工場の仕事内容
更新日:2023年02月27日

衛生管理者とは?仕事内容や資格、活躍できる職場を徹底解説

衛生管理者とは?仕事内容や資格、活躍できる職場を徹底解説

※この記事は6分30秒で読めます。

「衛生管理者ってどんな仕事?」
「衛生管理者として働くメリットが知りたい」
など、衛生管理者に関して疑問を持っている方もいるでしょう。

衛生管理者は職場の安全や従業員の健康状態を管理する仕事であり、一定規模以上の事業所で選任する義務があることから高い需要があります。

今回は、衛生管理者の概要、メリット、向いている人の特徴などを解説します。この記事を読めば、衛生管理者のことがよくわかり、転職後の働き方をイメージできるようになります。

1.衛生管理者とは

衛生管理者は、労働安全衛生法によって定められた国家資格です。従業員が50人以上いる職場では、職場専属の衛生管理者を選任しなければなりません。

衛生管理者の主な仕事は、労働災害や労働者の健康障害を防止することです。事業場の衛生管理や労働者の健康管理のほか、衛生教育も衛生管理者の仕事になります。

衛生管理者は日本独自の制度です。事業所の衛生管理を医師だけでおこなうことは困難だったため、労働安全衛生法(安衛法)が1972年に制定されました。直近では2019年に、労働安全衛生法の改正がおこなわれています。

2.衛生管理者の仕事内容

衛生管理者の仕事内容について紹介します。設置義務を怠ると罰則がある重要な資格であり、事業場の安全衛生のための重要な役割を担っています。

2-1.衛生管理者の業務

衛生管理者の存在は、労働者の健康障害を衛生的な観点から防止する役割があります。作業場の衛生調査や衛生教育、救急用具の点検、健康相談、衛生安全計画の立案・実施、衛生日誌の作成・記録などが業務です。

一般財団法人 安全衛生普及センター」が掲示している衛生管理者の仕事内容について、詳細に見ていきましょう。

2-1-1.健康に異常がある人を発見・処置

従業員のなかに、健康に問題がある人を発見して適切な処置をおこなう業務です。

発見の対象は、過剰な残業などによる体力的な面で問題を抱えた人だけではありません。一見すると健康でも、人間関係や仕事の悩みでストレスを抱えた人もいます。

2-1-2.作業環境の衛生上の調査

従業員が健康で働けるよう、職場の安全衛生をチェックするのも衛生管理者の仕事です。チェックリストなどで項目を管理したうえで、定期的な巡視によって全部の項目を満たしているか確認します。

例えば、業務によっては「照明の明るさが〇〇ルクス以上」などと規定されている場合もあります。労働安全衛生規則では、彩光や照明に関して以下のように規定しています。

作業の区分 基準
精密な作業 300ルクス以上
普通の作業 150ルクス以上
粗な作業 70ルクス

その他にも、以下のような項目について確認が必要です。

  • 換気はしっかりおこなわれているか
  • 労働時間は適正の範囲内であるか
  • 災害対策は準備されているか
  • トイレや洗面器具は清潔になっているか など

2-1-3.作業条件、施設などの衛生上の改善

労働者が就業する条件や施設に関して、衛生面で問題点がないかを確認する業務です。衛生上の問題を発見した際は対策を講じて改善させることになります。

例えば故障しかけた機械をそのまま使っていると事故の危険があり、効率的な作業も望めません。安全な新品に交換したうえで、安全な取り扱い方法を周知する必要があります。

職場環境を衛生的にすることで作業効率が上がり、結果的に生産性や業績向上につながることもある重要な仕事です。

2-1-4.労働衛生保護具、救急用具の点検・整備

労働衛生保護具とは「呼吸用保護具」「化学防護手袋」「保護メガネ」「AED」「薬」「包帯」などのことです。労働安全衛生法ではこれらを備え付けておくだけでなく、従業員への周知も義務付けられています。

