品質管理の仕事内容とは?平均給与ややりがい、向いている方の特徴を解説
※この記事は6分30秒で読めます。
「品質管理ってどのような仕事?」
「品質管理の仕事のやりがいが知りたい」
など、品質管理に関して疑問を持っている方もいるでしょう。
品質管理は、自社製品の品質向上の取り組みやクレーム対処をする仕事であり、企業のブランド力向上に大きく貢献できます。
今回は、品質管理の仕事の概要、仕事内容、やりがい、向いている方の特徴などを解説します。この記事を読めば品質管理の仕事のことがよくわかり、転職活動の際の参考にできます。
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1.品質管理とは?
品質管理とは、自社の工場で作られた製品の品質を管理する仕事です。食品、家電、自動車、小型部品など、どの製造現場においても必要不可欠な工程となっています。
製品の不良や不具合を防げないまま市場に出してしまうと、ユーザーの健康被害や事故発生につながってしまう恐れがあります。それにより会社が社会的信用を失うことを防ぐため、品質管理では製品の不備が見つかった際の顧客対応や再発防止策の策定などもおこないます。
また、新入社員でもベテラン社員に近い仕事ができるよう、作業手順の標準化や品質を維持するための設備投資なども品質管理部門が担うことがあります。
1-1.品質保証との違い
品質管理と似た仕事として品質保証もありますが、両者はまったく異なります。
品質保証(Quality Assurance)とは、自社製品が決められた品質を担保しているかを確認して顧客に品質を保証することを指します。
品質を保証する根拠になるデータを調査して証明書を作成したり、品質に関するクレームを各部署にフィードバックしたりします。品質保証には基準になる規格があり、国内規格のJIS(日本産業規格)、国際規格のISOなどがそれにあたります。
一方の品質管理は、製造時に不良品を出さないための取り組みを含むのが特徴です。工程や製造プロセスの見直しなどをおこない、万が一クレームが出た際は再発防止策を検討・策定します。
品質管理はこれから作る製品の不具合を防止する、品質保証はできあがった製品の品質を保証する、という違いがあります。
2.品質管理の仕事内容
品質管理の仕事では、PDCA(Plan/計画、Do/実行、Check/評価、Action/改善)のサイクルをもとに、製造計画を見直す、調整した製造作業の実施・検証をする、出た結果を再度見直すといったルーティンワークをおこなうことが多くなります。
ここでは、品質管理では具体的にどのような仕事をしているのかを解説します。
2-1.需要予測
生産計画を立てるにあたり、まずは製品の需要予測をおこないます。どの製品が、いつまでに、どのくらい売れるのかを過去の実績や市場動向から予測することで、過剰在庫や失注を減らすことにつなげます。
2-2.工程管理・進捗管理
品質管理は、製造現場を稼働させ、その工程や進捗を管理するのが大きな役割の一つです。需要予測から生産計画を作成し、必要な生産数や必要人員を割り出し、製造スケジュールを組むことになります。
製造工程として作成する際に一般的に必要となる書類が、QC工程表と作業標準書の2つです。
QC工程表は製品情報や管理工程をまとめた書類のことで、製造工程の問題点を洗い出したり、顧客に品質管理上の取り組みを説明したりするときに使います。
作業標準書は、QC工程表をもとに作成する作業手順説明書のことです。細かな作業手順や工具、工程ごとのポイントなどがまとめられています。作業工程が変更になった際には更新が必要なほか、新人教育の際に教科書として使われる場合もあります。
2-3.品質検証
品質検証は、製造された製品を検査することで品質を保証する作業のことです。
完成品を出荷前に検品し、顧客の仕様やISO、JISなどの規格を満たしているかを確認します。自社製品だけでなく、他社から仕入れた材料や部品、製品に問題がないかを受け入れチェックすることも重要な仕事です。
以下の記事では工場の検査作業の仕事内容や資格などについて詳しく解説しています。
2-4.品質改善
品質改善は、製品に何らかの不具合が発生したり、不良品のクレームが発生したりした場合に、原因を突き止めて再発を防止する対策を立てる仕事です。
問題の現状を把握して原因を分析し、対策の実施と効果の測定をしたうえで、QC工程表や作業標準書に反映させていきます。
また、将来的な不具合を防止するために製造ラインの問題点を洗い出し、クレームを未然に防ぐことも、品質改善の役割の一つです。
2-5.在庫管理
在庫管理も品質管理や生産管理部門の仕事の一つです。在庫に合わせて適切な生産数を調整することで、品質管理のうえでも以下のようなメリットを得られます。
- 人員の労働時間の適切な管理により過剰労働によるヒューマンエラーを防止できる
- 過剰在庫が長く倉庫に置かれることによる品質の劣化を防止できる
必要在庫は顧客のニーズや注文サイクルによっても左右されるため、どれくらいの在庫を持つかは営業部とのすり合わせも必要です。
2-6.品質教育
製品の品質を向上させるには、品質管理について正しい知識をもった製造部の現場担当者を増やすことが大切です。そこで品質管理部門では、製造部などの社員向けに品質教育を実施することもあります。
