工場の仕事図鑑
更新日:2023年07月27日

技術士になるには?資格の取得方法や仕事内容、メリットを解説

技術士になるには?資格の取得方法や仕事内容、メリットを解説

※この記事は6分30秒で読めます。

「技術士ってどのような資格?難易度は?」
「技術士の資格を取るメリットが知りたい」
など、技術士の資格に関して疑問を持っている方もいるでしょう。

技術士は技術者にとって最難関の資格の一つであり、取得することで高い技術力と技術者倫理を持つことを証明できます。

今回は、技術士の概要、技術士補との違い、仕事内容、取得することのメリットなどを解説します。この記事を読めば技術士のことがよくわかり、合格までの道のりをイメージできるようになります。

1.技術士とは?

技術士とは、文部科学省管轄の国家試験である「技術士試験」に合格した技術者のことです。技術士であることは、高度な技術力や技術者倫理を持つことを国に認められているということになります。

技術者としての専門知識だけではなく、「仕事を通して社会のためになる」という倫理観を備えていることが大きな特徴です。

技術士は、専門性に応じて21の技術部門に分かれています。

部門 特徴
機械部門 機械設計、材料強度・信頼性、機構ダイナミクス制御、熱・動力エネルギー機器、流体機器、加工・生産システム・産業機械など
船舶・海洋部門 船舶に関する機能・設計・構造に関する事項や、浮体式海洋構造物および海洋機器に関する事項など
航空・宇宙部門 航空機、宇宙機の空気力学、構造力学、制御工学など
電気電子部門 電力・エネルギーシステム、電気応用、電子応用、情報通信、電気設備など
化学部門 無機化学およびセラミックス、有機化学および燃料、高分子化学、化学プロセスなど
繊維部門 紡糸・加工糸および紡績・製布、繊維加工および二次製品
など
金属部門 金属材料・生産システム、表面技術、金属加工など
資源工学部門 金属鉱物、石炭、石灰岩、砕石などの地下資源の探査、評価および採掘に関する技術的事項並びに生産システムのマネジメントおよび環境保全に関する事項など
建設部門 土質および基礎、鋼構造およびコンクリート、都市および地方計画、河川、砂防および海岸・海洋、港湾および空港、電力土木、道路、鉄道、トンネル、施工計画、施工設備および積算、建設環境など
上下水道部門 上水道計画、工業用水道計画、水源環境、下水道計画、流域管理、下水収集・排除、下水処理、雨水管理、資源・エネルギー利用など
衛生工学部門 水質管理、廃棄物・資源循環、建築物環境衛生管理など
農業部門 畜産、農業・食品、農業農村工学、農村地域・資源計画など
森林部門 森林計画および森林管理、造林、林業生産その他の森林・林業に関する事項、治山、森林地域およびその周辺の環境の保全および創出並びに環境影響評価に関する事項など
水産部門 水産資源および水域環境、水産食品および流通、水産土木など
経営工学部門 生産計画および管理、品質マネジメント、物流、サプライチェーンマネジメント、生産のための情報システム、サービス提供の計画および管理、品質マネジメント、プロジェクトマネジメントなど
情報工学部門 コンピュータ工学、ソフトウェア工学、情報システム、情報基盤など
応用理学部門 物理および化学、地球物理および地球化学、地質など
生物工学部門 遺伝子工学、オミクス解析、ゲノム工学、ゲノム創薬、細胞工学、食品機能工学、環境微生物利用技術、検査・診断技術、酵素工学、生体成分分析技術、生体成分分離・精製技術、生物材料工学など
環境部門 環境保全計画、環境測定、自然環境保全、環境影響評価など
原子力・放射線部門 原子炉システム・施設、核燃料サイクルおよび放射性廃棄物の処理・処分、放射線防護および利用など
総合技術監理部門 1~20の各技術部門と同じ

2.技術士補の違い

技術士補は技術士の下位資格です。技術士の第一次試験に合格、または指定された教育課程を修了した修習技術者が、技術士補として登録をすることで資格を得られます。

第一次試験には受験資格に縛りがありません。まずは第一次試験をクリアして技術士補になり、実務経験を積んだうえで第二次試験に合格するのが、技術士を目指す際の一般的な流れです。