救急用具などは、いざという時にすぐ使えるように、整備された状態を保っておくことも重要な仕事です。

2-1-5.衛生教育や健康相談、健康保持

労働者の健康に関する相談を受けるなど、労働者が自分で健康を管理するための手助けも衛生管理者の仕事です。衛生管理者だけでは対処が難しい場合、産業医や保健師とも連携する場合があります。

衛生教育は、従業員を新たに雇用した場合や、作業内容の変更時などに必要です。衛生教育の内容によっては、外部講師を招いてセミナーを実施することもあります。

2-1-6.負傷や疾病、死亡、欠勤に関する統計を作成

職場で発生した負傷や疾病、それにともなった死亡や欠勤に関する統計を作ることも、衛生管理者の仕事の1つです。

労災に関する情報は衛生管理者を中心に、衛生委員会で報告する体制をとっている企業もあります。作成した統計をもとに職場環境を分析することで、労災の防止のために改善をおこなうことが可能になります。

2-1-7.他の事業労働者と同じ場所で作業する際の安全衛生措置

雇用形態が違う人が、派遣や出向という形で同じ職場で働くことも珍しくありません。そのような場合の衛生管理に関する事項も、衛生管理者の業務です。

2-1-8.その他、衛生日誌や職務上の記録を整備

従業員の健康状態や施設の安全性などを、衛生日誌に日々記録として残すことも衛生管理者の仕事です。「欠勤した人の氏名」「発生した労災」「アクシデントの内容」など、安全衛生に関することを記載します。

衛生日誌を作成することで、従業員の労働衛生に関して気付きを得るチャンスになるでしょう。衛生日誌の気になる部分は衛生委員会で報告するなど、改善のための対応をおこなうことも重要な仕事です。

2-2.衛生管理者を配置しない場合の罰則

事業場の労働者数が50名に達した場合、衛生管理者の選任義務が発生します。義務が発生した状態で選任義務を怠ると労働基準監督署から是正勧告を受けるほか、同法第120条によって50万円以下の罰金に処されることもあります。

ただちに罰金というわけではありませんが、注意喚起を受けたあとはすぐに衛生管理者の資格取得者を選んで選任届を出すことが必要です。

3.衛生管理者になるには

衛生管理者になるには、下記いずれかの国家試験に合格する必要があります。
  • 第一種衛生管理者試験
  • 第二種衛生管理者試験

試験は公益財団法人安全衛生技術試験協会が実施し、全国7つの安全衛生技術センターで毎月1~3回おこなわれます。

  • 北海道安全衛生技術センター(北海道恵庭市)
  • 東北安全衛生技術センター(宮城県岩沼市)
  • 関東安全衛生技術センター(千葉県市原市)
  • 中部安全衛生技術センター(愛知県東海市)
  • 近畿安全衛生技術センター(兵庫県加古川市)
  • 中国四国安全衛生技術センター(広島県福山市)
  • 九州安全衛生技術センター(福岡県久留米市)

受験手数料はどちらも6,800円で、一度合格すれば更新の必要はありません。

4.衛生管理者の資格の種類

衛生管理者免許は大きく分けて「衛生工学衛生管理者」「第一種衛生管理者」「第二種衛生管理者」の3種類があります。ここでは第一種衛生管理者、第二種衛生管理者について、資格の内容について解説します。

4-1.第一種衛生管理者

有害業務を含む業種で衛生管理者として働ける資格です。建設業や運送業、農林水産業、鉱業、熱供給業、電気業、ガス業、水道業、自動車整備業、機械修理業、清掃業、製造業、医療業といった有害業務のリスクがある業種で設置する衛生管理者は、第一種衛生管理者免許を所持していることが必要です。

4-2.第二種衛生管理者

有害業務との関連性が小さい業種で衛生管理者として働くことができる資格です。金融・保険業、情報通信業、教育業、卸売小売業といった営業やデスクワーク、小売業等では第二種衛生管理者免許を活かせます。

