障がい者雇用とは?対象や求人の例、応募するメリット・デメリット
※この記事は6分30秒で読めます。
「障がい者雇用ってどのような制度?」
「障がい者雇用で働くメリットが知りたい」
など、障がい者雇用に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
障がい者雇用は、障がいの有無に関わらず誰もが活躍できる社会をめざして国が整備している制度です。障がいの特性に対する合理的な配慮を受けながら働くことができます。
今回は、障がい者雇用の概要、メリット・デメリット、おすすめの求人例などを解説します。この記事を読めば、障がい者雇用のことがよくわかり、障がいのある方が自分らしく働ける職場を見つける手助けになります。
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1.障がい者雇用とは?
日本では、職業を通じた障がい者の社会参加を促すために「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」が制定されており、障がい者が安定して働くことが当たり前の社会をめざして雇用対策を進めています。
そのなかで、障がい特性に配慮したうえで障がいのある方を採用する求人が「障がい者雇用」枠の求人です。障がい者雇用においては、障がいのある方の雇用の安定化を目指し、「障害者雇用率制度」が定められています。
一定以上の従業員数をもつ一般企業は、雇用する労働者の2.3%にあたる人数の障がい者を雇用する義務があります。この割合は「法定雇用率」と呼ばれており、達成できない場合は納付金を納めなくてはなりません。
法定雇用率は定期的に引き上げられており、令和5年9月現在は2.3%ですが、令和6年4月には2.5%に引き上げられることが発表されています。
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参照:厚生労働省|障害者雇用率制度について
https://www.mhlw.go.jp/content/000859466.pdf
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参照:厚生労働省|第123回労働政策審議会障害者雇用分科会 議事次第
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001039657.pdf
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参照:令和5年版障がい者職業生活相談員資格認定講習テキスト
https://www.mhlw.go.jp/content/000653507.pdf
1-1.一般雇用との違い
障がいのある方が障がい特性を考慮して採用される枠を「障がい者雇用」と呼ぶのに対し、障がいのない方や障がいがあってもその特性に関係なく障がいのない方と同等に採用される枠を「一般雇用」と呼びます。
障がい者雇用の場合、入社の前に自身の障がい特性や配慮してもらいたい部分などを伝えることができ、必要な配慮やサポートを受けながら働くことができます。
特性に合った仕事を割り振ってもらうことや、健康上必要な休憩やお休みを取ることもできます。
一方、障がいのある方が一般雇用で働く場合、障がいがあることを公表していても、障がい特性への配慮は受けにくくなるのが一般的です。
一緒に働く方に自分の特性を伝えて配慮をお願いすることでサポートしてもらえることもありますが、仕事内容や労働条件での配慮は受けにくいでしょう。
また、厚生労働省がおこなった「平成30年度障害者雇用実態調査」の結果によると、障がい者雇用枠における賃金の平均は以下のとおりです。
- 身体障がい者:21万5千円
- 知的障がい者:11万7千円
- 精神障がい者:12万5千円
- 発達障がい者:12万7千円
なお、同年に厚生労働省がまとめた「賃金構造基本統計調査」の結果によると、一般雇用労働者の賃金平均は30万6,200円であり、どの障がい種別においても障がい者雇用は一般雇用に比べて賃金が低い傾向にあることがわかります。
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参考:厚生労働省|平成30年度障害者雇用実態調査
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf
1-2.企業が抱える課題
障がいの有無に関わらず活躍できる社会を目指すため、企業には雇用の安定化や個々の特性への配慮、賃金や教育訓練、福利厚生の一般雇用との均等化などが求められています。
法定雇用率の引き上げもあり、企業の障がい者雇用への意識は高まりつつあり、さまざまな課題への解決や改善が進められています。
そのため、障がいのある方でこれまで仕事がなく悩まれていた方でも、企業に採用され、必要な配慮を受けながら長期で働ける可能性が高まっていると考えられます。
2.障がい者雇用の対象
障がい者雇用の対象となるのは、障がい者手帳をもっている障がい者の方です。
手帳には3種類あり、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方が、障害者雇用率制度上の「障がい者」となります。なお、障害等級は問われません。
しかし、障がいを持っていても障がい者手帳を取得していないという方もいるでしょう。そういった方は障がい者雇用には応募できないため、一般雇用で応募する必要があります。
一般雇用でも、自身の障がいを先に伝えて採用されると、障がいへの配慮を受けられる場合があります。
3.障がい者雇用のメリット
障がい者雇用で採用されて働くことにはいろいろなメリットがあります。ここでは主な4つのメリットをご紹介します。
3-1.特性に合わせた配慮ある環境で働ける
障がい者雇用で働く第一のメリットは、特性に合わせた配慮ある環境で働けるということです。