作業スキル向上や管理スキルの習得を目的とした研修およびOJTが主な教育方法です。品質管理部門の社員が自ら講師になる以外に、外部講師を呼んで品質維持・向上のための講義をしてもらうケースもあります。
3.品質管理の平均給与
厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagによれば、生産・品質管理技術者の平均給与は644万5千円です。基本的に年齢を重ねて経験を積むごとに給与は右肩上がりで増加していき、50代前半でピークの830万8,400円になります。
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参照:職業情報提供サイトjob tag「生産・品質管理技術者」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/296
一方、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によれば、全給与所得者の平均給与は458万円となっています。
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参照:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2022.htm#a-01
以上のことから、品質管理の平均給与は全体の平均と比較して高額であることがわかります。品質管理は高い専門性や企業活動を左右する責任ある立場であることなどが、高年収の要因の一つと考えられます。
4.品質管理のやりがい
品質管理は、自社製品を世に送り出すのになくてはならない仕事です。以下のようなやりがいある仕事をしたい方は品質管理の仕事に向いているでしょう。
4-1.自社製品の品質を守れる
自社製品の品質を守り、ブランド力の向上に貢献できることが、品質管理の仕事の魅力です。品質管理部門がOKを出さない限り自社製品が世に出ることはなく、企業にとっては最後の砦としての役割を担います。
また、顧客からの要望やクレームをもとに製造工程の見直しを図ることでより品質の高い製品作りに貢献できるなど、やりがいにあふれた仕事です。
4-2.ものづくりに関われる
品質管理は現場で実際に製品を製造するわけではありませんが、製造工程を見直してQC工程表や作業標準書などを作成したり、完成品の品質検証をしたりといった形でものづくりに関わることができます。
後方支援、縁の下の力持ちとしてものづくりの現場に貢献したい方にとって、品質管理はやりがいのある仕事です。
5.品質管理の大変さ
品質管理の仕事の大変さは、その責任の重さにあります。
品質管理がおこなう需要予測、工程管理、品質検証といった仕事は自社製品の品質を高める要素となり、会社の評価に直結します。小さなミスにより不良品が世のなかに出回ると大きな問題に発展することもあるため、ミスは許されません。
また、万が一クレームが発生した際は、不良品の原因究明や再生産の指示、顧客への説明などの業務を先頭に立っておこなうことになります。
やりがいに満ちた仕事ではありますが、会社の評判や業績に直結する責任ある仕事を任される大変さがあることは覚えておきましょう。
6.品質管理に求められる能力
品質管理は、自社製品の品質を保証したり不良品を防止したりという責任ある仕事を任されることから、さまざまなスキルや資質が求められる場合があります。ここでは、品質管理に求められる主な能力をご紹介します。
6-1.協調性やコミュニケーション能力
品質の向上のために生産計画を立案したり、QC工程表や作業標準を更新したりするには、現場社員との協調やコミュニケーションが必要です。
顧客からクレームが入った際には率先して顧客と接して対応し、原因の究明や対策の説明をすることになるため、その際にもコミュニケーション力が求められます。
6-2.問題解決能力
現状のどこに問題があり、どうすれば解決するかを考えられる問題解決能力や、問題解決までに試行錯誤や創意工夫を続けられる能力も、品質管理には必要不可欠です。
製品の品質を改善するには、ミスや不具合が発生しそうな工程をピックアップし、製造の改善提案や検証を繰り返す必要があります。
6-3.冷静さや臨機応変さ
品質管理部門は、顧客からクレームの電話が入った際に先頭に立って処理をすることになります。
ときには顧客から良品の生産を急ぐように注文を受けることもあるでしょう。そのようなトラブルや問題があっても落ち着いて対処できる冷静さが品質管理にはもとめられます。
また、クレームが発生した製品の生産をストップして別ラインで再生産するには別製品との生産調整も必要になり、臨機応変に対応できる能力も求められます。
6-4.数字などデータの扱い
数字やデータを扱うことに苦手意識がないことも、品質管理の重要な資質です。
品質管理では、完成した製品に問題がないかを確かめるためにさまざまな角度から数値やデータの分析をおこないます。
また品質改善でも、過去のデータなどを使って問題点を洗い出すことがあるでしょう。そのため、数字やデータを扱うことに抵抗があると仕事がスムーズに進みません。
7.品質管理の仕事に必要な資格はある?
