ワーキングプアとは?種類や原因、なりやすい職業の特徴、脱出する方法
※この記事は6分30秒で読めます。
「ワーキングプアってどんな状態?」
「ワーキングプアの現状を知りたい」
など、ワーキングプアについて疑問をもっている方もいるでしょう。
ワーキングプアとは、働いているにも関わらず生活が困窮している貧困世帯のことを指し、正規雇用を目指しても非正規雇用からなかなか抜け出せない方が多いという特徴があります。
今回は、ワーキングプアの概要、種類や原因と各国の事情、抜け出すための具体策などを解説します。この記事を読めばワーキングプアのことがよくわかり、脱出への糸口が見つかります。
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1.ワーキングプアとは?
ワーキングプアとは、働いているにも関わらず生活が困窮している貧困世帯のことを指します。日本では、一般的に基準は年収200万円以下の世帯が該当するとされています。
貧困率の上昇とともにワーキングプア率も上昇しており、1992年から2012年の20年間で2.4倍にも増加しました。2012年には10人に1人がワーキングプアだという調査結果も出ています。
給与所得者の平均給与は令和3年、4年の2年連続で増加しています。しかし、給与額の分布をみると、女性においては年収100万~200万円の方が21.5%にあたる461万人と、もっとも多い人数となっています。
配偶者がいる女性の方で家計の補助としての労働であればこの年収でも問題ありませんが、独身の女性やシングルマザーにあてはめると、典型的なワーキングプアだといえます。
また、男性においても6.2%にあたる18万人が、年収100万~200万円のワーキングプアに該当しています。
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参照:日本総研|ワーキングプアの実態とその低減に向けた課題
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/9694.pdf
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参照:国税庁|令和4年分 民間給与実態統計調査
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2022.htm
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参照:国税庁|令和4年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/002.pdf
2.ワーキングプアの種類
ワーキングプアといっても、その実態はさまざまです。さまざまな事情で給与の低い職業に就くしかなく、ワーキングプアとして生活苦に陥っている方がいます。
2-1.高学歴ワーキングプア
高学歴ワーキングプアとは、大学や大学院を卒業しているにも関わらず、一流企業への就職ができず、そのまま無職または非正規雇用になってしまった方のことを指します。
令和5年に大学を卒業した方のうち1.6%にあたる9,500人の方が正規雇用で就職できず、有期雇用や臨時労働に従事しています。
大学院を卒業した方でも1.2%の方が非正規雇用となっており、高学歴を持っていても非正規雇用で働いている方も一定数いることがわかります。
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参照:文部科学省|令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値を公表します。
https://www.mext.go.jp/content/20230823-mxt_chousa01-000031377_001.pdf
2-2.中高年ワーキングプア
中高年ワーキングプアとは、正規雇用を目指しているものの、なかなか採用されず、非正規雇用で働き続けている方のことを指します。
中高年の非正規雇用労働者は2017年において167万人となっており、これは2016年の新社会人の人数よりも多い人数です。
中高年の場合、一度正規雇用から外れて非正規として働いてしまうと、そこからまた正社員になるのは難しいという現状もあります。そのため、生活困窮から抜け出すきっかけがつかめず、そのまま高齢期を迎えてしまうケースもあります。
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参照:日本総研|中高年ワーキングプアの現状と課題
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/10560.pdf