また、技術士を目指すうえでは絶対に技術士補に登録しなければいけないということはなく、技術士補を飛ばしていきなり技術士を目指すことも可能です。

ただ、技術士補になると第二次試験で必要となる実務経験を短くできるメリットがあります。

3.技術士の仕事内容

技術士がおこなう仕事は多岐にわたりますが、代表的な仕事は以下のとおりです。

  • 公共事業の土地・計画の事前調査・計画・監理
  • 団体の業務監査のための調査、評価の作成
  • 裁判所や保険会社、銀行による依頼対象の調査、鑑定
  • 企業からの依頼による調査・研究・技術評価
  • 企業に対する技術指導
  • 大企業の先端技術に関する相談
  • 発展途上国への技術指導 
  • など

大部分の技術士は、国や地方自治体、企業などの組織で技術力を発揮して業務を遂行するほか、上記のようなコンサルタント業務をおこないます。担当する技術に関する計画、研究、設計、分析、試験、指導など、業務内容はさまざまです。

なお、建築に関しての計画・設計は建築士の独占業務であり、技術士はあくまで業務に関する指導や調査が主な仕事となります。

4.技術士の平均年収

厚生労働省発表の「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によると、技術士の平均月収は2015年時点の一般労働者で32万9,900円でした。年間賞与その他特別給与額は109万1,000円です。年収に換算すると504万9,800円になります。

ただし、これはあくまで平均的な額であり、実際に受け取れる給与は経験や実績によって変わります。あらかじめ、会社内でどのように評価が上がっていくのかを確認しておくことをおすすめします。

5.技術士になるメリット

インターネット上では、技術士はいらない資格といわれていることもあるようです。ただ、このような声が見つかる背景には、技術士になることのメリットがよく知られていない状況があると考えられます。

技術士の資格を取得すると、以下の6つのメリットが得られます。

5-1.スキルをアピールできる

技術者としての知識に加え実務経験がなければ、技術士の第二次試験までクリアできません。

つまり技術士の資格を取得することは高い技術力をアピールすることにつながり、今より責任のある立場や案件へ抜擢されることもあるでしょう。昇進要件に技術士の資格取得が設定された企業であれば、将来的な年収アップも期待できます。

5-2.転職や就職に有利になることもある

技術士の試験は難易度が高く、合格者の少なさから希少価値の高い資格です。

技術士が事業に必要な企業にとっては、何としても有資格者を確保する必要があることから、就職・転職で大いに有利となります。

5-3.資格手当がもらえることもある

無資格の技術者と比較して収入に大きく差が出ることも、技術士の資格を取得することのメリットです。

会社によっては月2万円程度の資格手当を受け取れることもあります。年収に換算すると24万円もアップすることになり、生涯賃金にも大きく影響するでしょう。

5-4.国家資格なので信用度が上がる

技術士の資格は国家資格であり、以下の試験をクリアしないと名乗ることができません。

  • 第一次試験(択一式)
  • 第二次試験(記述式の筆記試験、口頭試験)

講義を最後まで受講すれば取得できる資格ではなく、第二次試験には実務経験まで求められます。資格を取得することで、技術者として社内外から信用を得ることができるでしょう。

5-5.希少性が高いので有利になる

技術士の合格率は、2022年度の第二次試験で11.7%です。実務経験がある方しか受けられないうえに約10人に1人しか合格できないことから、試験の難易度の高さがうかがい知れます。

これだけ難易度の高い国家資格を保有していることは、他の技術者との大きな差別化ポイントとなります。会社にとっても、有資格者を確保していることは他社との差別化ポイントとなるでしょう。

5-6.独立を目指せる

技術士の資格を保有すると技術コンサルタントとして働くことができるため、活躍するフィールドが大きく広がります。

コンサルタントとして働く能力を身につければ独立開業も現実的になり、成功すれば会社員時代よりも多くの収入を得ることもできます。発展途上国での指導や大学の教育機関に所属しての研究など、国内外で仕事の可能性を広げられるでしょう。

6.技術士になるには?

技術士になるには、国家試験をクリアしたうえで技術者として登録する必要があります。ここからは、技術士資格の取り方の流れや取得の条件などについて解説します。

6-1.技術士の資格の取り方

技術士の資格を取得する流れは以下のとおりです。

  1. 第一次試験に合格(文部科学大臣指定の教育課程の修了者は免除)し、修習技術者になる
  2. 実務経験の年数を満たす
  3. 第二次試験に合格する
  4. 登録して技術士になる

