工場の仕事図鑑
更新日:2024年01月10日

作業環境測定士とは?資格の難易度や取得方法、仕事内容、メリットやなり方を解説

作業環境測定士とは?資格の難易度や取得方法、仕事内容、メリットやなり方を解説

※この記事は5分30秒で読めます。 

「作業環境測定士ってどんな資格?仕事内容は?」
「作業環境測定士の資格を取得するメリットが知りたい」
など、作業環境測定士に関して興味や疑問を持っている方もいるでしょう。

作業環境測定士は、作業環境の有害物質の採取および測定をおこなったうえで、改善に向けたアドバイスや提案をする仕事です。労働者にとって安全な職場を実現できる資格です。

今回は、作業環境測定士の概要や仕事内容、作業環境測定士として働くメリット、取得までの流れなどを解説します。この記事を読めば作業環境測定士のことがよくわかり、自分が働いている姿をイメージできるようになります。

1.作業環境測定士とは?

作業環境測定士とは、職場における有害物質などを測定し、その環境改善を図って労働者の安全を守るための国家資格です。

有資格者は作業現場の粉じん、放射性物質、特定化学物質、金属、有機溶剤などの測定・分析をおこないます。分析した結果をもとに、事業所や工場、病院など依頼先の作業環境の改善をアドバイスするのが基本的な仕事になります。

2.作業環境測定士の仕事内容

作業環境測定士が活躍できる場所は、労働安全衛生法で定められた有害業務をおこなっている現場です。例としては以下のような現場が挙げられます。

  • 鉛を取り扱う現場
  • 粉じんが発生する現場
  • 有機溶剤を取り扱う現場
  • 特定化学物質を製造し又は取り扱う現場
  • 放射線にさらされる現場
  • 強烈な騒音を発する現場
  • 振動工具による身体に著しい振動を与える現場
  • 紫外線、赤外線にさらされる現場
  • 重量物を取り扱う現場

など

作業環境測定士が具体的におこなう仕事の内容は以下のとおりです。

2-1.サンプリング調査

測定対象の現場の作業環境の実態を明らかにするために、作業場の測定計画をおこなうことを「デザイン」と呼びます。デザインの内容に基づき作業場内の有害物質を採取することが「サンプリング」です。

サンプリングされた有害物質は必要に応じて前処理がなされ、分析・解析がおこなわれます。この分析作業によって、クロムやヒ素といった有害物質による健康被害を未然に防ぐことができます。

2-2.職場環境の改善提案

サンプリングの分析結果に問題があれば、改善を促すためのアドバイスをおこなうことも作業環境測定士の仕事です。

単に「有害物質を減らしましょう」ということではなく、有害物質を減らすための具体的な改善策の提案も必要となります。

2-3.担当現場の定期的な監視

作業環境測定士の仕事は、一度サンプリングと分析、改善のアドバイスや提案をおこなえば終わりではありません。

担当した現場を定期的に訪問して再度のサンプリングをおこない、有害物質の減り具合や改善策の進み具合を確認することも仕事に含まれます。

現場を調査し問題があれば改善提案をすることに加え、長期的に監視していくことも作業環境測定士の重要な仕事です。

3.作業環境測定士として働くメリット

作業環境測定士の仕事は、事業所や労働者にとって健康で安全に働ける職場を提供できるメリットがあります。ほかにも以下のようなメリットがあります。

3-1.資格手当がついて給与が高くなる

企業によっては、作業環境測定士の有資格者に資格手当が支払われる場合があります。金額は企業ごとに設定がさまざまで、一概にはいえませんが、月5,000円の手当を受け取れれば年収が6万円アップする計算です。

たとえ作業環境測定士の勉強にコストがかかったとしても、資格手当を受け取ることができれば取り戻せるでしょう。

3-2.転職や就職の際に有利になることもある

作業環境測定士は国家資格であり、取得していれば就職や転職の面接で高く評価されます。作業環境の改善は製造業をはじめ多くの職場で必要性が高く、資格を持っていればさまざまな業界で活躍できるチャンスがあります。

作業環境測定士を必要としない会社でも、難しい国家資格を取得した実績や勉強への熱意が評価されることがあります。環境問題が注目されている現在、作業環境測定士は需要が高く、給与や休日などの待遇が良い企業で働ける可能性もあるでしょう。

4.作業環境測定士になるには?資格の難易度や合格率は?

作業環境測定士は誰でも取得できる資格ではありません

大学・短大、高等専門学校(専修学校、各種学校は含めない)で理系系統の正規課程を修めて卒業すること、大学卒業後に労働衛生に関する実務経験を1年以上積むことといった受験資格を満たす必要があります。

受験資格を満たした方が国家試験に合格することで、資格を取得することができます。

ここからは、作業環境測定士になるための道のり・手順についてご紹介します。

4-1.実務経験を積む

作業環境測定士の国家試験を受けるには、卒業した大学・学校ごとに必要な実務経験を満たす必要があります。

卒業した大学・高校の種類や取得した単位ごとに必要になる実務経験は、主に以下のとおりです。

卒業後に必要な労働衛生の実務経験
大学(短期大学を含む)、高等専門学校(専修学校、各種学校は含まない)で理系系統の正規課程を修めて卒業した場合 1年以上
大学(短期大学を含む)で、理科系統の正規の課程以外の課程を修めて卒業した場合 3年以上
高等学校または中等教育学校で、理科系統の正規の学科を修めて卒業した場合 3年以上
高等学校または中等教育学校で、理科系統の正規の学科以外の学科を修めて卒業した場合 5年以上