品質管理として働くにあたって、絶対に必要な国家資格はありません。ただ、膨大な専門知識が要求されることから、関連する資格を取得して知識を得ることは仕事に大いに役立ちます。
ここでは、品質管理で役立つ3つの資格をご紹介します。
7-1.品質管理検定
品質管理検定はQC検定とも呼ばれており、さまざまな品質管理の知識や実践方法を学べる資格です。
1級から4級まで分かれており、品質管理部門の責任者から実務担当、学生まで、幅広いレベルの品質管理の知識を身につけられます。1級まで合格できれば、品質管理の責任者へのキャリアアップや転職でも役に立つでしょう。
以下の記事では品質管理検定についてより詳しく解説しています。併せてご覧ください。
7-2.生産管理オペレーション
生産管理オペレーションは、職業能力開発促進法に基づいた民間資格です。中央職業能力開発(JAVADA)が試験を実施しており、1級から3級まで区分されています。
作業管理や工程管理、設備管理など、生産管理業務の基礎的な専門知識が出題され、3級は実務経験3年程度でリーダークラスを目指す方向けの試験内容となっています。
作業管理、工程管理などの基礎や原価管理といった生産管理の基礎に加えて品質管理も試験に含まれるため、品質管理部門の方ならぜひ受けたい資格です。
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参照:中央職業能力開発協会「生産管理」分野
https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/business/seisan.html
7-3.生産管理プランニング
生産管理プランニングは生産管理オペレーションと同様、中央職業能力開発(JAVADA)が実施する試験です。
生産計画や生産システムの設計、納期管理など、生産計画に関連する問題が出題される点に特徴があります。
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参照:中央職業能力開発協会「生産管理」分野
https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/business/seisan.html
8.品質管理の仕事が向いている方の特徴
品質管理の仕事に向いているのは以下のような特徴を持つ方です。
8-1.自律性がある方
品質管理の重要な役割の一つは、不良品の発生を未然に防ぐことです。
言われたことに対応するだけの指示待ちの仕事とは違い、不具合発生の発生要因がないかを率先して見つける能力が求められます。そのため、自律性があり、積極的に考え行動できる方が品質管理に向いているでしょう。
8-2.人と関わりながら仕事をしたい方
品質管理は、現場担当者に品質改善のための工程変更をフィードバックしたり、取引先の品質管理部門と電話でやりとりしたりなど、コミュニケーション能力が求められる場面が多々あります。
製造の現場や事務職のように一人でコツコツと仕事を進める職種ではなく、周囲と連携しながら仕事を進めたい方なら、品質管理の仕事に向いているでしょう。
9.品質管理の仕事は未経験でもできる?
品質管理の仕事は多岐にわたるため、仕事内容次第では未経験でも携わることはできます。
ただし、実際には自社製品や材料、製造機械などについての専門知識が求められるため、品質管理で働く多くの方は高校、高専、大学などで機械・電気・電子・化学など工業系の基礎的な知識を身につけています。
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参照:職業情報提供サイトjob tag「生産・品質管理技術者」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/296
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10.まとめ
品質管理の仕事には、不良品の発生を未然に防いだり、生産工程を管理したりすることも含まれます。専門的な知識で自社製品の品質を保証・改善する重要な仕事です。一般的には学校で基礎知識を得た人材が採用されますが、なかには未経験可の求人もあります。
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