技術士試験を受験するにあたって、年齢や学歴、国籍などの制限はありません。ただし、第二次試験を受験するには実務経験の条件を満たす必要があります。

6-1-1.受験資格

技術士の第一次試験には、特に受験資格は設定されていません。年齢や実務経験の有無に関係なく、誰でも受験できます。

一方、第二次試験については、受験申し込みをおこなう時点で、第一次試験に合格するなどの条件を満たして修習技術者になり、以下の実務経験を満たすことが必要です。

  • 技術士補として登録し、指導技術士の下で4年(総合技術監理部門の場合は7年)を超える実務経験
  • 職務上の監督者の下での4年(総合技術監理部門の場合は7年)を超える実務経験
  • 指導者や監督者の有無に関係なく、7年(総合技術監理部門の場合は10年)を超える期間の実務経験

6-1-2.取得の条件

技術士の試験は「第一次試験」「第二次試験」に分かれています。

第一次試験はマークシートによる択一方式であり、試験科目は「基礎科目」「適性科目」「専門科目」の3教科です。基礎科目と適性科目は全部門で共通、専門科目は21の部門別の問題が出題されます。

第二次試験の内容は「筆記試験」「口頭試験」です。筆記試験の科目には、必須科目と選択科目の2つがあります。合格には60%以上の得点が必要という合格基準は全部門で共通しています。

口頭試験は筆記試験に合格した方だけが受験できる面接形式の試験で、各質問事項について60パーセント以上の得点が必要です。

第一次試験に合格するためには、3つの科目すべてで50%以上の得点が必要です。一つでも点数が50%未満の科目があれば不合格となります。

筆記試験と口頭試験の両方に合格して、初めて第二次試験に合格となります。

6-1-3.難易度と合格率

技術士試験の第一次試験、第二次試験の直近の合格率は以下のとおりです。

【第一次試験】

全部門の合格率
受験者数 17,225人
合格者数 7,251人
合格率 42.1%

【第二次試験】

全部門の合格率
受験者数 22,489人
合格者数 2.632人
合格率 11.7%

第一次試験では、目安として理系大学の初期過程程度の知識が必要とされています。一般的な科学技術系の知識が求められることで出題範囲が広くなる点がネックであり、過去問を何度もやりこんで幅広い範囲をカバーすることが大切です。

第二次試験は一部の部門を除いたすべてが記述式の試験であり、設問の回答には高い思考力と論文作法が求められます。マークシートによる択一式と違って運で正解することがなく、問題集の丸暗記では合格できないことで難易度が高くなっています。専門技術をもとにした課題設定や、問題解決能力を的確に文章記述する練習を重ねる必要があるでしょう。

合格までに必要な時間は受験を予定する技術部門と選択科目にもよること、また人によっても必要な時間が異なるため一概にはいえませんが、一般的には第一次試験で200~500時間、第二次試験で500~600時間ともいわれています。

6-1-4.勉強方法

技術士の第一次試験は択一式のマークシート方式であり、一般的な過去問の勉強を何回も繰り返す勉強がおすすめです。

第一次試験の問題と正答は日本技術士会の公式ホームページから無料でダウンロードできます。過去問の答えの理由に関しては、インターネットや市販の過去問題の解説テキストなどで調べましょう。

記述式の第二次試験に関しては、過去問のほか、関連白書などの試験関連資料に目を通しておく必要があります。ものづくり白書と環境白書についてはどの部門の受験者も確認し、政府の考え方を把握しておくべきです。

過去問では、直近数年分の内容を把握して出題傾向や内容をまとめます。過去問の内容を丸暗記するのではなく、出題傾向に沿って技術部門関連の専門図書などを使い、技術の背景や現在の課題、問題点などを整理しておくことが大切です。

7.未経験でも技術士を目指せる?

技術士の仕事自体は無資格でもできますが、技術士を名乗るためには技術士試験を第二次試験までクリアして登録する必要があります。第二次試験では実務経験の要件を満たす必要があるため、いきなり未経験から技術士試験に合格することはできません。

未経験の方は、まず受験資格がない第一次試験の合格を目指しましょう。第一次試験に合格して登録すれば技術士補として働くことができ、第二次試験の受験に必要な実務経験を積むことができます。

8.まとめ

技術士の資格は技術者・エンジニアにとって最高峰の資格といわれており、特に第二次試験の受験には実務経験が厳格に設定されているうえに合格率が10パーセント前後しかありません。

すべての国家資格でも指折りの難関資格ですが、だからこそ合格した際のメリットも大きいものがあります。

技術士の資格取得には実務経験と技術力の両方が求められるため、まずは企業に就職してスキルを磨くことから始めましょう。JOBPALで関連する求人をぜひ探してみてください。

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