障がい特性を知ったうえで採用されるため、必要な配慮が全体に共有されており、特性上難しい業務などを割り当てられることはありません。
また、健康上や業務上困ったことがあった際に、周囲に助けを求めやすい環境でもあります。
3-2.大手企業の求人が多い傾向がある
社員数の多い大手企業や有名企業は、そのぶん法定雇用人数が多くなります。そのため、積極的に障がい者雇用枠で募集をかけている傾向にあります。
また、特例子会社といって、障がい者の雇用に特別な配慮をした子会社を持っている大手企業もあります。したがって、誰もが名前を知っているような有名企業やその子会社で活躍できる可能性も十分あります。
3-3.残業なしや時短勤務など時間の調整ができる
障がい特性により長時間の勤務が難しいことを事前に伝えれば、残業なしや時短勤務など、労働時間の調整が可能です。
残業やフルタイム勤務ができると思って働き始めたけれど、やってみたら難しかったという場合でも、それを伝えることで合理的配慮として勤務時間の調整をしてもらえる場合が多いでしょう。
また、集中力を持続できない、長時間同じ姿勢でいると健康上の支障がでるなどの場合にはこまめに休憩をとることができ、通院のための休みを取ることもできます。
3-4.障がいに対する知識がある方が多い傾向がある
すでに障がい者雇用をしている企業では、そのノウハウがすでに蓄積されていたり、社員研修や実際の業務を通して障がいに対する知識のある方が多かったりする傾向にあります。
会社全体のノーマライゼーション意識(誰もが普通の生活を送れる環境づくりのこと)も高いことが多く、安心して働けます。
4.障がい者雇用のデメリット
障がい者雇用にはたくさんのメリットがありますが、注意しなくてはいけない点もあります。ここでは、障がい者雇用のデメリットを2つご紹介します。
4-1.一般雇用枠と比較して求人数が少ない傾向がある
一般雇用と比較すると、障がい者雇用の求人数は少ない傾向にあります。都市部では大企業が多いことや意識が高いことにより比較的求人が多いですが、地方ではまだまだ障がい者雇用枠の求人が少ないのが現状です。
令和3年度のハローワークを通じた障がい者の職業紹介などの調査結果の公表によると、令和3年の障がい者雇用の求人数は21万3千人でした。
令和3年度にハローワークが統計をとった一般職業紹介状況によると、同年の一般雇用の有効求人数は全国計で2,700万人を超えているため、一般雇用と障がい者雇用の求人数の差は大きくひらいていることがわかります。
しかし、障がい者雇用の求人数は、医療・福祉や製造業などを中心に多くの産業で増加傾向にあります。今後、障がい者雇用の枠はますます増えることが期待できるでしょう。
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参照:厚生労働省|「令和3年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します」(4)障害者専用求人数の状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000797428.pdf
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参照:一般職業紹介状況(職業安定業務統計):雇用関係指標(年度)通番1データ種類「有効求人数、新規求人数、就職件数」2021年度の値
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1d.html
4-2.業務内容が限定的になる傾向がある
障がい者を雇用する場合、企業は雇用する障がい者の特性に合わせて業務の切り出しをおこないます。そのため、業務内容が限定的になってしまう傾向にあります。
人によっては仕事の幅が少なく、やりがいを感じにくいこともあるかもしれません。また、業務内容が限定的になる分、給与も相応の額になってしまいます。
障がい特性があっても仕事でチャレンジしていきたい、新しいことに挑戦してスキルアップを目指したいという方は、一般雇用枠を目指すと良いかもしれません。
5.障がい者雇用で募集している求人例6つ
障がい者雇用にはさまざまな業種の求人があります。そのなかでも特におすすめの求人を6つご紹介します。
5-1.工場・製造
工場では、特に製品の組立など、製造に関わる障がい者求人があります。製造ライン上で商品やその一部を組み立てる流れ作業がその例です。
一度作業を覚えれば、あとは同じ作業の繰り返しなので、黙々と作業に熱中できる方におすすめです。仕事のほとんどが個人の作業で接客もないため、対人関係が苦手な方でも働きやすいでしょう。
工場・製造の仕事内容について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
5-2.商品管理
商品管理は、倉庫やアパレルショップなどのバックヤードで商品の検品や在庫管理、棚入れなどをおこないます。
作業は多いですが、覚えた作業やマニュアルに書いてあることを丁寧に実践していくことが得意な方におすすめです。
好きなショップで働きたいけど接客が不安という方も、ショップのバックヤードの商品管理なら接客の必要はありません。好きなものに関わって仕事ができればやりがいにもつながるでしょう。
商品管理にはタブレットやパソコンを使用することが多いため、端末操作や細かい字に苦手意識のない方に向いているお仕事です。
5-3.事務・庶務
事務・庶務はデスクワークが中心のお仕事です。パソコンを使ったデータ入力や書類作成、電話対応などをおこないます。
イレギュラーなことが起きにくい仕事であるため、急な状況変化が苦手な方でも比較的働きやすい傾向にあります。
パソコンやコピー機の操作に抵抗がなく、一つひとつの仕事を丁寧にこなせる方におすすめです。
