工場の仕事内容
更新日:2024年12月13日

消防設備士とは?資格の種類や取得方法、仕事内容や魅力・メリットを徹底解説

消防設備士とは?資格の種類や取得方法、仕事内容や魅力・メリットを徹底解説

この記事で分かること

  • 消防設備士の仕事は建物内の消防設備の点検・整備をおこない、人の命と安全を守ること
  • 消防設備士になるには甲種か乙種の国家資格が必要だが、乙種は受験資格が設けられておらず誰でも挑戦可能
  • 消防設備士は、さまざまな施設で必要とされ、一生の仕事として続けられるなどのメリットがある
  • 消防設備士は人の命を守る仕事で体力もいるため、責任感の強い人・体を動かすことが好きな人におすすめ
  • 消防設備士として活躍するには、危険物取扱者・電気工事士・電気主任技術者など関連資格の取得も重要

※この記事は6分30秒で読めます。

「消防設備士ってどのような仕事?」
「消防設備士として働くメリットが知りたい」
など、消防設備士の仕事に関して疑問を持っている人もいるでしょう。

消防設備士は、公共施設や工場などの消防設備の点検・整備ができる国家資格であり、手に職をつけたい人や需要のある業界で働きたい人に向いています。

今回は、消防設備士の概要、資格の種類と資格取得までの流れ、メリット、向いている人の特徴などを解説します。この記事を読めば消防設備士のことがよくわかり、消防設備士として働く自分の未来をイメージできるでしょう。

1.消防設備士とは

消防設備士とは、施設に設置されている消防設備の点検・整備をおこなう仕事です。消防設備士になるには1965年の消防法改正により制定された国家資格が必要です。

消火器や火災報知器、スプリンクラーなど、建物内に設置された消防設備を点検したり整備したりといった仕事は、消防設備士を持った人のみ従事できます。いわゆる「業務独占資格」であり、有資格者の活躍の場が多い仕事です。

消防設備士の資格は大きく「甲種」と「乙種」に分かれます。甲種は第1類〜第5類と特類、乙種は第1類~第7類の区分があります。

扱える消防用設備は、保有している消防設備士の資格ごとに異なる点に注意が必要です。消防設備士の業務範囲は、取得した資格区分によって以下のように異なります。

免状の種類 類別 消防用設備等
甲種 特類 特殊消防用設備等 (従来の消防用設備等に代わり、総務大臣が当該消防用設備等と同等以上の性能があると認定した設備等)
甲種又は乙種 第1類 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備
第2類 泡消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、特定駐車場用泡消火設備
第3類 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備
第4類 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備
第5類 金属製避難はしご、救助袋、緩降機
乙種 第6類 消火器
第7類 漏電火災警報器

乙種は、消防用設備等の整備・点検業務のみ従事できる資格です。一方、甲種は乙種の上位資格であり、点検と整備に加えて設置工事まで携われます。

甲種特類を取得すると、乙種・甲種の資格分類では扱っていない「特殊消防設備」の点検や工事が可能です。

2.消防設備士の仕事内容

消防設備士の仕事は、建物に消防設備を導入する段階から始まります。設計士や建築士と協力し、建物内で消化設備や自動火災報知機、スプリンクラーシステムなどが効果的に機能するよう知識を提供します。

また、導入後も上記の設備を定期的に点検します。異常が見られる場合は修理や部品交換をおこない、その記録を管理します。

商業施設やホテル、劇場などの施設の消防用設備や警備設備の点検整備・設置工事などが、現場の一例です。公共施設やビルなどでは定期的に消防設備を点検することが法律で定められていることから、全国どこでも仕事を見つけるチャンスがあります。

消防設備士の資格は3つに分かれており、乙種はさらに1~7類、甲種は1~5類に細分化されます。1類はスプリンクラー設備、5類は金属製避難はしごといった具合に、それぞれ扱える消防設備が異なります。

特類 総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等に関する点検・整備・工事
第1類 消火栓やスプリンクラーといった水系の消防設備
第2類 泡を使った消火設備
第3類 二酸化炭素・窒素ガス、粉末を使う消防設備
第4類 火災報知器の点検・設置・工事
第5類 火災の際の避難に使用する避難器具の点検・整備・工事
第6類 消火器の点検・整備
第7類 漏電火災警報器の点検・整備

