自動車検査員とは?仕事内容や平均給与、必要な資格や向いている方の特徴を解説
※この記事は5分30秒で読めます。
「自動車検査員ってどのような仕事?」
「自動車検査員と整備士の違いを知りたい」
など、自動車検査員の仕事に関して疑問や興味を持っている方もいるでしょう。
自動車検査員は整備士がおこなった車検整備の点検業務を担う仕事であり、その重要性や責任の重さから、みなし公務員の扱いを受けます。
今回は、自動車検査員の概要、自動車整備士との違い、活躍できる現場、仕事内容、向いている方の特徴などを解説します。この記事を読めば自動車検査員のことがよくわかり、自身にマッチした仕事かどうかを判断できるようになります。
エリアから工場・製造業のお仕事を探す
1.自動車検査員とは?
自動車検査員は、車検整備を完了させた車に関して最終チェックをおこなう役割を担います。自動車検査員は国家資格であり、国家試験の自動車検査員試験に合格する必要があります。
街中にある整備工場には指定工場と認定工場の2種類がありますが、車検検査がおこなえるかどうかに違いがあります。車検検査をおこなえるのは指定工場のほうで、陸運局まで車を持ち込まなくても車検が完了します。
指定工場で車検検査をおこなうのが、自動車検査員の資格を取得している従業員です。保安基準適合証などの書類の作成・保管、検査に関する業務の監督・指導も、自動車検査員の仕事です。
1-1.自動車整備士との違い
自動車整備士は、自動車の定期点検や保守・修理作業などをおこなう仕事です。車が安全に走行できるように整備をおこなうのに不可欠な仕事であり、こちらも国家試験に合格する必要があります。
自動車の車検整備に関わるという点では共通する両者ですが、明確に異なる別の資格です。自動車整備士は自動車を整備することが仕事である一方、自動車検査員は整備内容を検査して安全かどうかを判断することが仕事となります。
自動車検査員は、自動車整備士の上位資格ともいえるものです。自動車検査員になるには、整備士の資格を持ったうえで整備主任者に任命され、そのあとに国家試験に合格する必要があります。
以下の記事では、自動車整備士について詳しく解説しています。
2.自動車検査員の仕事内容と働く現場
指定工場には、自動車検査員を1人ずつ配置することが法律で義務付けられています。自動車検査員が活躍するのは、主に指定工場です。
また、自動車検査員の仕事には大きく分けて以下の6つがあります。
2-1.車検の保管基準の適合性の検査
車両の外観、内装、エンジン、サスペンション、ブレーキ、タイヤ、ステアリングといった項目を点検し、保安基準に適合しているか、不具合や異常がないかのチェックをおこなうことが、自動車検査員の基本的な仕事です。
車両の運転席に座って、運転性能やブレーキ、揺れ、振動などをチェックする試乗テストや、車両の排気ガス量を測定する計測機器の操作なども仕事内容に含まれます。
2-2.証明書類の作成と確保
車両を検査した結果をもとに点検結果書を作成し、まとめておく仕事です。
書類は自動車のオーナーが目にするので、わかりやすくまとめる能力も求められます。
2-3.検査指導や監督業務
ベテランの自動車検査員の場合、新人・若手の自動車検査員を指導することも重要な仕事となります。
また、検査結果について自働車オーナーに説明をし、安全に運転できるようなアドバイスをすることも業務に含まれます。
2-4.検査施設の管理
車検に使用する設備工場の管理も、実は自動車検査員の仕事です。
定期点検を実施して正確な検査ができることを確認し、不具合を発見した際は速やかに改善できるよう報告をおこないます。
2-5.法令の情報や知識の把握
自動車検査の内容や項目、基準などは、自動車関係法令の改正や国からの通達によって変更になることがあります。
法令が変わったあとにすぐ対応できるよう、最新の法律関連の情報を把握しておくことも必要です。
2-6.事故防止の徹底と把握
検査場内で整備作業中の事故が発生しないよう安全対策を講じることも、自動車検査員の仕事の1つです。
検査ラインで事故が起きると、人命が危険にさらされることはもちろん、検査ラインを閉鎖しなくてはいけなくなります。検査業務の円滑な運営のためにも、事故は徹底的に予防しなければいけません。
3.自動車検査員の平均給与
自動車検査員の平均年収は、正社員で約370万円とされています。月給換算では31万円、初任給は約20万円になる計算です。派遣社員では平均時給1,350円程度、アルバイト・パートでは1,100円程度が相場のようです。
国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本の平均年収は433万円であり、自動車検査員の年収は全国的な平均年収よりも低い水準となっています。
-
参照:国税庁|令和3年分民間給与実態統計調査
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2021.htm
しかしながら、関西地方を中心に平均年収が高めの傾向にある地域もあり、なかでも奈良県の平均年収は400万円を超えています。
また、求人情報を見てみると、月給最大40万円と平均月収より10万円近く高い職場や、時給が3,000円近い派遣社員の求人も見つかります。
ベテラン自動車検査員として後輩を指導するポジションになれば、平均よりも高い年収を獲得できる可能性も十分にあるでしょう。
4.自動車検査員が向いている方の特徴
自動車検査員は車を点検することが主な業務であり、向き・不向きがハッキリわかれる仕事でもあります。ここでは自動車検査員に向いている人の特徴をご紹介します。