2-3.官製ワーキングプア
官製ワーキングプアとは、国や地方自治体などの公的機関で働く公務員でありながら、非正規雇用で月収が低い方のことを指します。女性が多くを占めています。
正規雇用と遜色のない仕事内容でありながら収入は低く、雇用期間が明確に定められているなど、収入や待遇などの面で不遇な状況にあります。
また、公務員が担当していた業務を民間に委託する際は、価格の安さが重視され、入札制度で委託先が決まります。そのため、民間企業はその業務のために給与が安く済む非正規労働者を雇用することが多くなっています。
このようにして、必然的に期間の定めのある非正規雇用労働者が生まれます。この方々についても「国が作り上げた(官製)」ワーキングプア、官製ワーキングプアとして扱われます。
3.ワーキングプアが増えている原因
貧困というと仕事ができない失業中の方などのイメージがありますが、働く意思があり、ときにはフルタイムで勤務をしながらも貧困状態にあるのがワーキングプアの異常性です。
近年増加傾向にあるワーキングプアは、どのような原因で増加しているのか見ていきましょう。
3-1.賃金の水準が下がったため
日本の賃金の水準が下がったことが、ワーキングプア増加の原因の一つに挙げられます。
OECDの調査によると、1991年から2021年の日本の年間賃金の推移はほぼ横ばいですが、年齢などの条件を特定した場合の「個別賃金」の水準は低下傾向にあります。
勤続することによる賃上げは平均的に毎年おこなわれていますが、その賃上げ額が下がっており、結果的に賃金水準が下がる形になっているのです。
長く働いても賃金は大して上がらず、一方で物価はどんどんと上がっていく状況下で、収入が物価高に追いつかずワーキングプアが増えていることが考えられます。
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参照:日本労働組合総連合会|連合・賃金レポート2022
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2023/wage_report/wage_report_summary.pdf?38
3-2.働き方が多様化されたため
1990年代から正規雇用以外の就業形態が拡大する「就業形態の多様化」が見られるようになりました。
1987年から2004年の統計の変化をみると、すべての雇用者における非正規雇用者の割合は、15.3%から31.4%と大幅に上昇しています。
その後も少しずつ上昇傾向にあり、2022年には非正規雇用者の割合は36.9%、雇用者の3人に1人が非正規雇用だという結果が出ました。
また、近年フリーランスの働き方を選択する方が多くなっています。新・フリーランス実態調査によると、調査を開始した2015年と比較し、フリーランス人口は640万人増加しています。
パートやフリーターだけでなく、フリーランスや副業など、さまざまな働き方ができる時代となり、稼ぎ方も人それぞれです。
しかし、どれも正社員のように安定した稼ぎ方ではないため、どうしても収入が安定せず、低収入となってしまう傾向にあります。
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参照:厚生労働省|「非正規雇用」の現状と課題
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000120286.pdf
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参照:ランサーズ株式会社|新・フリーランス実態調査2021-2022版
https://www.lancers.co.jp/news/pr/21013/
4.ワーキングプアが多い職業の例
職業別にみると、特別な知識やスキルを必要としない仕事に従事する場合、ワーキングプアに陥りやすい傾向があります。
以下にワーキングプアに陥りやすい職業をあげますが、これらの職業が必ず収入が低いというわけではなく、実際は雇用条件によって異なります。あくまで一例として参考にしてください。
4-1.飲食店
飲食店は非正規雇用の割合が多い職業の一つです。正社員として働いている方もいますが、多くがパートやアルバイトの方の労働力で支えられています。
時給も低い傾向にあり、最低賃金で時給設定がされている求人も。労働時間は長い傾向にありますが、賃金設定によっては長時間働いてもそれほど高収入にならない場合もあります。
4-2.清掃員
ここでいう清掃員とは、工場などの特殊なものではなく、ビル内清掃などの清掃員を指します。その多くは非正規雇用であり、時給が低い傾向にあります。特別な資格が必要ないため、給与が上がりにくい場合も。