3.消防設備士の資格を取得する魅力とメリット

ここでは、消防設備士の資格を取得する魅力とメリットについて説明します。

また、以下の記事では、消防設備士以外にも転職に役立つ資格をご紹介しているので、興味のある人はぜひご覧ください。

3-1.さまざまな施設で必要とされる

消防設備士は、消防の設備を点検・整備・工事する際の必須資格であり、業務独占資格です。

消防法により、一般の居住用住宅以外のほとんどの建物で消防設備の定期的な点検とメンテナンスが義務付けられていることから、さまざまな施設で必要とされています。

ビル、商業施設、病院など、さまざまな職場が見つかるでしょう。

3-2.一生の仕事として続けられる

消火器の点検・整備が可能な「乙種第6類」、火災報知設備の点検・整備ができる「乙種第4類」をはじめとする消防設備士資格は、今後も高い需要が見込めます。

業務独占資格という強みもあり、取得すれば就職先に困ることは少ないでしょう。手に職をつければ、定年後に再雇用を目指すことも可能です。

建物の安全には欠かせない仕事であり、景気に左右されにくい職種のため、収入が安定していたり、常に一定の求人数が見込めたりする点も魅力です。

3-3.給与が上がる可能性がある

有資格者の確保が必要な会社では、資格を持つ人に「資格手当」を支払うこともあります。

手当の金額は、資格の種類や企業によって異なりますが、資格取得によって収入のアップが期待できます。

3-4.乙種なら誰でも受験資格がある

甲種の消防設備士を受験するためには実務経験や学歴などが求められますが、乙種の消防設備士には特に受験資格が設けられていません。

そのため、乙種の消防設備士になりたい人は、誰でも試験を受験できます。(※)

消防設備士は専門性の高い職種だというイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、決して諦める必要はなく、誰でも消防設備士を目指せます。

3-5.就職や転職でアピールできる

消防設備士の資格保持者は、多種多様な現場で必要とされており、仕事の性質上、AIに置き換わることも考えにくい資格です。

法律によって定められた業務は、資格を有していなければ携わることができず、需要は常に存在します。

例えば、消防設備士の求人に応募する場合、以下のようなアピールが可能です。

【面接でのアピール例】

私は、消防設備士の仕事を通して、担当施設の利用者や住人の安全を守り、ひいては御社の利益と信頼性の確保に貢献したいと考えています。

特に、実務経験を積んで「甲種第4類」の資格も取得しているため、点検業務はもちろん、消防設備の設置などにも対応いたします。

資格を武器にして、入社後には即戦力として活躍できるでしょう。

4.消防設備士の仕事に向いている人

消防設備士は、資格の種類によっては誰でも受験でき、挑戦しやすい仕事です。ただし、どのような仕事にも向き不向きがあり、自分の希望や特性と合った仕事を見つけることが重要です。

ここからは、消防設備士に向いている人の特徴をご紹介します。

なお、以下の記事では自分に合った仕事の探し方を解説しています。仕事選びに迷っている人はぜひご覧ください。

4-1.体力に自信がある

消防設備士の通常の仕事には、ある程度の体力が求められる点は押さえておきましょう。

消防設備士が扱う設備はさまざまで、現場で設備をすべて点検・整備するには一定の距離を移動します。消火器や消火栓などの重い消防設備を扱う可能性がある点にも注意が必要です。

また、一日の間に複数の現場を回ることもあり、その場合は移動距離がさらに大きくなります。

そのため、普段から動くことが好きな人や体力に自信がある人に向いています。

4-2.人のために働きたい

消防設備士は、多くの人が集まる場所の防火管理を担う仕事であり、業務は人命を守ることにつながります。

「自分の仕事が人を救うこともある」という使命感に燃えた人や、人の幸せのために働きたい人に向いている仕事です。

4-3.責任感が強い

消防設備は、火災が発生したときに建物内の人の命を守る大切なものです。

安全に欠かせない点検・整備作業とその記録は、消防設備士のみによっておこなわれるため、責任感を持って丁寧に作業できる人でないと務まりません。

そのため、責任感が強い人、決まりを守って実直に作業できる人に向いています。

4-4.学習意欲がある

近年は防災に対する人々の意識が高まっており、それに合わせて今後の法改正も予想されます。

実際の事故や災害をもとに運用マニュアルもブラッシュアップされることが多いため、常に最新の法律や情報を勉強し、現場の業務へ落とし込むことが求められます。

また、有資格者であっても定期的な講習への参加は必須であり、「取得して終わり」という資格ではありません。学習意欲が高く、継続的な勉強が苦にならない人に向いているでしょう。