事務・庶務の仕事内容について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
5-4.データ入力
事務のなかでもデータ入力に特化したお仕事は、デスクワークになります。
立ったり歩いたりすることがほとんどないため、身体に障がいのある方でも移動に関するストレスを感じる場面が少なく済み、働きやすい環境と感じる方もいるでしょう。
ただし、ほとんどの時間をパソコンの画面を見て作業することになります。そのため集中して作業ができる方、長時間のパソコン作業が苦にならない方におすすめの仕事です。
入社前にWordやExcelのある程度の知識を持っておくと、スムーズに業務に入れます。
5-5.地方公務員
安定した職場で働きたいという方におすすめなのが地方公務員です。県庁や市役所での事務仕事や窓口対応が中心となります。
障がい者雇用で公務員になる一番のメリットは給与面です。公務員の場合、一般雇用と同等の給与がもらえます。しっかりとお給料をもらい、安定して働きたいという方にはぴったりの仕事です。
また、令和4年障害者雇用状況の集計結果によると、都道府県や市町村の機関で働く障がい者の人数は前年よりも増加しています。
現在、公的機関の法定雇用率は一般企業よりも高い2.6%に設定されており、令和6年4月1日から2.8%、令和8年7月1日から3.0%にまで引き上げられる予定です。
こういった情勢をうけ、公務員の障がい者雇用はますます積極的におこなわれていくことが予想されます。公務員を希望される方にとってはチャンスといえるでしょう。
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参考:厚生労働省|令和4年障害者雇用状況の集計結果
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001027391.pdf
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参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について
https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf
5-6.IT関連職
パソコンスキルやデザインスキルに自信がある方は、エンジニアやデザイナーなどのIT関連職がおすすめです。
技術が重視される業種なので、企業が求める技術があれば積極的に採用してもらえる可能性が高くなります。また、完成した成果物が目に見えるため、評価されやすい傾向にあります。
最近は、障がいのある方を対象としたIT系の講座や就労移行支援もあります。そういった支援を活用し、スキルを身に付けてからIT業界を目指していくのも1つの方法でしょう。
6.障がい者雇用枠の求人を効率よく探す方法
障がい者枠での雇用を希望していても、なかなか求人が見つからない場合もあります。そんなときに障がい者雇用枠の求人を効率よく探す方法を3つご紹介します。
6-1.障がい者雇用枠に強い求人サイトを使う
求人サイトはいろいろとありますが、そのなかでも特に障がい者雇用に強い求人サイトを活用しましょう。
障がい者雇用枠の求人で絞り込み検索ができるなどの機能があれば、障がい者雇用に特化した情報が得られるため、自分の希望に合う求人を探しやすくなります。
また、就職相談もできる求人サイトを使えば、面談を通して障がい特性を伝えることも可能です。
障がい特性によりこなすことが難しい業務、逆に得意な分野などを理解してもらったうえで仕事を紹介してもらえるため、自分に合った仕事が見つかる可能性が高まるでしょう。
6-2.ハローワークを使う
ハローワークには障がいについて専門的な知識をもった職員が配置されており、障がいにより職業生活に長期の制限を受けている方、職業生活を営むことが著しく困難な方に対して就職サポートをおこなっています。
また、就職活動に関する相談だけではなく、職業評価や職業訓練の案内、求人企業に対して求人者がすべき配慮の説明、就職後の相談や支援など、長期にわたるサポートを受けることができます。
求人情報が多く集まっているため、障がい者雇用枠だけでなく、適正があるとわかれば一般雇用枠の紹介をしてもらえることもあります。就職に関する公的機関として安定したサポートを受けることができ、安心感があります。
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参照:ハローワークインターネットサービス|障害のある皆様へ
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/member/sy_guide.html
6-3.企業のホームページを見る
もし、就職したい企業や気になる企業が決まっているのなら、その企業のホームページを見てみましょう。
採用ページに障がい者枠の求人が掲載されている可能性もあります。理念に共感できるような会社をいくつか選び、それらの会社のホームページの求人情報を確認するのも良いでしょう。
7.まとめ
障がいがある方が働くには、障がい者雇用枠で採用される方法と、一般雇用枠で採用される方法の2つの方法があります。
どちらもメリットとデメリットがありますが、障がい特性に対する配慮が必要な方にとっては、障がい者雇用枠で採用されるほうが安心です。
また、障がいがある方のなかには、必要な配慮さえあれば障がいに関係なく社会で活躍できる方もたくさんいると思います。障がいを理由に活躍の場を狭めてしまわないよう、必要な支援やサポートを受けながら自分らしく働ける職場を探しましょう。
UTハートフル株式会社では、「はたらく力で、イキイキをつくる。」をより多くの方が実現できるよう、雇用創造を積極的に推進し、障がいのある方の社会参加を応援しています。
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