しかし、オフィスビルなら夜間の勤務、ホテルなら昼間の勤務など、自分の働きやすい時間帯で勤務場所を選ぶことができます。特に夜間の勤務は夜勤手当がつくことが多く、時給が高く設定されているため、収入を増やしたい方におすすめです。
4-3.警備員
警備員は警備会社に所属し、そこから委託元や派遣先で勤務することが多い職業です。警備員といってもさまざまな現場があり、なかでも施設警備員の場合は月収制で安定的に働けます。
しかし、道路工事などの警備員の場合は、工事があれば現場に派遣されるその日暮らしのような状態になることもあり、仕事が少ない時期にはワーキングプアの状態になってしまう可能性もあります。
4-4.データ入力
データ入力などの単純な事務仕事は、非正規雇用のケースが多いです。時給も低い設定で昇給しにくく、勤務時間も固定されているため、高収入を目指しにくいという場合があります。
4-5.農業
日本の食生活を支える農業の仕事ですが、残念ながらワーキングプアが多く従事している業種でもあります。
自由貿易化により海外の安い農産物がたくさん輸入され、国内農家の売上は大幅に減少しました。しかし、農作物を育てるための手間暇は変わりません。
長時間の過酷な労働であるにも関わらず売上が上がらず、ワーキングプアに陥っている農家が少なくありません。
4-6.漁業
漁業も農業と同様に、外国の安い魚の輸入に押されてしまっている現状があります。また、地域によっては漁に出られない時期も一定期間あり、その期間はほかの仕事で補うしかありません。
その仕事も期間限定の非正規雇用になりがちなので、結果的に年収が低くなってしまうのです。
5.ワーキングプアから脱出するには?
ワーキングプアで居続けるといつまでも脱出ができず、貯金もできないまま高齢期を迎えてしまうなどのデメリットがあります。お金の問題なので、今の生活苦や将来の不安から精神的に不安定になってしまうこともあります。
では、どのように動くとワーキングプアを脱出しやすいのか、その行動例をご紹介します。
5-1.正社員雇用を目指す
今現在非正規雇用であるなら、非正規雇用よりも給与が高い傾向にある正社員を目指しましょう。年齢や経験によっては応募してもなかなか採用されないかもしれません。
採用面接の際には、業界研究をしっかりとして、志望動機や自己PRなどをしっかりと答えられるように準備をしましょう。
正社員を目指す場合は、以下のリンクよりぜひ関連記事をご覧ください。
5-2.手に職をつける
正社員採用を目指しても不採用が続くと気持ちも落ち込んでしまうもの。そのような方は、手に職をつけるところから目指すのもおすすめです。
目指す職業によって異なりますが、例えばエンジニア職に就きたいならITやエンジニアの養成スクールに通うのも良いですし、介護福祉職に就きたいなら介護や保育関連の資格取得をめざすのも良いでしょう。
手に職をつければ応募できる仕事の幅が広がりますし、資格が取得できれば資格手当などで収入アップも期待できます。
また、業務に積極的な姿勢を見せることで、非正規雇用から正規雇用への登用も期待できるかもしれません。
手に職をつける方法や働き方について興味がある方は、以下の記事も参考にしてください。
5-3.副業をはじめる
転職はできないが、どうしても本業だけの収入だと苦しいという方は、副業を始めて収入を増やすのも選択肢の一つです。本業の休日にできる軽作業やコールセンター、最近では自宅でパソコンをつかってできる副業も増えてきました。
ただし、無理に副業して身体を壊してしまっては逆効果です。本業に支障をきたさないことを前提に、空いている時間で働くことを考えてみましょう。
また、企業によっては副業を禁止している場合もあるので、始める前に就業規則を確認してトラブルにならないように気をつけましょう。
副業やダブルワークについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
5-4.転職支援サービスに相談する
自分でどのように動けば良いかわからない場合には、転職支援サービスを活用しましょう。転職支援サービスに相談すれば、自分に合った仕事に出会う近道となります。
JOBPALでもキャリアパートナーがあなたの希望を聞いて、ぴったりの求人があればご紹介するため、一人で探すよりも効率的に探すことができます。
6.まとめ
毎日頑張っているのに収入が上がらず、貧困であり続けるのは苦しいものです。
同じようにワーキングプアで苦しんでいる方は一定数います。少しでも早くワーキングプアを抜け出すため、まずは自分でできる行動を始めてみましょう。
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