5.消防設備士の仕事がおすすめできない人

消防設備士は比較的誰でも挑戦しやすい仕事ですが、なかには向いていない人もいます。以下では、消防設備士の仕事がおすすめできない人の特徴をご紹介します。

5-1.コミュニケーションを取るのが苦手

消防設備士の仕事にはお客様とのやりとりが発生するため、コミュニケーションが苦手な人にはおすすめできません。

施設の所有者や利用者、他の技術者などさまざまな人と連携して作業をおこなう必要があるため、挨拶や声かけ、ヒアリングなどのコミュニケーションが大切です。

また、マンションなどの各住戸ではプライベートな空間に立ち入ることになり、場合によっては物をどけさせてもらったり、点検の順番を早めてもらったりすることもあります。

そのため、コミュニケーションに苦手意識のある人は慎重に検討しましょう。

5-2.室内で座って仕事をしたい

室内で座って仕事をしたい人には、現場作業の多い消防設備士の仕事は向いていない可能性があります。

消防設備士は現場での点検作業と書類作成の両方をすることが多く、快適なオフィスなどでずっと座って仕事をするわけではありません。

そのため、一つの場所でじっくり仕事をしたい人や、体を動かすことが苦手な人にはおすすめできません。

6.消防設備士の資格を取得する方法

消防設備士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで試験を突破する必要があります。ここからは、消防設備士の資格を取得するための方法を見ていきましょう。

6-1.消防設備士の受験資格

同じ消防設備士でも、「乙種」と「甲種」で受験資格は異なります。また、甲類は資格を満たさないと資格試験を受けることはできません。

6-1-1.乙種消防設備士

乙種の場合、特別な受験資格は特にありません。第1~7類まで誰でも受験することができます。

6-1-2.甲種消防設備士

甲種の試験を受けるには、一定の受験資格を満たしている必要があります。

資格の取得や現場での実務経験、一定の学科(機械や電気、工業化学、土木または建築に関する学科)や課程の修了といった制限があるため、自身が受験資格を満たしていることを確認してから申し込むようにしましょう。

6-1-3.特類

甲種特類は「甲種の4類と5類の資格保有、甲種1類から3類のいずれか一つ、合計3種類以上の甲種の資格保有をしていること」が受験資格として定められています。

6-2.試験は筆記試験と実技試験の2つ

消防設備士の試験は「筆記試験」と「実技試験」の2つがあります。

筆記試験は四肢択一式のマークシート方式です。実技試験は機器の識別などをする「鑑別等」と「製図」があり、資格の難易度によってそれぞれの出題範囲や難易度が異なります。

6-2-1.乙種の場合

乙種の筆記試験の範囲は甲種と似ているものの、工事に関わらないことから工事に関する問題は出題されません。消防関連法令、基礎知識、構造や設備から出題されます。

6-2-2.甲種の場合

甲種1~5類の筆記試験の出題範囲は「消防関係法令、基礎的知識、構造・機能、及び工事・整備」です。実技試験では「鑑別等」と「製図」が出題されます。

6-2-3.特類の場合

法令の他、工事設備対象設備等の構造や機能、火災及び防火の3つの科目が出題範囲です。なお、特類には実技試験はありません。

6-3.消防設備士までの流れ

消防設備士になるまでには、「受験の手続きをする」「試験を受ける」というプロセスが必要であり、さらに免許取得後も定期的に講習の受講が必要です。

それぞれの手続きの流れについて解説します。

6-3-1.受験の手続きをする

消防設備士の試験回数は年2回〜4回が多く、都道府県ごとによって違いがあります。

全国のどの試験センターでも受験できるため、都合の良い日程で開催されている試験会場を選択しましょう。

受験費用は以下のとおりです。

甲種:6,600円

乙種:4,400円

申し込み方法は、書面申請(願書による申請)と電子申請(インターネットによる申請)の2通りがあります。

書面申請の場合、各都道府県の消防設備試験研究センター各支部の窓口で配布されている願書を入手しましょう。持参または郵送(受付締切日の消印有効)の方法で申し込むことができます。