上記のほか、労働衛生の実務に8年以上の従事経験があれば、実務経験の条件を満たすことができます。

4-2.作業環境測定士の資格を取得する

受験資格を満たしたあとは、作業環境測定士の国家試験を受検します。資格試験には第一種と第二種がありますが、第一種は上位資格のため、まずは第二種の取得を目指すことになります。

ここでは、第二種の受験資格や取得の条件についてご紹介します。

4-2-1.受験資格

第二種作業環境測定士の受験資格は、第一種と変わりません。以下のような実務経験や他の国家資格の合格が受験資格として定められています。

  • 理系の大学または高等専門学校の卒業者であり、実務経験が1年以上ある
  • 理系以外の大学または高等専門学校の卒業者であり、実務経験が3年以上ある
  • 高校または中学校で理科系統の正規の学科を修め、実務経験が3年以上ある
  • 高校または中学校で理科系統以外の正規の学科を修め、実務経験が5年以上ある
  • 技術士試験の第2次試験に合格している
  • 労働衛生の実務に8年以上従事した経験がある
  • 産業安全専門官、労働衛生専門官、労働基準監督官またはその職務にあった

など

上記のほかにも規定が細かく決められているため、詳細は「安全衛生技術試験協会」の公式Webサイトをご確認ください。

4-2-2.取得の条件

試験で問われる知識は第一種と第二種で違いがあり、第二種の試験では以下の内容が出題されます。

【共通科目】

  • 労働衛生一般
  • 労働衛生関係法令
  • 作業環境についておこなうデザイン・サンプリング
  • 作業環境についておこなう分析に関する概論

ただし、第一種衛生管理者または衛生工学衛生管理者の資格を持っており、法令に定める試験科目一部免除講習を受ける場合は、4科目のうちの一部科目の試験が免除されます。

各科目の得点がすべて60%以上になっていれば合格です。

4-2-3.難易度と合格率

安全衛生技術試験協会によれば、令和4年度の第二種作業環境測定士の受験者数は1,384名、うち合格人数は581名で、合格率は42.0%でした。

また、第一種作業環境測定士の受験者数は935名、うち合格人数は621名で、合格率は66.4%でした。

第二種作業環境測定士においては、試験の年によっても合格率は変わりますが、受験資格が細かく指定されたうえで42.0%という合格率は決して高くありません

4-2-4.勉強方法

4つの受験科目のうち、労働衛生一般については「化学物質や粉じんの種類の違いによってどのような病気を引き起こすか」を確実に暗記することがおすすめです。

労働衛生関係法令も暗記科目ですが、事業所の人数に応じて法律の効果が変わってくることを念頭に暗記をする必要があります。

デザイン・サンプリングや分析に関する概論は、実際の仕事内容をイメージしつつ、過去問を繰り返し解きながら内容や答えを暗記していくことが重要です。実務経験が豊富な方はデザイン・サンプリングの評価のイメージがわかりやすいため、この2分野の勉強は短時間で済むでしょう。

高校で化学を勉強した経験によっても覚える量は変わってきますが、いずれにしても法令を中心に暗記科目が多いため、過去問を繰り返し解いて内容を暗記していくことが合格への近道といえそうです。

4-2-5.作業環境測定士の上位資格とは?

作業環境測定士の上位資格は、第一種作業環境測定士になります。

第二種では、分析について簡易測定器による分析業務以外は対応できません。第一種の資格を取得することで、作業環境測定基準に規定する特定化学物質のすべての分析法による分析ができるようになります。

第一種の試験は、第二種と同じ4つの共通科目に加え、「粉じん」「有機溶剤」など、自分が資格を取得しようとしている種別についての選択科目を受験する必要があります。

4-3.作業環境測定士の登録講習を受ける

国家試験に合格したあとは、登録講習を受講することになります。

講習を受講し、厚生労働大臣の指定を受けた公益財団法人安全衛生技術試験協会へ申請・登録するまでは、有資格者として仕事をすることはできません。

第二種測定士を目指す方は、第二種講習(共通科目)を受けることになります。講習期間は計3日間です。講習終了後に修了試験(筆記試験・実技試験)を受けて合格したあと、講習修了証が交付されます。

5.未経験から作業環境測定士を目指すには?

作業環境測定士は、技術士試験の2次試験に合格しているなどの一部の条件を除き、卒業した学校の種類や勉強した内容に応じて異なる期間の実務経験を積む必要があります。

したがって、完全な未経験からいきなり試験を受けて作業環境測定士になることはできません。まずは、自分が卒業した大学や高校で勉強した内容から、必要な実務経験の年数を確認しましょう。

労働衛生の現場で働きながら実務経験を積み、資格取得の要件を満たせば、資格取得にチャレンジできます。

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6.まとめ

作業環境測定士は企業を対象にする仕事であり、環境問題が注目されている昨今では高い需要が期待できます。

労働者の安全を守るという使命もあることから、仕事にやりがいを求める方にもおすすめです。受験には実務経験が必要ですが、先に労働衛生の職場で働くことで実務経験を満たせます。

作業環境測定士の仕事や労働衛生の現場に興味がある方は、ぜひJOBPALの求人をチェックしてみてください。

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