金工は「自動車」「工業製品」「建築」と活躍できるフィールドが多く、ものづくりをしている方にとっては働くこと自体がやりがいにつながるでしょう。
その他にも、板金工には以下のような魅力があります。
- 経験やスキルが給与に反映される
- 未経験からチャレンジできる
- 長く働ける
4-1.経験やスキルが給与に反映される
板金工の仕事は、作業者の技術力がそのまま完成品の出来栄えに直結します。長年スキルを磨きベテランの領域に達すれば、あなたの評価だけではなく、会社の評価向上につながります。また、その頑張りが給与に反映される点にやりがいを感じる方は多いはずです。
4-2.未経験からチャレンジできる
板金工の求人をみてみると、多くは未経験でも応募することが可能となっています。未経験で入社したとしても、現場での経験を積んだり資格を取得したりすることで一人前のスキルを身につけることができます。
4-3.長く働ける
板金工は、手に職をつけることで長く働ける仕事です。一度技術を身につけてしまえば、仮に転職することになっても、今まで身につけた知識と経験を活かして転職活動を有利に進められるでしょう。
5.板金工の仕事の大変さ
板金工の仕事の大変なところは、労働環境が過酷な場合があるという点です。
板金用の機械は稼働する際に熱が発生するため、特に夏の工場内は熱くなります。労働者の安全のために長袖の作業着を指定する工場もあり、暑さの対策は必須です。また、建築板金の現場では塗装のためのシンナー臭がきつくて辛いと感じる方もいます。
暑さや臭いに敏感な方には過酷な環境であることが多いため、気になる方は職場環境を事前に確認しておきましょう。
6.板金工に向いている人
板金工は「ものを作る」という仕事の特性上、向き・不向きがはっきりしています。ここからは、板金工に向いている人の特徴をご紹介します。
6-1.職人気質な人
板金工は、ものづくりに関わる技術職です。よって、職人気質の方に向いています。
職人気質とは、自分の技術やスキルに自信と誇りをもち、実直に仕事ができる人のことです。手に職を付けて、一つの仕事を極めるような働き方をする職人が該当します。ストイックな性格の方なら、板金の仕事のコツをどんどん吸収して、一人前の職人に成長できるでしょう。
以下の記事では、職人の仕事についてより詳しく解説しています。
6-2.ものづくりが好きな人
板金工は、仕事を通じて「自動車」「飛行機」「日用品」「家電」など、さまざまな工業製品を生み出す仕事です。「ものづくり」が好きな方であれば、仕事に関わること自体がやりがいにつながるでしょう。
7.板金工になるには?
板金工は未経験でも転職が可能であり、必ずしも資格を取得する必要はありません。ただ、資格を持っていることで転職活動が有利になったり、転職後は資格手当がついて手取りアップにつながったりする可能性もあります。
ここからは、板金工になるための勉強方法についてみていきましょう。
7-1.専門学校で学ぶ
就職前に板金工としての知識やスキルを身につけるなら、専門学校や訓練校で学ぶ方法があります。板金や塗装、仕上げなどのスキルを実技や座学で身につけることができます。
板金工としての基本的な技術を学ぶことができるため、卒業後は有利に就職活動を進められるでしょう。
ただ、卒業までに2~3年かかることもあるため、じっくりと時間をかけて技術を学びたい方に向いています。
7-2.働きながら技術を身につける
すぐにでも働きたい方は、先に就職・転職をしてから技術を磨くこともできます。工業高校出身など、板金に関する基礎知識があれば、専門学校や訓練校を出ずに就職することも不可能ではありません。
早めに現場に出ることで、安定した待遇の下で実践的な技術を学ぶことができます。
7-3.役立つ資格7つ
板金工は無資格でも働くことはできますが、事前に資格を取得することで転職活動を有利に進められます。板金工を目指す方にとって役立つ資格を7つ見ていきましょう。
7-3-1.工場板金技能士
工場板金技能士は、工業製品に使われる金属薄板の加工知識や技術を測る国家資格です。試験は学科試験と実技試験に分かれており、実技は工法によって以下の4つに分類されます。
- 曲げ板金作業
- 打出し板金作業
- 機械板金作業
- 数値制御タレットパンチプレス板金作業
等級は特級、1~3級の4段階で、令和3年度(2021年)の受験者数は3,733名、合格者数は1,835名でした。
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出典:厚生労働省|令和3年度「技能検定」実施状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11806001/000972355.pdf
7-3-2.建築板金技能士
建築板金技能士は、住宅などの建築物に関する板金工事の技能を測る検定の一種です。試験は「内外装板金作業」「ダクト板金作業」に分かれており、1級から3級の難易度に分かれます(ダクト板金は1~2級のみ)。