オンラインにつながる環境であれば、パソコン・スマートフォンによる電子申請が可能です。

ただし、受験同日に危険物取扱物試験と併願する人や、免状番号のない古い消防設備士の免状が手元にある人などは、電子申請ができません。

電子申請を希望する人は、公式ホームページで条件を確認しましょう。

6-3-2.試験を受ける

各都道府県にある消防試験研究センターの指定場所が試験会場になります。場所は受験票に記載されているので、必ず確認しておきましょう。

6-3-3.免許取得後も定期講習を受講する

乙種、甲種に関係なく、消防設備士の資格を持っている人は「消防設備士講習」の受講が必要です。

人命に関わる業務であることに加え、社会情勢、消防法や消防設備の時代に合わせた変化などに対応していくため、資格取得後も定期講習の受講が義務付けられています。

受講の主な申請方法は、郵送や窓口、電子申請です。

ただし、都道府県ごとに申請先や手順が異なるため、各都道府県の消防試験研究センター支部や消防庁などのページを確認する必要があります。

6-4.消防設備士の合格率

消防設備士の合格率は、甲種で30%弱、乙種で40%弱となっています。

令和5年度の受験者数と合格率は以下のとおりです。

【甲種・令和5年度】

区分 甲種
特類 1類 2類 3類 4類 5類 甲種計
受験者 1,125 11,721 3,865 3,910 19,205 3,581 43,407
合格者 325 2,619 1,170 1,012 6,210 1,240 12,576
合格率 28.9 22.3 30.3 25.9 32.3 34.0 29.0

【乙種・令和5年度】

区分 乙種
1類 2類 3類 4類 5類 6類 7類 乙種計
受験者 2,137 679 1,144 8,384 1,232 25,136 5,469 44,181
合格者 602 175 253 2,882 415 9,567 3,300 17,194
合格率 28.2 25.8 22.1 34.4 33.7 38.1 60.3 38.9

7.取得しておきたい消防設備士の関連資格

消防設備士として活躍の幅を広げるためには、消防設備士の資格とあわせて関連資格も取得していくことがおすすめです。

ここでは、取得しておきたい関連資格3つをご紹介します。

7-1.危険物取扱者

危険物取扱者は、ガソリンや灯油など消防法により定められた危険物を取り扱ったり、危険物の取扱いに立ち会ったりするために必要な国家資格です。

消防設備士と同様に施設の安全を守る役割であり、両方の取得で仕事の幅が広がります。

危険物取扱者の資格には甲種、乙種、丙種の3種類があります。甲種には受験資格が設けられていますが、乙種と丙種にはないため、誰でも挑戦可能です。

特にもっとも取得しやすい「丙種」の令和5年度の合格率は48.4%であり、しっかりと対策をすれば十分に合格できる試験といえます。

7-2.電気工事士

電気工事士は、ビルや工場、一般住宅などの電気設備を守るための工事に必要な国家資格です。

消防設備士と同様に施設の電気に関する資格なので、両方取得すれば実務の幅が広がります。

例えば、点検に関する依頼を受けた際に、電気工事に関する相談を追加で受けても、専門家の立場で答えられます。

電気工事士の資格を取得していると、申請により消防設備士の試験科目の一部が免除になるため、学習範囲が少なくて済むこともメリットです。

また、最初に目指す第二種の合格率をみると、令和5年度は学科試験で59.4%、技能試験で71.1%であり、取得しやすい傾向にあります。

7-3.電気主任技術者

電気主任技術者とは、発電所や変電所、ビル、工場などの電気設備の保安監督をおこなうために必要な国家資格です。

電気設備を設けている事業主は、電気主任技術者を選任することが義務づけられており、電気に関わる仕事の中でも需要が高い傾向があります。

電気工事士と同じく、資格を取得していると消防設備士の試験科目が一部免除になります。

ただし、もっとも難易度が低い第三種でも、令和6年度上期の合格率が16.0%であるなど、取得が難しい資格です。そのため、計画的に学習するなど万全の試験対策が必要です。

8.まとめ

消防設備士とは、消防設備の点検・整備・工事に携わる国家資格を持った人で、施設の安全に欠かせない役割を担っています。

また、消防設備士の資格を取得すると、さまざまな現場で活躍できる、一生の仕事として続けられるなど多くのメリットを享受できます。

消防設備士の仕事は、体力に自信のある人や責任感の強い人におすすめです。一方、コミュニケーションが苦手な人など、なかにはおすすめできない人もいるため注意しましょう。

消防設備士の資格に加えて、危険物取扱者などの関連資格も取得すると、より活躍の場が広がります。

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