命に関わる重篤な健康被害が起こる可能性が低い一方、鬱病のようなメンタルヘルスに関しては十分に気を配る必要があるでしょう。

4-3.第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違い

第一種と第二種の違いは「選任できる業種の数」です。業種によって労災のリスクが異なるため、2種類に分けられています。第一種免許は有害な業務が発生する職場を含む全業種で対応が可能なのに対して、第二種免許をもっていても対応できない業種があります。

職務上で免許取得が求められる場合は、在籍する職場がどの業種になり、どちらを取得すべきか確認することが重要です。

5.衛生管理者の資格を取得する方法

衛生管理者の資格を取得するには国家試験への合格が必須です。ここからは、衛生管理者の資格を取得する方法・流れについて解説します。

5-1.衛生管理者の受験資格

衛生管理者免許を取得するためには、次のいずれかの受験資格を満たすことが必要です。受験資格は第一種衛生管理者と第二種衛生管理者で変わりません。第二種衛生管理者の免許がなくても第一種衛生管理者に挑戦することができます。

  • 最終学歴が大学卒業・短期大学卒業・高等専門学校卒業で、かつ労働衛生の実務経験が1年以上ある
  • 最終学歴が高等学校卒業または中等教育学校卒業で、かつ3年以上の労働衛生の実務経験がある
  • 10年以上労働衛生の実務経験がある人
  • 上記3つのほか、「海外の学校を卒業した人」「高度職業訓練を受けた人」「特別支援学校の高等部を卒業した人」などのうち、一定の実務経験がある人

5-2.資格取得までの流れ

公益財団法人 安全衛生技術試験協会がおこなう国家試験に合格する必要があります。取得までの流れは、以下のプロセスで進んでいきます。

  • 受験申し込みをする
  • 衛生管理者試験を受ける
  • 合格後に必要な手続きをおこなう

なお、合格の条件は「科目ごとに40%以上の得点」かつ「総得点60%以上」です。

5-2-1.受験申し込みをする

試験日の2週間前までに受験申し込みをします。安全衛生技術試験協会もしくは全国にある7つの安全衛生技術センターへ受験申込書を請求しましょう。

郵送もしくは窓口で受験申し込みを提出すると受験票が届きます。試験手数料は第一種衛生管理者試験と第二種衛生管理者試験のどちらも6,800円です。受験料は受験申請書に封入されている用紙で振り込みます。

5-2-2.衛生管理者試験を受ける

全国7ブロックのいずれかの安全衛生技術センターにて衛生管理者試験を受けます。試験は1ヵ月に複数回実施されており、詳細は「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」の公式ホームページで公開されています。

試験は第一種・第二種ともに「労働衛生」「関係法令」「労働整理」の3科目が出題され、出題範囲・出題数(配点)は以下のとおりです。

種類 試験科目 試験時間
範囲 出題数(配点)
第一種衛生管理者 労働衛生 有害業務に係るもの 10問(80点) 13:30~16:30 3時間

科目免除者は
13:30~15:45 2時間15分
有害業務に係るもの以外のもの 7問(70点)
関係法令 有害業務に係るもの 10問(80点)
有害業務に係るもの以外のもの 7問(70点)
労働管理 10問(100点)
第二種衛生管理者 労働衛生(有害業務に係るものを除く。) 10問(100点) 13:30~16:30 3時間

科目免除者は
13:30~15:45 2時間15分
関係法令(有害業務に係るものを除く。) 10問(100点)
労働生理 10問(100点)

5-2-3.合格後に必要な手続き

合格者には合格通知書が住所に届くため、到着したら免許申請をおこないます。免許申請書は労働局や安全衛生技術センターで配布しているので取得に行くか、厚生労働省のホームページからダウンロードも可能です。

必要書類を添えて、東京労働局へ提出しましょう。なお、免許申請の際に提出が求められる書類は以下のとおりです。

  • 衛生管理者試験免許申請書
  • 衛生管理者試験の合格通知書
  • 証明写真(縦30mm×横240mm)
  • 1,500円分の収入印紙
  • 専用の定型封筒