3級は建築板金に関する基礎的な知識、2級は屋根やダクトの図面の引き方や作り方、1級では専門的な知識と技能を問われます。令和3年度(2021年)の受験者数は2,637名、合格者数は1,255名でした。
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出典:厚生労働省|令和3年度「技能検定」実施状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11806001/000972355.pdff
7-3-3.ガス溶接技能者
ガスを使って溶接する技能を証明する技能検定です。資格を取得することで、ガスの熱を利用して金属をつなぐ「ガス溶接」や、部材を切り離す「ガス溶断(切断)」がおこなえます。
資格を取得するには、厚生労働省が定めた「労働安全衛生法に基づいたガス溶接技能講習」を受講し修了することが必要です。技能講習には「学科」「学科試験」「実技講習」があり、計2日間ほどの時間を要します。
7-3-4.アーク溶接作業者
アーク溶接作業者は、気体の放電現象の一種で5,000度~2万度の強い熱と光を放つアーク溶接に関する特別教育を修了した者のことです。2つの金属をつなげる「溶接」や、1つの金属を2つ以上に分ける「溶断」などが主な仕事になります。
アーク溶接作業者になるためには、「アーク溶接等特別教育」の修了が条件です。学科ではアーク溶接に必要になる知識と労働安全衛生法などの関連法を、実技ではアーク溶接装置の使い方などを学びます。
7-3-5.有機溶剤作業主任者
有機溶剤を取り扱う仕事をする際に作業の指揮をする責任者のことです。作業の指示以外にも、有機溶剤中毒防止装置が適切に作動しているかを確認することも仕事となります。
有機溶剤作業主任者の資格は、「有機溶剤作業主任者技能講習」を受講し、修了試験に合格すれば取得が可能です。ただし、有機溶剤作業主任者として働くには事業者に選任されることが必要です。
カリキュラムでは、有機溶剤による健康被害や衛生保護具に関する知識、作業環境の改善や関係法令を学び、最後に修了試験がおこなわれます。真面目に講習を受けていれば問題なく合格できる難度に設定されており、事前に受験勉強までしなくても合格を目指すことが可能です。
7-3-6.車体整備士
車体整備士は、自動車本体の整備をおこなう特殊整備士の1種です。交通事故などで損傷した部分を、修理・交換作業によって新車同然に仕上げることが主な業務。
車のフレームやボディの点検・修理、整備をおこなう技術を持ったスペシャリストであり、ガソリンやエンジン、二輪自動車など整備内容が多岐に渡る自動車整備士とはその点で異なります。
取得するには国家試験を受験して合格する必要がありますが、自動車整備士と違って1~3級といったクラス分けはありません。
以下の記事では、自動車整備士について詳しく解説しています。
7-3-7.塗装技能士
塗装技能士は、塗装工としての技術レベルを証明する国家資格です。
「木工塗装作業」「金属塗装作業」「噴霧塗装作業」「建築塗装作業」「鋼橋塗装作業」の5種類があり、それぞれ1級(上級技能者)、2級(中級技能者)、3級(初級技能者)に分けられています。1級なら7年以上、2級は2年以上、3級は6ヵ月以上の実務経験が必要です。
以下の記事では、塗装工について詳しく解説しています。
7-4.難易度
板金工は業界未経験でも転職することが可能であり、板金工になる敷居は決して高いものではありません。
一方、専門的な知識を身につけたり、資格を取得したりするのはそれなりの時間がかかります。例えば専門学校や訓練校に通う場合、カリキュラムや選ぶ学校によって異なる場合がありますが、2~3年かかることも少なくありません。
また、関連する資格のなかで1級を取得するためには長い現場経験が求められます。例えば建築板金技能士の1級は、「7年以上」「2級合格後2年以上」「3級合格後4年以上」のいずれかの実務経験がなければ受検できません。
入口は簡単でも、極めるには難易度が高いのが板金工の仕事の特徴です。
8.板金工の将来性とは?
スーパーのレジやレストランのホール業務、工場の生産ラインまで、いまやロボットやAIにとって代わられると危惧される仕事は少なくありません。
一方、板金をはじめとした「ものづくり」においては、人間による仕上げや繊細な手仕事が必要となるケースが多いです。AIに仕事を奪われる可能性が低いという意味で、将来性は高いといえるでしょう。
また、板金工が扱う自動車や日用品、飛行機、建物はこれからもなくなることはないため、将来まで安定した需要が見込めます。
9.まとめ
板金工は男性の仕事というイメージがありますが、実は女性が活躍しやすい仕事でもあります。特に塗装などの細かい作業や色彩が求められる仕事では、女性ならではのセンスが活かせるケースも多いです。1級の資格を取得するまでには長い時間を要しますが、ぜひ前向きに検討してみましょう。
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