4-1.車が好き
自動車検査員は、車検整備がおこなわれた車を点検することが主な業務です。整備内容を点検するということは、自動車の複雑な構造を理解するだけでなく、自動車整備士の作業内容までしっかり把握しておく必要があります。
また車ごとに外観も内部の構造も異なるため、車種の数だけ整備に関する知識が求められるでしょう。
車が好きで、車の構造や検査項目に関して覚えることが苦にならない方に、自動車検査員は向いている可能性があります。
4-2.こまかな作業が得意
自動車の検査に関する仕事では、細かいパーツをチェックすることも少なくありません。手先が器用で細かな部品の扱いが苦手でない方のほうが、向いている傾向があるでしょう。
ただ、もともと不器用だとしても、手先の器用さは訓練や経験によって身につけることもできます。手先の器用さはあくまでプラスαの要素なので、不器用だからといって自動車検査員を諦める必要はありません。
4-3.コミュニケーション力に自信がある
自動車検査員は一人で淡々と作業をすることは少なく、ほかの作業員と連携して作業をすることになります。
また、自動車点検の結果を車のオーナーに説明する場面や、上司から指示を受けたり後輩に指示を出したりする場面も少なくありません。そのため、人と会話したり協議したりといったコミュニケーションを得意としている方に向いている可能性があるでしょう。
5.自動車検査員になるには講習と試験が必要
自動車検査員になるには、定められた講習を受講したうえで国家試験に合格する必要があります。ここでは、講習と試験それぞれの概要をご紹介します。
5-1.自動車検査員教習
自動車検査員教習を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 指定工場(申請中または申請準備中も含む)に勤務していること。
- 整備主任者として教習日までに1年以上(1級整備士資格取得者は6ヵ月以上)の実務経験があること。
- 前年度の整備主任者(法令)研修を受講していること。
参照:神奈川県自動車整備振興会|令和5年度第1回 自動車検査員教習の実施について
https://www.car-jp.com/topics/2023/04/content-1.html
また、受講の申請時には以下の書類も必要になります。
【自動車検査員教習の受講を申請する際の必要書類】
- 申請書1枚
- 4×3cmの写真2枚
- はがき2枚(申請者の氏名、郵便番号、住所などを記入したもの)
- 自動車整備士資格を証明できるもの(整備士手帳または合格証書(写)等
- 整備主任者の研修受講状況がわかるもの(整備士手帳等)
- 費用(19,800円)
教習では、道路運送車両法などの法律に関すること、自動車検査用機械器具の構造と取り扱い、自動車検査の実施方法など、実務に関連が深い内容まで学びます。
4日間の教習すべてに遅刻なしで出席しないと、修了試験を受けることはできません。
-
参照:神奈川県自動車整備振興会|令和5年度第1回 自動車検査員教習の実施について
https://www.car-jp.com/topics/2023/04/content-1.html
5-2.自動車検査員試験
教習のあとには自動車検査員教習試験を受けます。この試験に合格することが自動車検査員になるための条件となります。
試験の内容は、検査に関する項目、基礎法令・整備士法令の2つです。選択式と計算問題が約100問出題されます。詳細な日程に関しては各運輸局によって異なる場合がありますが、8月と12月の年2回にわたって開催されるのが一般的です。
合格するには、全体の8割かつ各章で6割以上の正答率が必要です。合格率は実施場所によって異なりますが、例年の合格率は50%~70%とされています。
合格を目指して事前に勉強するなら、以下の3つの対策が考えられます。
- 各自動車整備振興会の公式サイトで過去問を入手する
- 市販の過去問題集を購入する
- 各自動車整備振興会が主催する予備講習を受ける
どの試験にも共通することですが、やはり過去問を何回もやりこむことが合格への近道です。各自動車整備振興会の公式サイトで過去問を入手できるので、まずは過去問を解いてみることをおすすめします。
詳細な解説が欲しい場合は、市販の過去問題集を購入しても良いでしょう。
また、各自動車整備振興会では予備講習を開催しているところもあります。講師による直接講義を受けたい場合は、自分が所属する自動車整備振興会の公式サイトを確認してみましょう。
6.未経験でも自動車検査員になれる?
自動車検査員の資格を得るには、1級自動車整備士または2級自動車整備士の資格を持っていること、整備主任者として1年以上の実務経験があることなどが求められます。よって自動車整備士だからといっても整備未経験で検査員にはなれません。
しかし、要件を満たせば、自動車検査員としての実務経験がなくても検査員を目指すことは可能です。
将来的に自動車検査員を目指すなら、まずは整備士としてのキャリアと経験を積むことから始めましょう。
7.まとめ
自動車検査員は、その責任の重さからみなし公務員として扱われるなど、自動車整備士の上位資格の位置づけとなっています。
自動車の整備・点検に関わる仕事がしたいなら、キャリアの頂点ともいえる自動車検査員の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
JOBPALでは、工場関連の求人を数多く取り扱っています。自動車検査員に興味がある未経験者の方は、まずは整備士の仕事探しから始めてみましょう。