免許申請書や定型封筒は試験会場で配布されています。

【提出先】
〒108-0014
東京都港区芝5丁目35番2号 安全衛生総合会館内
東京労働局 免許証発行センター

5-2-4.免許取得後について

50人以上の社員を雇用している企業は衛生管理者資格保有者を選任する義務があるため、合格後には上司に報告しておきましょう。会社によっては資格手当が支給される可能性もあります。

一度取得すれば免許の更新は不要ですが、法改正がおこなわれることもあるため定期的に労働衛生に関する知識のアップデートは必要です。

6.衛生管理者の資格を取得するメリット

50人以上の労働者がいる事業所では衛生管理者を必ず選任することが労働安全衛生法で定められています。加えて、事業所の労働者数によって配置する衛生管理者の数も以下のように決められています

事業所の労働者数 衛生管理者の数
50~200人 1人
201~500人 2人
501~1,000人 3人
1001~2,000人 4人
2,001~3,000人 5人
3,001人以上 6人

一定以上の事業所では必須資格であることから、有資格者であれば就職・転職で有利です。資格を取得しているだけでも、企業から即戦力と見られる可能性もあります。ほかにもさまざまなメリットがあるため、ここで詳しくご紹介します。

6-1.管理職に昇進する場合がある

人事や総務の管理職に必要とされる資格であるため、企業によっては資格取得後に管理職へ昇進するケースもあります。

6-2.資格手当がもらえる

企業によっては給与に資格手当が付与されることがあります。毎月の賃金に資格手当が上乗せされることで、年収アップも期待できるでしょう。

6-3.就職や転職で有利になる

資格保有者を置くことが法律で求められているため、資格取得者は就職や転職で有利になります。

原則として衛生管理者はほかの企業や事業所をかけ持ちで担当することはできません。そのため資格取得者が不足している企業にとって、有資格者を雇用する重要性は高いと想定されます。

また、衛生管理者の資格があれば、衛生管理職だけでなく、労務管理や総務などの職種でも業務に従事することが可能です。

7.衛生管理者の仕事の魅力

衛生管理者の仕事の魅力としては、「自分の力で職場の安全衛生を守れる」ということが挙げられます。

自身が策定した衛生計画をもとに職場が一丸となって取り組んだ結果、労働環境を変えることも可能であり、やりがいを感じることができるでしょう。

健康が守られることによって従業員のモチベーションが上がるだけでなく、業務の生産性の向上、ひいては企業の成長にもつながっていきます。また、劣悪な環境で働く人を救済する意味でも社会貢献の実感が得られる仕事だといえるでしょう。

8.衛生管理者の仕事に向いている人

どのような仕事でも人によって向き・不向きがあります。ここからは、衛生管理者に向いている人の特徴についてみていきましょう。

8-1.責任感が強い人

衛生上の技術的な事項を管理するほか、定期的な巡視、記録や統計の整備など安全衛生業務に対して高い意識をもって職務を全うできることが求められます。

時として会社(上司、役職員)に対して改善を求めて説得をせねばならず、責任感が強い人に向いています。

8-2.学習意欲が高く変化に対応できる人

毎年のようにおこなわれる法改正だけでなく、時代や環境も常に変化していきます。それとともに職場に求められる基準も変えていくことが求められるため、積極的に情報を収集し、管理に取り入れていかなければなりません。そのため学習意欲が高く、変化にも柔軟に対応できる人が向いています。

9.まとめ

衛生管理者は事業場の安全や従業員の健康を守るために働く仕事です。従業員が50名以上の事業場では選任義務があるため、有資格者は就職・転職で有利になるでしょう。

企業によっては管理職への昇進に有利に働いたり、資格手当が受け取れたりすることもあります。

決して簡単な試験ではありませんが、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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